今のブロックチェーンはダイヤルアップ接続時代のインターネットのようなもの? - (page 2)

肉業の有機飼育認証情報をブロックチェーンで管理

 そうした国のためのインフラではないが、より小規模な例として紹介されたのが、ブロックチェーン技術を使って牛肉の認証情報を管理するワイオミング州のBeefChainの取り組みだ。現在イーサリアムを使って実装しており、肉牛にRFIDタグをつけて、有機飼育の認証に適した生育がなされているかという情報をブロックチェーン上に記録している。

 2018年に6つの牧場と提携提携してパイロットサービスを開始し、現在約2000頭の情報が管理されている。今年の夏には10000頭へと広げる目標となっている。

BeefChainの共同創業者タイラー・リンドホーム氏
BeefChainの共同創業者タイラー・リンドホーム氏

 このようにして認証を取得することにより、扱っている牛肉をブランド化し売値を向上させることを目指している。またブロックチェーン技術を使うことにより独自のサーバーへの投資やシステム開発を伴う必要がなかっため低コストでの導入が可能になったという。このサービスを導入するにあたり飼育業者が支払う費用は3000ドルで、500頭までの管理が可能となる。

 一頭あたり6ドルだが、これにより一頭あたり50ドル、プレミアムや取引形態・条件によっては最大で700ドル、通常の30%以上の卸値の向上が見込めるという(サプライチェーンマネジメントの効率化により、直接取引に近い形態や、中間コストの削減、利幅の増加に取り組みやすくなるためだ)。BeefChainを使って出荷された牛肉は現在、台北のシェラトンホテルで食べられる。

 また認証情報管理や、肉業取引のためのサプライチェーン管理だけでなく、卸された肉がどこで最終的に消費されているのか、今まで生育者が知ることができなかったことがわかるのも大きなメリットであるという。

 米国においても、消費される安価な牛肉の多くが米国外で生産されたものとなっており、生産者は絶えず価格競争にさらされており、畜産を行う農家も減少していっている。ブロックチェーン技術を活用したこの取り組みにより育牛を若手にとって十分魅力的なものとし地域の産業と従事者を残していきたいとBeefChainの共同創業者タイラー・リンドホーム氏は語る。

 「大量消費社会において小規模な畜産農家を米国に残していきたいのであれば、高付加価値な肉や有機的で認証がとれたものにお金が払われる仕組みを持たなければいけない。そうでなければ子供に事業を残すことはできず廃業することになる」。ブロックチェーン技術が持つ分散型、改ざんの困難さ、安価な取引手数料という性質が活かせる場面だといえよう。

ハードウェアによる分散化の取り組み

 ブロックチェーンの分散型のシステムの構築におかるわかりやすい取り組みとして、カルダノのブロックチェーンのノードを5Wの電力消費のマイコンで走らせるデモンストレーションが行われていた。Rock Piと呼ばれる80ドル以下のヘクサコアのARMベースのマイコンでブロックチェーンのノードを走らせている。

 これによってチェーンの次のブロックを作成するステークプールの一部として参加することができる。アフリカのような電力供給の不安定な地域でも活用されることを想定して、会場では、ソーラーパネルでバッテリーに充電ながらその電力でRock Piが稼働するデモが行われていた。

 ブロックチェーンの世界では分散型の思想とは逆にマイニングにおいては膨大なマシンパワーを持つ一部の業者への寡占化が進んでいる。こうした小さな仕組がそうした寡占化にあがなう取組としてカルダノのコミュニティーで取り組まれている。

オープンハードウェアRock Piを使ったデモ
オープンハードウェアRock Piを使ったデモ

ブロックチェーンにより現実が仮想に、仮想が現実となる世界

 当カンファレンスでは、SF小説「ソフトウェア」「ハッカーと蟻」で知られる作家ルディー・ラッカー氏も講演を行った。サイバーパンクの代表的な作家である彼は、現実世界とネットワーク世界が融合した世界を描いた数々の著作で知られている。「ソフトウェアはより人間のようになってきている。そして仮想が現実に、現実が仮想へと融合してきている」と氏は述べる。

ブロックチェーンとインターネット世界について語ったルディー・ラッカー氏
ブロックチェーンとインターネット世界について語ったルディー・ラッカー氏

 インターネットがVRやAR技術や、さまざまな産業に浸透し続けているが、ブロックチェーン技術によってさらに時系列上の記録、時間軸の情報基盤としてネットワークのインフラとして動き始めたときにどのようなことが起きるのか。その答えが見えてくるのには、まだしばらく時間がかかりそうである。

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