logo

建設業をITで変えるユニオンテックの挑戦--現場の根幹となるマッチングに注力

加納恵 (編集部)2019年02月18日 11時00分
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 建設業×テクノロジーによる、建設業の再編を目指すユニオンテックがIT化の動きを加速させている。2月18日には、米ベンチャーキャピタルのDCMベンチャーズから総額9.7億円の資金調達を実施。建設業界に特化したマッチングサイト「SUSTINA(サスティナ)」と工事マッチングアプリ「CraftBank(クラフトバンク)」用の人材投資などを進める考えだ。

 ユニオンテックが建設業界のIT化に乗り出したのは、設立から16年を経た2016年。その背景には「腕のいい職人がこのままではいなくなる」という強い危機感を持ったからだという。もっとも遅れている業界の1つと言われる建設業のIT化を実践する理由と、それがもたらす業界の構造改革について、代表取締役会長の大川祐介氏に聞いた。

中央がユニオンテック代表取締役会長の大川祐介氏
中央がユニオンテック代表取締役会長の大川祐介氏

4~5年前から状況が変化、人材不足が浮き彫りに

 ユニオンテックは、店舗、オフィス、住宅の企画、設計、施工を手がける会社として2000年に設立した。立ち上げたのは、自らも職人として内装業を手がける大川氏。職人になった当時から多重下請け構造による作業の非効率化と、中抜きによる不透明な賃金の流れに対し疑問を抱いていたという。

 「職人として働く中で、とにかく遠いと感じたのが施主の方との距離感。現場には元請けから、5、6、7次請けの職人までいて、作業の確認をしても、返事がくるのが3~4日後。収入も明らかに不透明な部分が多く、これは自分が元請けになるしかないと思った」と、起業を決意。自らが元請けとなり、現場で一緒に働いていた職人たちとともに仕事を請け負う体制を整えた。

 「ユニオンテックが元請けとなり、5、6、7次請けだった職人たちとともに現場に立つことで、多重請け構造を脱却できた。今まで以上の賃金も保証できたし、仕事の流れもスムーズ。ユニオンテックの仕事はいいと、周りの職人たちが言ってくれた」と大川氏は当時を振り返る。

 しかし、4~5年前から状況は微妙に変化する。人材を募集しても応募が来ない、採用してもすぐにやめてしまう、と人材に関する悩みを口にする職人が増えた。大川氏がこの仕事を始めた当時、第一線で活躍していたのは45~50歳の職人たち。約20年を経て、その人たちが身を引くタイミングに差し掛かっているという。

 「ユニオンテックで仕事を受けても、形にできるのは腕のいい職人と組むからこそ。その人たちと一緒でなければ、いいものは作れない。その職人たちがこの業界からいなくなることに対しては危機感しかない。そこで今後のことを考え、いろいろな職人、工務店、会社を探し始めた」という。

 しかし、建設業の世界は狭く、仕事の依頼は人づてがほとんど。「そもそもどこにどんな業種の人がいるのかわからず、職人がいても仕事をしてみるまでスキルがわからない。新しい提携先を探すと同時に、どんな会社があり、どういった仕事をしているのかがわかるプラットフォームを作る必要があった」と大川氏は話す。

 これがきっかけとなり、大川氏はSUSTINAを立ち上げる。SUSTINAは、職人を探す、工事を依頼する、工事を受けられる建設業界に特化したマッチングサイト。今まで人づて、口頭、電話、ファクスで取り組んでいた、現場のマッチングを専用サイト上でできる仕組みだ。

 一方で、人づてによる仕事の依頼から生じる「仕事がない」職人たちを引き上げる意味もあったという。「建設業に従事する人たちは横のつながりが強く、いつも組んでいる会社と現場に入り、仕事をすることがほとんど。しかし、その会社の仕事が途切れると、突然仕事がなくなってしまう。仕事が途切れるタイミングも直前までわからず、突然手が空いてしまう職人は本当に多い。職人不足で頭を抱える現場がある一方で、仕事がなくて困っている職人がいる。ここを何とかしたいと思った」と大川氏は話す。

建設業界に特化したマッチングサイト「SUSTINA(サスティナ)」
建設業界に特化したマッチングサイト「SUSTINA(サスティナ)」
案件発注サイドと工事会社のオフラインのやりとりに起因する情報の非対称性
案件発注サイドと工事会社のオフラインのやりとりに起因する情報の非対称性

 こうした思いが、工事マッチングアプリCraftBankにつながる。CraftBankは、「⼯事を依頼したい⼈」と「腕の良い建設職⼈」をリアルタイムで直接つなぐアプリ。依頼者は工事案件を安心して解決でき、職⼈は空き時間に高い人工(にんく=1日で得ることのできる報酬の単位)で案件を受けられることがメリットだ。

 「建設業は個人事業主が多く、これは今後さらに増える傾向にある。剥がれた壁紙を直したい、水道が詰まったなど、ちょっとした、しかし緊急性の高い工事は日々たくさんある。ただ、実際に工事を請け負う人の前に手配会社などが入ることによって、工賃が上がり、職人の賃金は下がってしまう。こうした多重請け構造の撤廃にもつなげたかった」と大川氏は、CraftBank立ち上げの意義を話す。

 2018年の3月にスタートし、現在はベータ版。登録している職人は完全招待制で、ユニオンテックと過去に取引した実績がある人のみにすることで、信頼性を担保する。「約1年が経過しているが、トラブルは一度もない。招待制にした上、全員面談を受けてもらっている。お客様と職人を直接つなぐCtoCビジネスのため、中抜きが生じず、お客様には安く、職人には高い賃金を設定できることが強み」だ。

 しかしそれ以上に価値を見出せたのは、お客様と職人が直接つながることによって初めて伝わる感謝の気持ちだという。「職人にとって、施主と直接会えて、話せることは、高い賃金以上の意味が持っていることがわかった。作業を終えて『ありがとう』と言われることに喜びを見出す職人は本当に多い。本番リリースに向けては、こうしたコミュニケーション機能を強化するほか、職人が今まで手がけた作品などが見られるようにすることで、モチベーションを高めたい」と、今後の方向性は明確だ。

工事マッチングアプリ「CraftBank(クラフトバンク)」
工事マッチングアプリ「CraftBank(クラフトバンク)」
CraftBankの仕事の流れ
CraftBankの仕事の流れ

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]