ドコモグループ傘下で挑む「スマホファースト」の映像配信サービス--NTTぷらら新社長に聞く

 映像配信サービス「ひかりTV」やインターネット接続サービスなどを展開するNTTぷららが変化の時を迎えている。7月1日には、NTTコミュニケーションズグループから、NTTドコモグループへ帰属を変更。6月には、21年間代表取締役社長を務めた板東浩二氏から、新社長永田勝美氏へとバトンが引き継がれた。

 創業以来「新たな事業領域を開拓する」ことをミッションとして取り組んできたNTTぷららが、今後新しいビジネスをどう切り開き、現行ビジネスをいかに成長させていくのか。代表取締役社長に就任した永田勝美氏に聞いた。

NTTぷらら 代表取締役社長の永田勝美氏
NTTぷらら 代表取締役社長の永田勝美氏

サービス開始時から状況が一変、映像配信は「スマホファースト」へ

――社長に就任されてから1カ月半が経ちました。就任が決まった時のお気持ちはいかがでしたか。

 NTTに入社して以来、長く技術系の仕事を手掛けてきたので、コンテンツを含めたNTTぷららの幅広い事業をフォローしていけるのか不安に感じたことも事実です。

 しかし、前社長の板東(現Executive Principalの板東浩二氏)とともに、さまざまなサービスや開発の立ち上げにも携わりましたし、自分自身の成長の機会でもあると考えました。NTTぷららは23期連続増収を達成していますので、この実績を引き継ぎながら、これまで以上に会社を成長させていくことが、私の仕事だと思っています。

――ひかりTVのイメージが強いですが、事業領域は大変幅広いですね。

 ISPからスタートしたと思われがちですが、実は創業当時はeコマースがメインでした。その後ネットサービスをいくつも手掛けましたし、アグリゲーションサービスなども請け負いました。その中で映像配信にも挑戦し、映像を中心としたコンテンツビジネスが今の事業のメインになっています。

――映像配信事業は競合サービスも増え、ひかりTV開始当初に比べると環境が一変されているのではないでしょうか。

 大変難しい状況になっています。競合サービスが増えましたし、テレビ局が独自のサービスを始めたり、コンテンツ事業者がオリジナルのサービスを手掛けたりと、サービスも多様です。しかし、さまざまなレポートにもあるように、市場全体としてはまだまだ伸びていく市場であることは間違いないと考えています。

 プレーヤーが増えたことによって、各社は差別化に取り組んでいます。わかりやすい戦略ではオリジナルコンテンツの制作や、人気コンテンツの先行配信などがそれに当たります。この点については、ひかりTVも同様に差別化ポイントとして取り組んでいきます。そのため、映画の製作委員会に出資したり、共同制作を担ったりと、早い段階からコンテンツにリーチできる機会を生かすようにしています。

 コンテンツ戦略のほかに、私たちが戦略として掲げるのは「スマホファースト」です。映像配信サービスは、長くテレビへの配信を中心としてきました。スマートフォンやタブレットに向けたマルチデバイスも推進していますが、リビングのテレビで視聴する環境を第一に考えていました。

 しかし、最近は若年層を中心にコンテンツはテレビよりもスマホで見られています。マルチデバイスももちろん推進していきますが、ここは発想をぐっと転換してスマホファーストのアプローチが必要だと思っています。

 すでに、Tリーグの試合中継などタテ型動画の配信もしていますし、スマホでも見やすい短尺のコンテンツも用意しています。さらに今後は、音を聞かずに内容がわかるコンテンツにも取り組んでいきたいと考えています。電車内など通勤時に音を聞かずにコンテンツを見ている人は一定数いらっしゃって、特に女性はイヤホンの装着を好まない方もいらっしゃるという話も聞きます。字幕をつけるというのも1つの考え方ですが、それ以外にも音を聞かずに伝わるコンテンツが必要だと思っています。

卓球「Tリーグ」をタテ型動画で配信した
卓球「Tリーグ」をタテ型動画で配信した

 スマホファーストになると、コンテンツの編成も変わります。現状はリビングのテレビで見ていただくウエイトが大きいですから、自ずとラインアップも総合編成的になりがちです。アニメ、ドラマ、映画となんでも見られるという網羅性よりも、趣味嗜好に寄った、ぐっと深いコンテンツを届けていきたいと考えています。

 この影響は映像配信サービスにとどまりません。例えば韓流が好きな人であれば、K-POPの音楽配信やドラマの出演者の写真集、さらにアーティストのライブに行く、韓国に旅行に行くなどの広がりが考えられます。スマホファーストになり、お客様がより深いコンテンツを楽しみたい、それに付随した情報がほしいと考えたときに、サービスをまたがずに提供していきたい。映像を見るならこれ、書籍を購入するのはこれと、複数のサービスを選んでいただく必要なく、シームレスに提供できる環境を整えていきます。

――「ひかりTVショッピング」や「ひかりTVミュージック」などを手掛けているので、複数のサービスを一度に提供できるのはNTTぷららならではの強みですね。

 加えて、NTTドコモグループの強みも融合して、シナジーを出していきたいと考えています。NTTドコモには7000万人と言われる顧客基盤があり、そこに対してもアプローチをしていきたい。その際も、総合編成的なものではなく、より深いコンテンツで個々のユーザーにそれぞれアプローチをしていくことで、魅力を高めていきたいと思っています。ラインアップの広さももちろんですが、今後はコンテンツの深さを追求していくことで、新たな層にアプローチしていきます。

 以前より実施しているのですが、ひかりTVショッピングで「dポイント」を貯められたり、使えたりすることで反響を頂いています。dポイントの使い道の1つとしてコンテンツを見るという新たな楽しみを提供できていると思います。このような取り組みもさらに進めていきたいです。

――より深いコンテンツはどのように提供されていくのでしょうか。

 コンテンツを調達する部隊に期待する部分が大きいですね。アニメや韓流など、そのコンテンツを好きな人間が担当していると、やはり熱量が違います。ニッチな作品であっても、非常に高い人気を獲得したり、長い間見られたりする傾向が強いです。もちろん経営的判断は必要になりますが、コンテンツへの愛が、常にサービスの出発点になっているべきだと考えています

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