ジャパンディスプレイ(JDI)の新事業戦略が着々と進行している。12月4日、第2回目となる戦略発表会を実施。新たなプロトタイプを披露したほか、他社との提携や2019年の量産化を見据えた「センサー戦略」などを発表した。
JDIは8月に第1回目となる事業戦略発表会を開催。「HUD搭載スマートヘルメット」、鏡の一部が瞬時にディスプレイに変化する「おくれ鏡」、IoTフルハイトドア「FULL HEIGHT MILAOS(フルハイトミラオス)」などのコンセプトモデルを紹介した。その中で、(1)最終製品ビジネスへ参入、(2)定期課金ビジネスの導入、(3)テクノロジーで社会的課題を解決――の3つをイノベーション戦略に据え、B2Cも視野に入れた新事業を展開していくと発表していた。
ジャパンディスプレイ 常務執行役員チーフ・マーケティング・オフィサーの伊藤嘉明氏は「JDIは部品を作る会社。完成品は作っていない。3つの戦略を実現するためには、今までとは全く違うアプローチをしないといけない。そのベースになるのがオープンイノベーションの推進」とし、アイデアソンやパネルディスカッションなど、10~12月にかけて実施してきたオープンイノベーション関連のイベントを発表。さらに、全23社・団体と結んでいるという戦略アライアンスについても紹介した。
同日には、データを活用した新たなサービス・ビジネス創出やB2Bマーケティングの強化、インダストリー4.0の実現を進めるため、トレジャーデータとの戦略的協業を発表したほか、湘南工科大学とデザイン分野で協働開始や、コクヨ「ワークスタイル研究所」と共同でプロダクトを開発することなどを紹介。アジア初のエアレース・ワールドチャンピオン 室屋義秀氏との技術協力を含め、5つをリリースしている。
また、2019年から量産を開始する予定のセンサー戦略も明らかにした。常務執行役員CTOの永岡一孝氏は「JDIがセンサーを始めることに違和感を感じる人も多いだろう。しかし液晶や有機ELのディスプレイとセンサーデバイスの構造は似ており、今後開発するセンサーはディスプレイ技術を使って、大面積にしたり、曲がったりするものを考えている」と現状を説明した。
JDIでは、広い面積で認証ができる「大面積認証センサー」、画面に触らず操作ができる「ホバーセンサー」、伸びて曲がる「ストレッチャブルセンサー」の3つのセンサを発表。大面積認証とホバーは2019年に量産を開始し、ストレッチャブルセンサーについては2019年に発表予定としている。
会場では、着脱可能な小型のヘッドアップディスプレイ(HUD)搭載外付けユニット「XHD-02 KAIKEN」を始めとするコンセプトモデルも発表した。XHD-02 KAIKENは、ヘルメットにHUDユニットを装着することで、走行時の視線を維持したまま、情報の確認が可能。着脱可能なため、あらゆる分野でのヘルメットに利用できるという。
「XLP-01 MiOn」は、立体感のある映像を表現するライブ・パフォーマンス・プレーヤー。高精細ディスプレイに、独自開発のボックス型光源を組み合わせることで、立体感のある映像を再現できるとのこと。LEDバックライトの光を自由に編集する新しい手法を組み合わせることで、ディスプレイの明るさを表現でき、リアルなライブ・パフォーマンスを体験できる。映像コンテンツはウェブサイトから継続配信の予定で、2019年にクラウドファンディングを実施する計画だ。
「紡ぎ(つむぎ)シリーズ」は、映像とともに香りも提供するコンセプトモデル。高精細ディスプレイをタイリングさせた壁掛けインターフェイス「XHL-01 Halley」と、鳴海陶器とのコラボモデルとして発表した「XAQ-01 AQUARIUS」の2モデルを展示した。XAQ-01 AQUARIUSは、ディスプレイに花が咲く映像が流れ、花の動きと合わせて香りが空間を包みこむ仕掛けが施されている。
さらに、11月30日に発表したスマートバス停も展示。超低消費電力反射型液晶ディスプレイを搭載することで、外部電源供給のないバス停でも太陽光発電パネルとバッテリの組み合わせで利用できる。ディスプレイには、路線図、バス接近情報、広告、地域情報などを表示。災害時には、避難経路や場所を表示できるとのこと。すでに、北九州市明和町バス停で実証実験を実施しており、西鉄グループと安川情報システムが推進するスマートバス停の取り組みに正式に参画しているという。
伊藤氏は「今までも新しいことを提案すると、無理に決まっている、前例がないと言われてきた。しかしできるできないではない。すべてはやるかやらないか。JDIはやると決めた」と新事業領域への強い思いを話した。
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