“サ終”のDeNA「ハッカドール」歴代キーマン5人に聞く--5年間の戦いと今思うこと

 アニメやゲームに特化したDeNAのニュースアプリ「ハッカドール」。リリース5周年となる8月15日に“サ終”(サービスを終了)した。

8月15日に5年間のサービスを終了した「ハッカドール」
8月15日に5年間のサービスを終了した「ハッカドール」

 ハッカドールは、DeNAが2013年末にコミックマーケット(コミケ)の企業ブースへ「美少女Mobage」の名義で初出展したのをきっかけに、社内のアニメやギャルゲーなどが好きなスタッフやエンジニアが集まった美少女Mobageチームによって開発。いわゆるオタク向けのジャンルに特化したスマートフォン向けニュースアプリとして、2014年8月15日にリリースした。

 以降、アドベンチャーゲームやアニメリストなどといった機能の追加や、ウェブ版のリリース、有料サービスのプレミアムマスターや広告施策なども導入。そしてイメージキャラクターであるハッカドール1号、2号、3号を活用したコンテンツ展開も実施。マンガ連載をはじめ、2015年には、DeNAのオリジナルコンテンツとして初めてテレビアニメ化され、声優によるイベントも行われた。近年ではバーチャルYouTuberとしての活動も試みていた。

イメージキャラであるハッカドール1号(中央)、ハッカドール2号(左)、ハッカドール3号(右)。なおテレビアニメでは4号や0号も登場した
イメージキャラであるハッカドール1号(中央)、ハッカドール2号(左)、ハッカドール3号(右)。なおテレビアニメでは4号や0号も登場した

 5月15日にサービス終了を発表をすると大きな反響があり、惜しむ声が聞かれたほか、さまざまなメディアで取り上げられた。終了にあたっては、これまで掲載したイラストなどを収録したアルバム機能などを有する「ハッカドール THE めもりある」を配信し、8月25日には声優陣を招いたイベント「ハッカドール THE めもりあるぱ~てぃ!!!」を開催することとなっている。

 ニュースアプリとして類を見ない存在感を出していたハッカドールの5年間について、表からは見えなかったさまざまな出来事なども含めて、歴代のキーマンである岩朝暁彦氏、嶋田裕二氏、寺嶋隆司氏、荒巻裕子氏、岡村直哉氏の5人に聞いた。

 岩朝氏はハッカドールの起案者であり、立ち上げ時からプロデューサーを担当。サービスだけではなくキャラクターにおいても設定などを担当し、各種シナリオやテレビアニメにも携わっていた。嶋田氏は立ち上げ時からエンジニアとして参加し、岩朝氏がチームから離れたあと、プロダクトオーナーを兼務。寺嶋氏はウェブ版のディレクターとして携わり、後に嶋田氏をサポートする形でビジネス面を担当。荒巻氏は、嶋田氏と寺嶋氏から引き継ぎプロデューサーを担当。岡村氏は立ち上げ期から後期にわたって宣伝プロデューサーの立場でプロモーションを担当。イベントやニコニコ生放送で配信した「ハッカちゃんねる」では自らMCとして登壇し、“おかむー”の愛称でファンからも親しまれていた。

左から、岩朝暁彦氏、寺嶋隆司氏、嶋田裕二氏、荒巻裕子氏、岡村直哉氏
左から、岩朝暁彦氏、寺嶋隆司氏、嶋田裕二氏、荒巻裕子氏、岡村直哉氏

ベンチャー感とMobageがあったからこそできた美少女Mobageとハッカドール

ーーこれまでも岩朝さんには、最初のコミケ出展やハッカドールのリリーステレビアニメ化のことなどいろいろとお話を伺いましたが、改めて、立ち上げ期の思い出はありますか。

岩朝氏 :……あまり覚えてない(笑)。みんなで話していくうちに思い出すかも。

ーーでは、嶋田さんはいかがですか。

嶋田氏 :ハッカドールは、よく5年も続いたというのが本音です。当時は(2014年)2月ぐらいからメンバー集めをして、3月の中頃から本格的にプロジェクトが始まった感じですね。社内で壁も天井も真っ白なフロアがあったんです。そこにメンバーが集まってテーブルを陣取って開発を進めてました。

岡村氏 :その近くに広報や宣伝の部署があったんです。突然グッズで敷き詰められた場所で作業している一帯ができていたので「あれはなんだ」とざわざわしてました。コミケの出展で岩朝のことは知っていたので、普通に話に行ったりしていたら「なんで岡村は近寄れるんだ」「あれは何なの?」と、周囲から言われたことは覚えてます。

嶋田氏 :私物のグッズを持ち寄ってました。

岡村氏 :あと夜になると大声を出し始めて。

岩朝氏 :よくクレームが入ってた。

岡村氏 :それも含めて話題の島になってました。

ーーこれまでお話を伺ったなかでも、立ち上げ期のころは、少人数での勢いと情熱で突き抜けてきた印象があります。

岡村氏 :時流を逃さないようにという思いが、チームには強かったです。

嶋田氏 :ベンチャー感がありました。そもそも何もできていない状況だったけど、コミケに出るから、それに合わせて出すということでリリース日が決まっていましたから。

岩朝氏 :ただ、今になって思えばですけど、あとから広告施策や有料会員なども行いましたが、最初からきちんとマネタイズを考えて設計してリリースしていれば、ここで終わってなかったのかなと考えるところもあります。

岡村氏 :でも、あのとき綿密にビジネスプランを計算して立ち上げようとしていたら、ハッカドールが世にでていたかどうかは、わからないです。

嶋田氏 :当時は会社としてもゲームをたくさんリリースして、そのなかからヒットを出していくという方針でいましたし、Mobageに向けた送客も大事という状況だったんです。

岩朝氏 :Mobageに向けた送客支援で、当時の美少女Mobageは存在が成り立っていたんです。Mobageに対してのサポートというところで、目的も達成できていた部分もあったのです。Mobageがなかったら成り立っていなかったですね。

嶋田氏 :プラットフォームの存在だけではなくて、システム面でも自分で作った資産を活用しましたし、分析基盤も間借りしていて、普通の会社ではすぐに作れないところもありますから。エンジニアの人材面も含めて、あれだけの短い時間でリリースできたのは、今でもMobageを展開していたDeNAだからだと思ってます。

岩朝氏 :立ち上げ期のエンジニアは、嶋田以外すでに社を離れているのですけど、みんなIT系企業のCTOに就いたり、会社を立ち上げて経営者になっていたり、いいモノづくりの経験になったのかなと思います。

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