複合機から「Kunkun body」へ--コニカミノルタが大企業内で掴んだ新規事業開発のコツ - (page 3)

大企業であれば「無理そうならとっとと捨てて次へ」

 Kunkun bodyは企業体力のある大企業のコニカミノルタだからこそ進められた新規事業だった、という見方もできる。が、甲田氏は大企業で新規事業を実施することの難しさもあると指摘し、「新しいことを好む人が基本的にいないためイノベーション活動が阻害される」「現在の仕事と新しい仕事を兼業しろと言われる」「会社の発想がプロダクトアウトで、ニーズの有無にかかわらず既存事業との組み合わせが強制される」「売上目標100億円など、高すぎる目標を設定される」といった“大企業あるある”が語られた。

 こうした障害をクリアするため、BICでは“人財”と“技術”の2つの側面から基本方針を定めた。まず“人財”においては、「企画だけでなく事業を発案して作り上げ、世の中の声を聞いて直す、一連の流れを経験していること」を重視。「ベースの能力としてプロジェクトマネジメントできることが必須」として、そのうえで個人の得意分野があることが理想だとした。

 プロジェクトごとにメンバーを固定し、2〜4名の少人数チームを結成。専門性は問わず、たとえば「英会話系のサービスだからといって、過去に英会話関連のサービスを作ったことがある人でなくてもよい」ものとした。BICという部署自体は会社のトップ直轄の組織として会社からの理解を得られやすく、動きやすくし、社外のパートナーとは「一蓮托生で全ての情報をオープンにして一緒にプロジェクトを進める」形にした。

 “技術”においては、「自社がもっている技術には限りがある」と自覚したうえで、「純粋に顧客の課題解決のために外の技術を求める。オープンイノベーション以外でやる道はない」との考えを徹底。「マーケットインの発想を忘れず」、「技術を作ることが目的にならないように」しながら、ソフトウェアサービスは1年、ハードウェアが必要なものは2年でサービスインにこぎつける「スピード」も重視した。「とにかく早く始める。だめだと思ったらすぐやめる」という“多産多死”の戦略もとった。

 こうした取り組みを通じて実感した大企業における「新規事業開発のコツ」として、同氏は3つのポイントを挙げた。まずは「1つのネタに執着しない。無理そうならとっとと捨てて次のプロジェクトへ行く」こと、2つ目は「小さな種から一歩ずつ膨らませる。シンプルに誰かを確実に幸せにする、喜ばせるものを始める」こと、3つ目は「これまでにないものを考える。差別化を図り、その差別化要素を保ちやすくして、資金力のある会社に同じものが作られたときに負けないようにする」こと。総合すると、「課題が明確である」「市場性がある」「差別化要素がある」という3つの軸がそろえば、プロジェクト成功の確率は上がるだろうとアドバイスした。

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