演奏時から時を経ても、レーベルの違いまで感じられるのはDSDフォーマットを採用しているからこそだ。DSDは、PCMとは異なる1ビットのレコーディング形式を採用。サンプリング周波数は2.8、5.6、11.2MHzなどが用いられる(今回は2.8MHz)。言ってみれば、数字上ではダイナミックレンジは1ビットだが、サンプリング周波数帯域がものすごく広いということ。このサンプリングレートの高さが、音の質感に大きく寄与している。
また、リニアPCMが0と1の2値的なカクカクした波形になっているのに対し、DSDはアナログライクな滑らかな波形だ。この波形の差が、DSDがアナログ的な音と言われているゆえんだ。
アナログ的でアコースティックな音を再現するDSDは、2チャンネルでも、奥行きと高さを表現する。あたかもコンサートホールで、オーケストラを目の前にして聞いているようなリアルさを体感できる。
この再現力の高さは、試聴会でも実証されている。同じマスターテープから変換した、DSDとリニアPCMの音源を聞き比べてもらったところ、来場者の全員がDSDの音が好きと回答した。この比較試聴は試聴会やイベントで何度も実施しており、その度DSDが圧勝だ。
コンピレーションアルバムの中には、リニアPCMでも提供している楽曲が数曲あり、それを聞き比べてもらうのも面白いと思う。比較試聴のおすすめは3曲目に収録されている「交響曲 第3番 ニ長調 D200: 第1楽章: Adagio maestoso - All」(ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)。リニアPCMを先に聞くと、音がクリアで伸びやか。力強く、情報量が豊富なことがわかる。しかしDSDを聞くと、音の粒子がさらに細かくなり、音場の中に音の粒子が飛び散るような広がり感を感じられる。表現するのであれば、リニアPCMは木綿、DSDは絹の耳障りという感じか。
特に差を感じるのは音色だ。リニアPCMはクリアで透明感のあるすっきりした音。一方のDSDは、音に色がつく。音色とはよく言ったもので、音に色づきが感じらえる。
DSDは身体全体で音を楽しんで聞くことができるフォーマット。今回DSDを使ってコンピレーションアルバムを出せたのはとても意義のあること。また20曲中16曲は、今回がDSD音源として初出し。大変貴重な音源をDSDフォーマットで、レコードレーベルの違いを体感しながら味わってほしい。
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