「再建は鴻海流、日本流、早川流のミックス」--シャープ戴会長兼社長ロングインタビュー前編

 ロングインタビュー後編はこちら

 鴻海精密工業出身の戴正呉氏が、2016年8月13日にシャープの社長に就任してから約3年が経過した。2015年度には、448億円の営業赤字と、2223億円の最終赤字を計上。430億円の債務超過に陥り、2016年8月には東証二部へと転落。まさに瀕死の状況であった。

 そうした中でバトンを受けた代表取締役会長兼社長の戴氏は、2016年度には早くも営業黒字へと転換させるとともに、2017年12月には、過去に前例がない1年4カ月間での東証一部へのスピード復帰を達成。さらに、2017年度には、4年ぶりの通期最終黒字を達成するとともに、10年ぶりに全四半期での最終黒字を達成した。

 その後も、成長戦略を打ち出し、東芝のPC「Dynabook」の買収やASEAN、中国を中心とした海外事業の拡大など、シャープ復活を確実なものとした手腕は高く評価されている。このほど、シャープの戴会長兼社長の単独インタビューの機会を得た。戴会長兼社長がウェブ専門媒体の取材に応じるのは初めてのことだ。前編と後編の2回に渡り、戴会長兼社長のインタビューを掲載する。

シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏
シャープ 代表取締役会長兼社長の戴正呉氏

3年前と今の最大の変化は社員の顔

――戴会長兼社長が経営トップとして指揮を執り始める3年前のシャープと、今のシャープとの最大の違いはなんでしょうか。

 3年前のシャープは大幅な赤字を計上している会社でした。今のシャープは、黒字の会社です。また、3年前は、債務超過により、東証二部に降格していましたが、今は東証一部の会社に復帰しています。そして、社内を見てもらえるとわかりますが、社員のモチベーションが大きく変わっています。チャレンジする意識、意思決定や行動に対するスピードがまったく違います。

 そうした中で、最大の変化は、社員の顔でしょう。会社に対して失望したような顔をし、下を向いていた社員たちが、今は笑顔で、前向きに仕事に取り組んでいます。社員たちが自信を持ち、どこに出て行っても恥ずかしくないほど生き生きとしています。会社の雰囲気も明るい。定期的に、社員を対象にしたアンケートを実施していますが、その結果を見ても社員が自信を持っていることを感じます。

――シャープの再建において、戴会長兼社長が重視してきたこと、気をつけてきたことはなんでしょうか。

 シャープにとって、最大の課題は人材不足です。私がシャープに来る前に2回に渡って実施された希望退職などによって、多くの人材が流出し、2012年以降、ずっと社員数は減少していました。しかし、新体制となってからのこの3年間は、社員数は増加しています。2017年3月末には、国内外をあわせて4万1898人だった社員数は、2019年3月末で、5万4156人にまで増加しています。しかも、毎年、新卒を採用し、2019年度も361人の新入社員が入社しました。また、DynabookのようなM&Aによる社員増もあります。これからの100年を考えると、人材は欠かせません。そして、次の100年に向けて最適な人員構成へと変えていくことも大切です。

――戴会長兼社長は、社内の会議や社員へのメッセージには、必ず日本語を使っていますね。

 日本語はうまくないのですが(笑)、日本語で話をした方が、社員に私の気持ちが伝わると思っています。また、社員にOne SHARPという意識を強く持ってもらいたいという思いがあります。私は、社員とのコミュニケーションを最優先しています。テレビ会議で話をしたいという要望があれば、優先してスケジュールを組みます。

 もうひとつ、メッセージを通じて意識しているのは、経営信条である「誠意と創意」の徹底です。7月16日には、堺市に新たな社員寮の創意館が完成しました。2018年6月に建設した誠意館とともに、経営信条を寮名にした建物がそろいました。堺に来た社員は、必ず経営信条を意識することになり、経営信条を忘れなくなります(笑)。

――誠意館と創意館をあわせて、「堺匠寮」と呼びますね。

 私も誠意館に住んでいますが、実は、堺匠寮とは呼んでいません。大切なのは「誠意」と「創意」。私は日本に入国するときに書く申告書類にも、「堺市…シャープ誠意館」と書いています。堺匠寮とは書きません(笑)。

経営信条である「誠意と創意」
経営信条である「誠意と創意」

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