これまでの本連載では、オンラインレンディングの概要・成り立ちや、米国・中国など先進する海外における主要なプレーヤー、日本におけるオンラインレンディングの拡大の可能性について議論してきた。今回は、実際に日本でサービス提供されている、もしくは参入を表明しているレンディング領域のプレーヤーを紹介したい。
まず、マーケット全体として、日本においてレンディング領域で最も広く認知され、かつ多くのユーザを獲得しているのはソーシャルレンディングである。特に、個人にとって新しい投資対象となる金融商品として注目されている。ソーシャルレンディング領域には、既に多くの事業者が参入しており、maneoがもっとも古く代表的なプレーヤーである。
ソーシャルレンディングは投資対象と地域で分類すると、投資対象としては不動産を背景とした融資を行うもの、太陽光発電などのプロジェクトを投資対象とするもの、消費者向けのローン事業者等の再建を扱うものに分類され、地域では、国内向けと、海外向けに分類される。
不動産を融資対象とするものでは、ロードスターキャピタルが運営するオーナーズブックが挙げられる。オーナーズブックは、REITや私募ファンドに近い運用形態で国内の収益物件を対象とした融資案件を取り扱う。また、その他ではクラウドリアリティープロジェクトが特徴的で、彼らの投資対象は京都の町屋の再開発案件など、ストーリー性のある再開発案件となっている。
海外の債権を扱うファンドとして有名なのはクラウドクレジットである。クラウドクレジットは2014年6月にサービスを開始したサービスで、欧州、南米、アフリカなど、新興国の小口債権を中心に取り扱う海外に特化したソーシャルレンディングサービスであり、これまでに累計150億円以上の投資を集めている。
金融機関向けを中心に、融資対象の顧客を紹介するマーケットプレイスは、主にクラウド会計サービスが提供している。クラウド会計ソフトのMFクラウド会計を運営するマネーフォワードは、MFクラウドファイナンスというサービスを展開しており、MFクラウド会計を利用するユーザーに対して、福岡銀行、福井銀行などの金融機関が提供するファイナンスサービスへの誘導を行っている。クラウド会計の先駆者であるfreeeも同様で、こちらはジャパンネット銀行などの金融機関をユーザーに対して紹介している。
マーケットプレイス型とは対極的に、自社のバランスシートを利用して運転資金の融資などを行うプレーヤーとしては、スタートアップのクレジットエンジンが運営するLENDYが挙げられる。LENDYは抽象事業者が利用するクラウドサービスのデータを分析し与信の判断を行い、自社が金融機関等から調達した資金を利用して自社のバランスシートで融資を行う。
また、こちらもスタートアップのエメラダは、特定の金融機関からファンド形式で投融資の資金を預かり、運用するということ行っている。エメラダは、東邦銀行や第三銀行から資金を預かり、それらを同社が運営するエクイティクラウドファンディングのサービスや、レンディングサービスで運用している。
オンラインランディングに対する取り組みは、大企業等の事業会社でも広がっている。代表的な取り組みは、弥生会計を提供する弥生が、親会社のオリックスとともにレンディング事業者であるアルトアを立ち上げ、弥生会計を利用する中小事業者に対して資金提供を行っている。
リクルートは、自社で運営するじゃらんや、Hottpepper、Hotpepper Beauty等のメディアサービスの利用者に対して資金提供する「リクルートファイナンスパートナーズ」を設立し、パートナーズローンというサービスを展開している。宿泊事業者であればじゃらんにおける予約や決済情報をベースとした信用モデル、Hotpper であれば予約状況や口コミなどをベースとした信用モデルを構築し、自社グループのサービス利用者に対してより円滑に資金調達できるよう付随サービスを展開している。
日本の金融機関もこのオンラインレンディングの取り組みに対して、遅れを取るまいと参入する動きが増えて来ている。みずほ銀行は、ソフトバンクとともに個人向けの融資サービスJ.Score(ジェイスコア)をリリースし、個人向けの融資を展開している。J.Scoreは融資サービスだけでなく、信用スコアのプラットフォームとなることを目指し、J.Scoreの信用スコアをベースとしたAIスコアリワードを提供している。
また、LINEも「LINEポケットマネー」でレンディング領域に参入を発表しており、J.Scoreに続く個人向けサービスとなるだろう。LINEという絶対的なユーザー基盤が優位性としてあり、LINEPayの普及が進めば、ポケットマネーもより拡大していくのではないかと考えている。
さらに、みずほ銀行は、中小企業向け融資の審査に人工知能融資についても参入を表明している。三菱UFJ銀行はLENDYを運営するクレジットエンジンとオンラインレンディングの領域について提携を行なっている。地方銀行においても同様の動きはあり、福岡銀行、横浜銀行、千葉銀行等は弥生の運営するアルトアと事業提携を行なっているほか、福岡銀行は独自にオンランレンディングサービスを展開している。
このように日本においてもオンラインレンディングの領域に対して参入するスタートアップや、事業会社・金融機関など既存のプレーヤーの参入が増えて来ている。海外の事例に比べるとその規模はまだ小さく、ユーザーからの認知はこれからというところではあるものの、これからのオンライン・非対面取引が当たり前となる時代において、今後確実に拡大していくことが予想される。また、この業界の拡大は、これまで資金繰りに課題のあった中小事業者にとって新たな選択肢となり、より機動的で手間のない資金調達ができる環境となっていくことが期待される。
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