東建コーポレーションとイタンジ、賃貸契約業務を変える社会実験に参画

 賃貸住宅契約における流れを一変させる社会実験が始まろうとしている。国土交通省は「賃貸契約における重要事項説明書等の電磁的方法による交付の社会実験」を10月1日にスタートすること発表。東建コーポレーションとイタンジは、これに共同で参画することを表明した。

 今回の社会実験は、対面での作業が必要だった重要事項説明と賃貸契約締結をオンラインと電子契約で可能にすることを目指すもの。オンライン手続きを推進することで、入居者の来店回数を抑制するほか、不動産会社に勤務するスタッフの作業効率化につなげる。

社会実験で目指すフロー
社会実験で目指すフロー

 東建コーポレーションは、愛知県内にある東建コーポレーション刈谷支店、ホームメイト西尾駅前店、東建コーポレーション豊田支店の3店舗で社会実験を実施。イタンジが提供する入居申し込みのウェブ受付システム「申込受付くん」と不動産関連電子契約システム「電子契約くん」を導入し、入居希望者に対し、オンラインを使った重要事項説明「IT重説」と電子契約を促す。

 「仲介管理部では、全部員にスマートフォンを配布するなど、業務の電子化を推進している。組織内にシステム部も設けているが、電子契約は認証が必要になるなど複雑な仕組みが必要のため、今回イタンジと共同参画をさせていただくことになった」と東建コーポレーション 仲介管理局管理局長代理次長の中野佑一氏は話す。

 東建コーポレーションは、2018年全国管理戸数ランキング6位の大手不動産会社。愛知県に本社を構え、全国に不動産仲介を手掛ける店舗約200店を持つ。建築やリフォーム、住宅販売までと事業内容は幅広い。「いろいろな会社と話をさせて頂いたが、イタンジでは、セルフ内見型賃貸サービス『OHEYAGO(オヘヤゴー)』から、申込受付くん、電子契約くんまで、一気通貫で仲介業務をカバーするシステムを構築されていたことが魅力だった」(中野氏)と決め手を話す。

 すでに重要事項説明は、スマートフォンやPCの画面上からオンラインで説明するIT重説が2017年にスタート。東建コーポレーションでも推進しているが「一カ所だけ電子化されても、それほど大きなインパクトはない。一気通貫でできるからこそ大きなポイントになると思った」(中野氏)とイタンジと組んだ理由を説明する。

 イタンジでは「単なるサービスの提供だけでなく、具体的なオペレーション部分まで一緒にやらせていただくことで、実務ベースでの課題を認識できる」(イタンジ 開発の中村友拓氏)と意欲的だ。

 IT重説では、説明する側の顔部分がワイプで見えている必要があったり、契約書を画面横に表示させておかなければならなかったりと、細かな規定が存在する。「ITと実務を組み合わせた時に、最適なオペレーションをどうやって作り上げるか、現場を知り尽くしている東建コーポレーションの方とご一緒できるのは心強い。どのあたりに気を配り、どんなユーザーインターフェースが求められているのか、ぜひ教えていただきたい」(中村氏)と期待を寄せる。

 社会実験では、上記3店舗に来店した入居希望者に、IT重説や電子契約などの流れを説明し、同意を得られた人に協力してもらう形をとるとのこと。中野氏は「賃貸契約では、物件を探される当日、審査通過後の重要事項説明と賃貸契約の提携時、入居時の鍵渡しと、3回来店いただくことが通常だが、IT重説と電子契約により、審査通過後の重要事項説明と賃貸契約の提携時の来店を1回減らせる。お客様だけでなく、社内のバックヤード業務としても書類の作成が減り、時間と業務の短縮の両方が可能になる」(中野氏)と、入居者、不動産会社のスタッフの双方にメリットは大きい。

 現在は、「初めての試みのため、トラブルが起きることは想定内。その中でもある程度トラブルを吸収した形のオペレーションを組んでおきたいと思っている。安定した通信環境の確保や、テレビ会議時の音声の聞こえにくさなどは、現時点でも配慮している」(中村氏)とのこと。

 一方で店頭を担う東建コーポレーションでは「スタッフは対面でやることに慣れているため、新しい業務フローを覚えることから始める」(中野氏)と負担もある。イタンジではマニュアルを作成するほか、カスタマーサクセスチームのメンバーが店舗に赴き、直接サポートする計画だ。

 「不動産の仲介業務は今後大きく立場や内容が変わる業種の1つ。他社動向に気を配るとともに、東建コーポレーションとしては、新しい流れに乗り遅れないようにしたい。今回は社会実験だが、実際に開始された時に対応していなかったでは済まされない。準備をしっかり整えておきたい」(中野氏)と今後の動向を見据える。

 一方、イタンジの中村氏も「実際に開始された時に、不動産業界でイタンジのシステムが最も使いやすいと言われるようなサービスになることを目指したい。そのためにも今回の社会実験で、細かい使い勝手の部分まで検証したい」と話す。

 社会実験の実施期間は10月から3カ月間になる。

東建コーポレーション  仲介管理局管理局長代理次長の中野佑一氏(左)とイタンジ 開発の中村友拓氏(右)
東建コーポレーション 仲介管理局管理局長代理次長の中野佑一氏(左)とイタンジ 開発の中村友拓氏(右)

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