英国はなぜ米国の警告を無視してファーウェイの5G機器を受け入れるのか - (page 2)

Steve Ranger (CNET News) 翻訳校正: 編集部2019年04月27日 09時00分

 このプロセスは15年以上にわたって英国がファーウェイのセキュリティリスク対処するための枠組みになっている。英国家サイバーセキュリティセンター(NCSC)は、システムは機能しており、リスクは管理可能だと述べた。

 NCSCは、ファーウェイをモバイルネットワーク市場から閉め出せばサプライヤー数を減らすことになり、ネットワークセキュリティにとっての別のリスクになるとも警告した。

 モバイル通信企業は、ファーウェイの製品が禁止されると自社の計画が損なわれると警告した。禁止されれば、既にネットワークで使っている機器を取り除くことになり、それには多大なコストが掛かり、計画を最長で18カ月は遅らせることになる。

 ファーウェイ自身は、同社の技術を中国政府のスパイ行為のために使わせているというクレームを一貫して否定し、米国家安全保障局(NSA)の請負業者で内部告発者のEdward Snowden氏による告発を例に引いて、米国こそがサイバースパイ行為を働いていると指摘した。ファーウェイをめぐる論争は、一部の人々にとって、国家安全保障だけでなく、現在進行中の米中貿易戦争についてのものだ。

 ファーウェイを批判する人々は、証拠のある中国政府のサイバースパイ行為と、中国企業に対する中国共産党の支配力を懸念の理由として挙げる。4月24日、NSAの上級サイバーセキュリティアドバイザー、Rob Joyce氏は、次のように警告した。「われわれのインフラに入り込み、脅威を引き起こそうとしている国がある。われわれは脅威をもたらすネットワークは使わない。機密を要するネットワークにファーウェイを採用することはない」

 だが、米国の立場の弱さの一部は、この主張の確固たる証拠を示せないことにある。また、NCSCの責任者は最近、ファーウェイによる悪意ある行為の証拠はないと語った。

 ファーウェイに、オフィスビルの屋根に設置するアンテナのような5Gネットワークのエッジテクノロジーの提供を許せば、英国が5G移行の先頭集団に留まり、かつ米国あるいは中国をあまり怒らせないで済む妥協案になる。

 誰もがこの決定に賛成しているわけではない。内閣で意見が分かれているだけでなく、下院外交委員会のTom Tugendhat会長は「ファーウェイを英国の5Gインフラに引き入れれば、われわれのデータを安全に保つ能力が同盟国に疑われ、ファイブ・アイズ(訳注:諜報活動に関する協定の加盟5カ国、米、英、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドを指す)の協力に不可欠な信頼を損なうことになる。他の加盟国がノーと言ったのには理由がある」と警告した。この決定はまだ正式に発表されているわけではなく、従って決定が変更される余地はまだある。

 それでも疑問は残る。まず、5Gネットワークの中核と周辺機器の区別がセキュリティの観点から現実的なものかどうかがはっきりしない。ネットワーク事業者は、ベンダーを例えばアンテナだけというように限定すれば、脆弱性がネットワークに広範な影響を与える可能性が低くなると主張してはいる。次に、この決定が英国と、異なるアプローチを選んだ他のファイブ・アイズの国々との関係に長期的にどのような影響を与えるかが不明だ。

 英政府通信本部(GCHQ)のJeremy Fleming長官は24日、「5G機器がどこで製造されたものかどうかは重要ではあるが、それは副次的な要因だ。これは非常に複雑な問題であり、今後数十年間に及ぶことになる。どう対処するかが、われわれの繁栄にとって非常に重要だ」と語った。

 英国が下す5Gの未来についての決定は、今後何年にもわたって影響を与えることになりそうだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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