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2019年不動産テックの行方(前編)--大型資金調達が相次いだ2018年を振り返る

川戸温志(NTTデータ経営研究所)2019年01月17日 08時30分
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 不動産不正融資の発覚や、Softbank Vision Fund(ソフトバンク ビジョン ファンド)によるWeWorkへの巨額投資など、2018年の不動産業界は話題に事欠かなかった。「働き方改革」や民泊新法の施行など、業界を取り巻く環境が変わる中、不動産テック業界にはどんな変化が求められているのか。2018年の出来事を振り返りつつ、2019年の不動産テック業界を予測する。

黒船上陸、不正融資、民泊、団体設立とヒートアップした2018年

 黒船、日本上陸。Softbank Vision Fund(ソフトバンク ビジョン ファンド)が44億ドル(日本円にして約4800億円)の巨額投資で世界を驚かせたWeWork(ウィワーク)の日本法人が2018年2月に日本初の拠点をオープンした。WeWorkは、主にスタートアップやベンチャー向けにコワーキングスペースの開発・運営を行っており、世界23カ国77都市で約27万人のメンバーが利用するコミュニティビジネスである。2018年は働き方改革の潮流を受け、シェアオフィス・コワーキングオフィスが活況であった。

 5月には不動産不正融資が発覚した。女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する不動産会社スマートデイズが経営破たん。スマートデイズとスルガ銀行は、組織的に融資資料の改ざんするなどの不正融資を繰り返し、多額の貸付を行っていたとして、10月にはスルガ銀行は金融庁より6カ月間の業務停止処分を受けた。

 また、8月には東証1部上場のTATERU(タテル:旧インベスターズクラウド)が、顧客の預金通帳を改ざんし、西京銀行に融資の申請をしていたことが発覚した。TATERUはクラウドファンディング事業者の中で唯一の東証1部上場企業であったため、そのインパクトは非常に大きい。

 不動産クラウドファンディングの領域は、6月にケネディクスと野村総合研究所が共同出資するビットリアルティが設立、7月に東証マザーズに上場したGA technologies(ジーエー テクノロジーズ)が「RENOSYクラウドファンディング」を開始、10月にFANTAS technology(ファンタス テクノロジー)が不動産投資型クラウドファンディングをローンチ、11月にブリッジ・シー・キャピタルが不動産投資クラウドファンディング「CREAL(クリアル)」を開始するなど、続々と新サービスが登場しているが、一連の不正融資は同領域の成長への影響が懸念される。

 6月には住宅宿泊事業法(民泊新法)がスタートした。民泊新法により、都道府県知事への届出を行うことにより、年間180日を上限とした民泊サービスを提供できるようになった。当初の目的としては、違法な無許可営業を行う「闇民泊」をなくし、新たな法制度のもとでシェアリングエコノミーを推進しようとするものであった。しかしながら、実態としては消防設備の点検や周辺住民等の届出条件が厳しいため、届出状況は低調な状況である。

 11月には不動産テック関連の団体が設立。7月に発足が正式発表された一般社団法人 不動産テック協会は、不動産とテクノロジーの融合を促進し、不動産に係る事業並びに不動産業の健全な発展を目的として、12月の時点で40社以上が入会している。情報化・IoT部会、流通部会、業界マップ部会、海外連携部会の4つの部会活動を行う想定だ。手前味噌だが筆者が関わっている国内不動産テックのカオスマップも不動産テック協会へ移管され、第4版まで発表されている。

 また、11月1日にADRE不動産情報コンソーシアムが発足。ADRE(アドレ)とはAggregate Data Ledger for Real Estateの略で、不動産情報の共有におけるブロックチェーン技術の活用を目的として、LIFULL、全保連、ゼンリン、ネットプロテクションズなどが参画している。

不動産テックのプレイヤーによる資金調達と主な提携の動き

 2018年の不動産テックを語る上で、Softbank Vision Fundは外せない。Softbank Vision Fundは、AIやロボットなどのテクノロジー企業へ投資する1000億ドル(約11兆円)の超巨大ファンドだ。そのSoftbank Vision Fundは、冒頭のWeWorkへの44億ドルの出資にはじまり、2017年12月から2018年12月までの1年間で不動産テックのプレイヤーへ大型の出資をしている。

  • 2017年12月 テックを活用したスマートな不動産仲介会社Compass(コンパス)に4億5千万ドル(日本円にして約500億円)を出資
  • 2018年1月 テックを活用することでシームレスな建設サプライチェーンを提供するKATERRA(カテラ)に8.65億ドル(日本円にして約950億円)を出資
  • 2018年9月 買取再販のiBuyerのプラットフォームを展開するOpendoor(オープンドア)に4億ドル(日本円にして約450億円)を出資
  • 2018年9月 Softbank Vision Fundはカタール投資庁(QIA)とともにリードすることで、Compassに新たに4億ドル(日本円にして約450億円)を出資

 そして、WeWorkはさらに30億ドルの追加出資をソフトバンク本体から受ける予定とのニュースも出ている。2018年の国内の不動産業界は、WeWorkの日本進出に当たって大きなインパクトを受けた。前述の不動産テック協会設立イベントにおいて、エスクロー・エージェント・ジャパンの代表取締役社長の本間英明氏は、CompassやOpendoorの人間が日本進出に興味がある旨を講演の中で話していたが、ソフトバンクが出資した以上は、CompassやOpendoorが日本に上陸してこない保証は一切ない。実際、前述のエスクロー・エージェント・ジャパンも米国のRemine(リマイン)は国内で不動産データサービス事業を開始することを2017年10月に発表している。

 筆者自身も以前、Remineとは別の不動産データビジネスの某ベンチャー企業にインタビューした際、過去に日本上陸の本格検討をしていたことを聞いて驚いた記憶がある。このように不動産業界もテクノロジーの進展と共にグローバル化が進んでいる。

 2018年は国内の不動産テックのプレイヤーの資金調達も盛んに行われた。図表1は、筆者が2018年にTechCrunch Japan(主にスタートアップ企業のニュースを扱うメディア)上を中心にニュースリリースが掲載されたものを検索して収集したものである。2018年は、全20件で合計96億円以上の資金調達が行われた。

図表1 2018年の国内不動産テック関連の資金調達ニュース一覧(※ 上表はスタートアップ企業のニュースを扱うTechCrunch Japanに掲載されたニュースを中心に検索の上、NTTデータ経営研究所にて作成)
図表1 2018年の国内不動産テック関連の資金調達ニュース一覧(※ 上表はスタートアップ企業のニュースを扱うTechCrunch Japanに掲載されたニュースを中心に検索の上、NTTデータ経営研究所にて作成)

 当然、検索漏れや資金調達したものの公表されていないものも存在するため、実際は100億円以上の資金調達が不動産テックのプレイヤーによって行われたのではないかと推察する。100億円以上の資金調達は大きいように感じられるが、国内ベンチャーの資金調達額は年々増加しており2017年に約2700億円、2018年はそれ以上の資金調達額が予想される点、不動産業界の市場規模は約40兆円規模、建設業界の市場規模は約50兆円規模と巨大である点を鑑みると、今後も不動産テックへの投資は盛んに行われることが予想される。

 買収や提携の動きも活発だった。7月に上場したばかりのGA technologiesは10月にイタンジを完全子会社化することを発表。11月にはスペースシェアを展開するスペースマーケットが東京建物と資本業務提携を締結している。ほかにも2017年に新中期計画でビジネスモデル革新を掲げる三菱地所、以前よりベンチャー投資を積極的に推し進め5月に新たにグロースステージのテック系ベンチャーに300億円の投資を開始する三井不動産、ベンチャー企業と積極的に不動産テック活用に取り組む東急住宅リースなど大手企業の動きも活発だ。

 ここまで2018年の動向を振り返ってきたが、後編では、2019年の新たなトレンドについて解説する。

川戸温志

NTTデータ経営研究所 シニアマネージャー

大手システムインテグレーターを経て、2008年より現職。経営学修士(専門職)。IT業界の経験に裏打ちされた視点と、経営の視点の両面から、ITやテクロノジーを軸とした中長期の成長戦略立案・事業戦略立案や新規ビジネス開発、アライアンス支援を得意とする。金融・通信・不動産・物流・エネルギー・ホテルなどの幅広い業界を守備範囲とし、近年は特に不動産テック等のTech系ビジネスやビッグデータ、AI、ロボットなど最新テクノロジー分野に関わるテーマを中心に手掛ける。2018年より一般社団法人不動産テック協会の顧問も務める。

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