複合機から「Kunkun body」へ--コニカミノルタが大企業内で掴んだ新規事業開発のコツ - (page 2)

スメルハラスメント対策にも有効なニオイ計測デバイス

ニオイ計測デバイス「Kunkun body」
ニオイ計測デバイス「Kunkun body」

 Kunkun bodyは、甲田氏によれば「ニオイが見える世界初のデバイス」。頭、耳の後ろ、ワキ、足という4箇所の体臭計測に対応し、専用スマートフォンアプリと連携して利用する。「汗臭」「ミドル脂臭」「加齢臭」の3種類のニオイを嗅ぎ分けて、それぞれ10段階でレベル表示しつつ、総合評価を100段階で表す。さらにくちのニオイについても「他人にとって気になるニオイかどうか」を100段階で判定する。「他人が気にならないミント系のニオイは評価に含まれない」ようになっているのも特徴だ。

 ニオイをかぎ分ける4種類のセンサーと機械学習を組み合わせ、人間の嗅覚と同じニオイ判定の仕組みを取り入れているのもポイントだ。ニオイセンサー自体はほかにもあるが、従来のものはニオイの強弱のみを知ることができるもの。Kunkun bodyは「ニオイ(体臭)の強さと種類を特定(嗅ぎ分け)してレベル付けするセンサー」となっており、この技術を用いたデバイスは世界初だという。

体やくちの気になるニオイを数値化する
体やくちの気になるニオイを数値化する
センサーと機械学習により、人間の嗅覚と同じニオイ判定の仕組みを取り入れている
センサーと機械学習により、人間の嗅覚と同じニオイ判定の仕組みを取り入れている

 開発プロジェクトのきっかけとなったのは、同部署のメンバーとの雑談からだった。暑い季節に気になってくる体臭をチェックできる機械がないか、という話題になり、さっそく探したところ、タバコやペットのニオイ、洗濯物の生乾き臭などを「対策」するための製品はあふれていたが、当時は「人が不快になるニオイを測る機械が存在していない」ことに気付いた。

 ただ、ニオイを計測して数値化するにしても、ニオイは人によって感じ方に差があり、同じニオイのなかに居続けると順応してしまう「疲労性」の問題もあって、ニオイを定量化することが難しい。しかしこれを実現できれば、職場における「スメルハラスメント」対策ができ、店舗などにおける接客品質の向上といった価値提供にもつなげられる。「食品の腐敗臭をレベル付けできれば食品の管理もしやすくなるのでは」との考えから、プロジェクトは具体化していったという。

一般販売は1月29日から。価格は約3万円
一般販売は1月29日から。価格は約3万円

 特に体臭やくちのニオイからくるスメルハラスメントについては当人に指摘しにくく、「解決するための行動がとりづらいデリケートな問題」。一方で、独自のアンケートによれば「年齢性別を問わず、7割の人が自分のニオイが気になると回答」し、自分がスメルハラスメントの当事者になっていないか不安に思う人が少なくない状況にある。とはいえ、本人はニオイ対策をしているつもりでも「疲労性」のせいで相手の迷惑になっていないかどうかを判断できないのが実情だ。ニオイを可視化することで、悩む人たちに安心感という価値を提供できるとも甲田氏は考えた。

 大阪工業大学教授らのチームと共同で開発するなどオープンイノベーションによる取り組みを進め、プロトタイプの段階で一般消費者向けにタッチ&トライイベントも実施して商品としての感触を探った。商品化に向けては、クラウドファンディングを実施することでアンケートでは正確なところが見えにくい適正価格の判断に役立てるなどした。接客業などBtoBビジネスも検討するため、タクシー事業者との実証実験をしたほか、現在は海外展開も検討中。人だけでなく危険物などのニオイもかぎ分けられるようにして、空港でのセキュリティチェックなど用途を広げていきたい狙いもある。

食品や危険物への対応も進めている
食品や危険物への対応も進めている

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