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批判を恐れず「歌舞伎」で挑戦し続ける--松竹・迫本社長が語る“現代の古典芸能” - (page 3)

藤井涼 (編集部) 日沼諭史2019年08月01日 08時00分
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制約のないものは「撮影OK」にしたい

——すでにエントリーは締め切られてしまいましたが、「松竹アクセラレーター2019」にもつながっていく話ですね。

 松竹には先輩から受け継いだアセットがたくさんありますし、それを活用することで他では代替できないようなコンテンツができると思うんです。その一環として「京都ミライマツリ」みたいなものを実施したわけですけど、世の中はものすごく早いスピードで動いているので、我々のアセットを使ってアイディアを出せる人材を作っていきたい。

「松竹アクセラレーター2019」
「松竹アクセラレーター2019」

 大企業はもちろん、スタートアップや個人でもできる可能性はあると思います。本当にいいアイディアがあれば、我々が一緒になって協力したい。スタートアップと組むことに対して最初は批判的な意見もありましたが、挑戦して失敗したとしても失うものはないわけですから。できるだけ世界中のいろんな人に、挑戦の場として松竹のアクセラレータープログラムを利用してほしいですね。

——松竹はコンテンツの権利などに厳しそうなイメージがあるのですが、そこは柔軟に考えているのですか。

 厳しいですよ。今も劇場では携帯電話での撮影は原則禁止です。ただし、今や広告宣伝の1つとしてSNSで拡散する時代であり、海外アーティストのライブではむしろ有効な手段として使われています。この部分は今後、時代とともに少しずつ変えていく余地があると考えています。

 現在では、歌舞伎俳優さんが所属する俳優協会にもずいぶん配信やSNSの利用について理解していただけるようになりましたし、俳優さん個人として出したいところ、出したくないところはもちろんあるから配慮すべきですけれども、それ以外は極力出していきたいというのが私の想いですので、制約のないものはどんどん撮影OKにしようということで進めています。

歌舞伎座の内部。歴代の名跡となった俳優の銅像が並ぶ
歌舞伎座の内部。歴代の名跡となった俳優の銅像が並ぶ

——改めて、歌舞伎の一番の魅力はどこにあると思いますか。

 歌舞伎っていろんな魅力があると思うんですよ。突き詰めると「色」だって言う人もいますよね。確かにそう、あの「色」は独特で世界的にはないから。それを思うと、(現在の原型となる歌舞伎が風靡し始めた)元禄時代の日本って、本当に豊かだったんじゃないかと思いますね。

 歌舞伎で演じられるストーリーは多くの人が知っているものなので、観客としてはストーリーを追うことが重要ではありません。あの色と音の中で、そのストーリーの中にいる人間の気持ちをどう俳優さんが型で演じていくか、そこが一番の見どころではないでしょうか。

 もともと大衆芸能ですから、坂東玉三郎が綺麗だとか、市川海老蔵がかっこいいとか、中村隼人がかわいいとか、そういうところから入っていただくのも全然かまわない。衣裳が綺麗だな、というところから興味をもっていただいてもいい。「歌舞伎は勉強してからじゃないと」と思っている人もいるかもしれませんけど、全然そんなのはいらないんです。

——最後に、松竹が目指す次世代のエンタメの形とはどのようなものでしょうか。

 どんな企業でも商品に付加価値を付けて、その付加価値の対価としてお客様からお金をいただく。そういう仕組みだと思うんだけれども、我々松竹の歌舞伎のような古典芸能における付加価値というのは、“感動を加える”ことだと思うわけです。そして、感動の付加価値というものは無限大だと思うんですよね。

 感動させるのって難しくて、大変ではあるけれど、本当にやりがいのある仕事だと思っています。そういうところに基軸を置いているのは、もう変わらないと思うんです。ただ、その感動をお客さまに味わっていただくための表現方法、手段もまた無限に多様になってくると思います。

 ネットの革命があって、次にAI革命が来て、そのときにどんな表現手段があるのか。人間なのかバーチャルなのか区別がつかないような人が演じることにもなるかもしれません。そういう中で、人間的な感動を与え続けている会社になっていられれば素晴らしいですね。いろんな人たちと手を組んで、松竹という「枠」にとらわれずに展開していければと思います。

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