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KDDI、ドローン山岳救助システムの実証実験に成功--急増する山岳遭難者をいち早く発見

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 KDDIは11月15日、「ドローン山岳救助システム」の実証実験を富士山の御殿場ルートで実施し、成功したと発表した。このシステムは、LTEネットワークを活用して自律的に飛行する山岳用ドローンに、位置情報通知・監視サービス、高精細気象予測システムを組み合わせ、山岳遭難者をいち早く発見することを目的としたものだ。

左からウェザーニューズ 執行役員の石橋知博氏、静岡県御殿場市の若林洋平市長、KDDI 理事の山田靖久氏、ヤマップ 取締役 COO CFOの高橋勲氏。4氏が手にしているのは実証実験で使用した山岳用ドローン
左からウェザーニューズ 執行役員の石橋知博氏、静岡県御殿場市の若林洋平市長、KDDI 理事の山田靖久氏、ヤマップ 取締役 COO CFOの高橋勲氏。4氏が手にしているのは実証実験で使用した山岳用ドローン

登山ブームの影響で急増する山岳遭難者

 発表会ではまず、首都大学東京 都市環境化学研究科の助教で、一般社団法人日本山岳救助隊の技術アドバイザーを務める泉岳樹氏が、近年の登山者の推移と山岳救助が抱える課題について説明した。

首都大学東京 都市環境化学研究科の助教で、一般社団法人日本山岳救助隊の技術アドバイザーを務める泉岳樹氏
首都大学東京 都市環境化学研究科の助教で、一般社団法人日本山岳救助隊の技術アドバイザーを務める泉岳樹氏

 泉氏によると、女性や中高年の間で登山ブームが発生しており、登山者は増加の一途をたどっているという。さらに、登山者の増加に歩調を合わせるように、山岳での遭難者も急増しており、2017年は日本全国で3111名が山岳で遭難したという。これは、10年前に比べて約2倍に相当する。

 遭難者の増加により、山岳救助ヘリの出動回数も増えているが、墜落などの事故が増えている。2010年から2018年の間に山岳救助ヘリ関連の事故は5件発生しており、遭難者や救助隊員が合計で23名亡くなっている。泉氏は山岳救助ヘリは遭難者救助において非常に効果があるが、墜落など大きなリスクを抱えていると指摘する。ヘリを使わずに、地上から山岳救助に向かう例もあるが、この方法では多大な労力が必要な上、二次遭難のリスクが高くなるという。

 そして、山岳救助隊員は簡単に育成できる人材ではないため、山岳救助ヘリなどの事故で救助隊員を失うと、救助隊にとって大きな痛手となると指摘した。

登山者の増加に歩調を合わせるように、産額での遭難者も増加の一途をたどっている
登山者の増加に歩調を合わせるように、産額での遭難者も増加の一途をたどっている

 泉氏は、山岳救助隊員が事故に巻き込まれる要因として、遭難者の位置確認が困難な例が多いという点を挙げた。山岳遭難の原因の第1位は「道に迷う」ことであり、迷った遭難者を捜しに出ても簡単にはその位置を確認できないわけだ。

 そこで泉氏はドローンに期待することとして、遭難者の位置と状態を迅速に確認することを挙げた。無人で飛行するドローンで遭難者を捜索、発見し、位置と状態に関する情報を救助本部に送信することで、救助ヘリは最短の時間で遭難者を救助でき、救助隊員の負担を軽減できる。

遠隔操作や自律飛行が可能な「スマートドローン」

 続いて、KDDIの理事で、商品・CS統括本部副統括本部長を務める山田靖久氏が、今回の実証実験で使用したドローンについて説明した。実証実験で使用したドローンは、LTE通信機能を持たせた「スマートドローン」。LTEの広い通信エリア内で自律飛行や遠隔操作が可能になっている。スマートドローンは将来サービスが始まる予定の5G通信にも対応する。

KDDIの理事で、商品・CS統括本部副統括本部長を務める山田靖久氏
KDDIの理事で、商品・CS統括本部副統括本部長を務める山田靖久氏

 スマートドローンの機体はKDDIがプロドローンと共同で開発したもので、運行管理ソフトウェアはテラドローンの製品を利用している。さらに、ゼンリンの3次元地図とウェザーニューズが提供する気象情報を活用して、ドローンを制御しているという。スマートドローンはすでに、警備、設備点検、農業、物流などの分野で実用化に向けた取り組みが進んでいる。

 今回の実証実験では高さ3776mの富士山上空を飛行させるために、標高6000mまで飛行可能な機体を使用している。さらに、山岳部の変わりやすい天気に対応するために、最大18mの強風でも捜索飛行が可能な設計になっている。さらに、IP55相当の耐水性能を持たせており、雨や霧の中でも飛行できる。オプションで赤外線カメラ、超高感度カメラを用意しており、夜間でも捜索と撮影が可能になっている。

実証実験で使用したスマートドローン
実証実験で使用したスマートドローン

 このドローンに加えて、遭難者の位置を推定するためにヤマップの登山者位置情報通知・監視サービス「YAMAP」と、ウェザーニューズの高精度上空気象予測サービスを利用した。YAMAPは登山者のスマートフォンに専用アプリをインストールすると、スマートフォンのGNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)受信機能で現在位置情報を受信し、そのデータをLTE経由でインターネット上のサーバーに送信する。このサーバーにアクセスすることで、登山者の家族や、捜索担当者が登山者の現在位置をリアルタイムで把握できる。

 LTEの電波が届かないところでは、YAMAPのアプリケーションをインストールしたスマートフォンを持つ登山者が、同じアプリケーションをインストールしたスマートフォンを持つ下山者とすれ違う際に、Bluetoothで位置情報を交換する。下山者がLTEの通信エリアに入ったら、すれ違いで得た登山者の位置情報を送信する。

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