さて、展示会場を回っている間に、興味のある製品を見つけたらどうすればよいか。まずは、(1)日本の客(先に仕入れている先)がいるのかどうか。(2)仕入れ価格(FOB:Free on Board)、(3)仕入れの最小ロットMOQ(Minimum Order Quantity)を聞くことだという。
また、すでに他国で販売していれば、一般的に流通しているマーケットプライスを聞く。それらは国によって変わるが、「売っている米国だといくらぐらいか」と尋ねて教えてもらうのだ。さらに、その出展者は工場なのか、仕入れだけの代理店なのかを確認することも重要だ。
香港では、中国の工場が出展しているところが多い。「工場だとわかり、もし取引をしたかったら工場を訪問させてほしいとお願いし、すぐに工場に行きその場でいろいろ交渉します。ロゴを変えたい、色を変えたいという話なら、小さなメーカーは工場に行けばすごく話が早い。その場でパッと決めて、その場でサインをして帰ってきます」(東)
CESとの比較で言えば、もちろんCESにも世界中からバイヤーが集まる。「でも、工場との交渉ではなくて、相手のブランドのまま日本に持ってくるという感じで、仕入れる・仕入れないという話になる。CESと香港のトレードショーはそのあたりが違います。中国にも、『もう自社ブランドでしか出しません』という工場は結構あるのですが、それでもだいたいは1K(1000個)以上だとロゴ変えたり色を変えたりはできる」(東)
もう一つ、押さえておきたいのは中国ならではのコミュニケーションツールのWeChatだ。「よくWeChatをやっているか聞かれます。そしてWeChatで商談をしたりスケジュールを決めたりするのが、他国との大きな違いです。カタログを見ると、会社のWeChatのQRコードが書いてあることがあります。WeChatは、PC側にもインストールしておけば受け取った資料をPCに転送できるので、すべてWeChatで進められる。工場側も、スピード感がまるで違います」(東)
「特に香港はおしゃれなものが多いけれど、中国メインランドもだいぶ追いついてきている」──東さんは展示会を通して、デザイン力の向上を感じているという。
「スピードが速い、デザインがいい、安い。クオリティ、モノの精度も上がっているのでお金が集まるし、ホットスパイラルに入っている。中国はどんなパーツもマテリアルでも国内で集められるから、物流コストが圧倒的に安いんです。だからシャオミなんて、品質のいいカバンを3000円で売れる。日本でモノづくりをしようとすると、シッピングコストと関税が掛かる。日本はどこに勝つ要素があるんだろうという状況」(東)
中国のシャオミは日本ではスマートフォンメーカーとして知られるが、実は家電製品やオリジナルのバッグ、歯ブラシまでそろうリアル店舗を中国や香港などで展開している。
一方で、「モバイルバッテリーをやっていても、もう厳しくなってきた」とも打ち明ける。「増えすぎたというのもあるし、価格競争になっているから、工場ももういらない、売る側もうまみがないというあまりよくないフェーズに入っているんです。でも4年前は利益がすごくよかった。徐々にトレンドが移行していっている。スマホケースやガラス保護フィルムもそうですね」(東)
ユーザーが、あまりスマートフォンケースで自己主張しなくなっている傾向があるという。そうしたメーカーが、スマートフォンケースから離れてどうしているのかといえば、いまホットなのはアイコスやベープといった電子タバコのケースだ。香港エレクトロニクス・フェアでも多くの展示品が見られた。
「そうして、自分が扱っている商品のいまのマーケットの状況を見ながら、どう戦えるか。世界のトレンドを見ながら、日本の消費者のことを考え、さまざまな角度から見るのがポイントです」(東)
一方で、中国の工場と仕事をするのは大変とも聞く。「基本的には、放って置いたら働かないというのは本当。ポイントは旧正月なんです。1月末から、2月一杯ストップする。じゃあ3月だと思っても工場は動かない。なぜかといえば、旧正月の間に故郷に帰っていた人たちが、半分は帰ってこないからです。だから新しい人を入れないといけないし、するとまた教育しないとならないから、まともに動き出すのは4月になる。1月末〜4月まではモノをつくれないというのはもう常識」(東)
1月末から休むため、12月はフル稼働で工場に仕事が舞い込む。「12月、1月のモノ作り、3月のモノ作りはものすごく荒れます。それを前提に、日本もファブレスのメーカー側も考えて組んでいく」とのこと。
日本で言えば、3月から4月にかけて「新生活商戦」がスタートする。そのためには1月末までに製造を終わらせ、2月〜3月で売るための準備に充てるのだ。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境