月での宇宙飛行士の暮らしを疑似体験--ハワイのシミュレーション施設を訪問

Lexy Savvides (CNET News) 翻訳校正: 川村インターナショナル2019年07月23日 07時30分

 月面を歩くのは大変な作業だ。宇宙服は熱くなってくるし、ヘルメットの重さが段々とのしかかってくる。加えて、筆者は重たいバックパックを背負っている。このバックパックが管で空気を送ってくれるおかげで、呼吸することができる。これらすべての装備に動きを制限されるので、後ろを振り返りたければ、体ごと後ろを向かなければならない。

 ごつごつとした溶岩の上で何度か足をすべらせたが、歩を進めるごとに、このでこぼこで荒涼な風景に少しずつ慣れてきた。

 それから、ようやくしっかり歩けるようになったと思った瞬間に、岩(ここではaaともいう)が崩れ始めた。

 「この岩が冗談でaaと呼ばれているのは、その上を歩いた人が『あー、あー!』という声を発したりするからだ」

 宇宙生物学者のMichaela Musilova氏が、足場の不安定な溶岩を見分ける方法を教えてくれた。ここの地形は地球上のもののようには見えず、自分が月面にいるかのような錯覚にとらわれる。

 幸い、筆者はまだ地球上にいる。われわれの現在地から300m以内の距離に、ハワイ宇宙探査アナログシミュレーション(Hawaii Space Exploration Analog and Simulation:HI-SEAS)と呼ばれるプロジェクト用の白いドームがある。このドームは、人間が月や火星で暮らすうえでさまざまな課題に対処できるよう訓練するという、特別な目的のために建設された居住空間だ。

 その建設地であるハワイ島のマウナロアは、2013年に宇宙飛行士の模擬基地の設置場所として選ばれた。ここの地形が火星にそっくりだからだ。植物はほとんど生えておらず、多数の溶岩がある。

figure_1 提供:Evan Miller/CNET

 過去には、HI-SEASは米航空宇宙局(NASA)から資金提供を受けて、火星での生活のシミュレーションを実施したこともあるが、月ミッションのシミュレーションを行えるように、2018年後半に方針転換された。科学者、Buzz Aldrin氏などの宇宙飛行士、ドームの所有者でもあるHenk Rogers氏などの起業家で構成されるコンソーシアム、International MoonBase Allianceの一環であるHI-SEASは、月面で持続可能な人間の暮らしを実現する取り組みにおいて、重要な役割を果たしている。

 NASAが宇宙飛行士を再び月面に立たせる計画を2024年に前倒ししたことを考えると、これは極めて重要な転換だ。ほかの企業も宇宙のさらに遠くまで人類を連れて行こうとしている。AmazonのJeff Bezos氏が設立したBlue Originは、NASAと同時期に人類を月に送りたいと考えており、宇宙コロニーの建設を計画している。Elon Musk氏のSpaceXはすでに月旅行を販売しており、2022年までに火星に貨物輸送を行うと述べている。その数年後には、有人ロケットを火星に送る予定だ。

 月や火星へのミッションを遂行中の宇宙飛行士の生活がどういうものなのかを体験するため、筆者はハワイにいる。HI-SEASミッションのディレクターであるMusilova氏がガイドを務めてくれる。筆者はここで、宇宙ミッションを控えた宇宙飛行士がほかの惑星での生活にどのように備えるのかを学ぶ。彼らが宇宙で食べる物から、違う惑星の地形を探検する方法まで、さまざまなことを、身をもって学ぶのだ。

シミュレーションの中で暮らす

 HI-SEASは外からだとかなり小さく見える。直径はわずか11mほどだ。しかし、ドームの中に入ると錯覚かと思うほど大きく感じる。まるで、テレビドラマ「ドクター・フー」に登場する次元超越時空移動装置「TARDIS」のようだ。

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提供:Lexy Savvides/CNET

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