ジョルダン、バスMaaS事業に本格参入--AIにより高精度のバス遅延情報を配信

 経路検索大手のジョルダンは9月10日、バスを対象としたMaaS(Mobility as a Service)事業に本格進出する。高速バス・空港リムジンバスや路線バスに加え、自治体のコミュニティバスのダイヤ、運賃といった情報を電子データ化して、同社の「乗換案内」としてスマートフォンで提供。多言語化やスマホ決済(運賃支払い)に加え、地域のきめ細かい情報発信などで訪日外国人旅行者を誘致して地域振興につなげる。

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 新機軸のサービスでは、2020年春に道路渋滞などによるバス遅延を精緻に予測して乗換案内で情報提供する、「次世代AI(人工知能)バスロケーションシステム」を開始するという。

 同日には、ジョルダンの佐藤俊和社長、佐藤博志戦略企画部部長、平井秀和執行役員・研究開発部長、結川昌憲同・法人本部長のトップ4人が登壇して、新事業について説明した。交通の総合情報基盤・MaaSのバス分野展開に当たり、佐藤社長は「MaaSオペレーター(運営者)だけでなく、MaaSサプライヤー(サービス提供者)として当社以外のアプリ事業者などとも積極的に協業する」と基本スタンスを語った。

 経路検索から予約、チケット発行(スマホ画面への表示)、決済など旅行のすべてをスマホで完結できるMaaSは、“100年に一度のモビリティ(移動)革命”と称される大きなビジネスチャンスが確実視される一方で、参入業者が乱立している。佐藤社長は「事業者、地域住民、来訪者、自治体など関係者すべてに有用な共通インフラ基盤を構築することが、当社最大の使命」とコメント。利用減で苦境に立たされる、地方バス事業者の近代化・効率化を支援すると共に、条件が合えば蓄積したデータを他のICT(情報通信技術)企業にも提供して、関係機関総ぐるみでの地方創生やバス再生を目指す決意を示した。

 ジョルダンはMaaS進出を目指し2018年7月に全額出資の事業会社JMaaSを設立。2019年1月には英国の公共交通チケットサービス企業Masabi(マサビ)と総代理店契約を締結し、Masabiのチケッティングシステムの国内独占販売権を獲得した。ジョルダンは、乗換検索やMasabiシステムをバス仕様にアレンジ。「バスは鉄道を補完する重要なシステム」を基本に、「ダイヤが分からない」「いつ来るか分からない」「バス停がどこにあるか分からない」といった諸課題を解決できるMaaSを構築したという。

 最大のセールスポイントはバス遅延をAIが正確に予測する「ジョルダンスタイル バスロケーションシステム」で、同社が開発したIT端末「コミュニケーションゲートウェイデバイス」をバス車両に搭載する。GPSや通信機器を装備するデバイスは、スマホの1.5倍のコンパクトサイズで車両への取り付けも容易だ。

「コミュニケーションゲートウェイデバイス」
「コミュニケーションゲートウェイデバイス」

 ジョルダンはMVNO(仮想移動体通信事業者)として、閉鎖された通信ネットワークでデータを収集・加工。2020年春にサービスを開始するリアルタイム乗換案内では、乗換案内に現時点でのバス運行情報を連動させ、手持ちのスマホで乗換案内や運行状況が分かるようにする。「目的の列車に間に合わない」といった不安を解消して、バスの利用促進につなげる。新しいバスロケシステムは、神奈川県の箱根登山バスが全国トップを切って採用。ジョルダンは引き続き、メリットを発信して普及に弾みを付ける。

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 併せて、バスMaaSで力を入れるのが沿線観光情報の提供。例えば、インターネット検索で「関東 旅行」と入力しても表示されるのは有名観光地だけで、バスの利用促進や地域振興につながらないこともある。そこで、ジョルダンは住民が提供した地域の魅力などをMaaSで発信する。佐藤部長は「ジョルダンの検索件数は月間2億3000万回に上る。当社の乗換案内が広告塔となって、日本全国の魅力を発信できれば」と夢を膨らませた。

 今回お披露目したもう1つの事業者向けMaaSサービスが、「公共交通データHUB(ハブ=中核)システム」。ジョルダンは1994年に鉄道で乗車駅と降車駅の入力で経路検索できるPCソフト「東京乗換案内」を開発。1996年には全国版をインターネットで公開したが、2002年には早くもバスデータの収集・作成の取り組みを開始した。

 約17年が経過した現在、系統数では全国2万8331系統(路線バス2万4812系統、コミュニティバス3519系統)、事業者では797社(路線374社、コミュニティ423社〈主に自治体〉)を電子データ化している。高速バス・リムジンパスは全国ほぼすべてを完了、路線バスは同じく90%の事業者をカバーする。

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 国レベルでは、国土交通省が訪日客地方誘致の実効策として、2017年4月に標準的バス情報フォーマット(GTFS-JP)を制定。地方バス事業者は独自でのデータ化が難しい事例も散見され、ジョルダンのHUBシステムは国の政策にも呼応して、紙ベースのダイヤ情報を電子化。みちのりホールディングス、群馬、富山両県のバス事業者、北海道の十勝バス、関西のバス事業者などが相次いで参画する。

 ジョルダンはHUBシステムで収集・作成した情報をオープンデータのほか、乗換案内に対応する同社拡張データなどの形で提供。事業者向けにデータをチェックして正確度を高めつつ問い合わせにも一元的に答え、外国人を中心とする観光客の地方誘致に貢献する。

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