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“景観を損ねず”に基地局を増やす−−ドコモとAGCが生み出した「ガラスアンテナ」

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 NTTドコモとAGCは11月7日、ガラスの室内窓から貼り付けられる、電波の送受信が可能なガラスアンテナを共同開発したことを発表した。同日に実施された記者説明会では、共同開発に至った経緯やガラスアンテナを開発する上で取り入れられた技術などについて、双方から詳細が語られた。

NTTドコモはAGCと提携し、基地局用のガラスアンテナの開発を発表。写真は説明会に登壇した、NTTドコモの無線アクセスネットワーク部長である小林宏氏と、AGCのビルディング・産業ガラスカンパニーのアジア本部長である武田雅宏氏
左から、NTTドコモの無線アクセスネットワーク部長である小林宏氏と、AGCのビルディング・産業ガラスカンパニーのアジア本部長である武田雅宏氏

 ドコモの無線アクセスネットワーク部 無線企画・無線技術担当課長である勝山幸人氏によると、今回の提携の背景にはスマートフォンの利用が増加したことによる、モバイル通信のトラフィックの増大があるという。中でもトラフィックが増えているのは都市部であることから、ドコモでは人通りが多い場所などトラフィックが局所的に多い場所に、「スモールセル」と呼ばれる狭いエリアをカバーする小型の基地局を設置し、ユーザーの通信を分散することでトラフィック対策を推し進めている。

 しかしながらスモールセルのアンテナは、電波干渉を避け狭いエリアだけカバーすることが求められるため、建物の上ではなく中層階に設置する必要がある。ただ、最近はデザイン性が高いビルが増えており、ドコモが持つ通常のスモールセル用のアンテナを室外に設置すると建物のデザインを損ねてしまうという理由から、オーナーから設置の許可を得られないという課題があったのだという。

従来のスモールセル用のアンテナは、室外・室内どちらに設置しても景観を損ねる上、室内に設置した場合はガラスによる電波の反射や減衰が問題になるという
従来のスモールセル用のアンテナは、室外・室内どちらに設置しても景観を損ねる上、室内に設置した場合はガラスによる電波の反射や減衰が問題になるという

 そこでスモールセルを屋内に設置することを検討したが、ドコモが持つアンテナのラインアップでは室内のデザインも損ねる可能性があるほか、窓ガラスを通過する際に電波が反射・減衰するという課題もあったと勝山氏は話す。そんな時、ガラスとアンテナの両方に関してノウハウを持つAGCからガラスアンテナの提案があり、共同開発に至ったのだという。

窓の左上にあるのがガラスアンテナ。通常のアンテナと比べ透明、かつ小型で目立たない形状であることから、景観を損ねず基地局設置の提案ができるという
窓の左上にあるのがガラスアンテナ。通常のアンテナと比べ透明、かつ小型で目立たない形状であることから、景観を損ねず基地局設置の提案ができるという

 その後、両社はガラスアンテナの実証実験を繰り返し、実用化が可能だと判断したことから、今回の発表に至ったとのこと。本格運用は2019年の春からとなり、まずは東京都内の基地局で導入を開始し、その後全国展開を目指すとしている。

 続いて、AGCのビルディング・産業ガラスカンパニー アジア事業本部 日本事業部 法人営業グループリーダーの岡賢太郎氏が、ガラスアンテナの仕組みを解説した。岡氏によると、ガラスアンテナの特徴の1つは、2枚のガラスの間に金属を主体とした透明な素材を用いたアンテナを挟み込むことで、透明で目立ちにくく外観を損なわないことだという。

 そしてもう1つは、窓ガラスを通過した時にも電波の減衰や反射を抑えていることだという。アンテナを室内に配置すると窓ガラスを通過する際に電波減衰や反射が生じるが、AGCではガラスアンテナに「Glass Interface Layer」(GIL)と呼ばれる層を設けることにより、ガラスを透過し、反射も抑えることに成功したとのこと。窓の種類に応じて電波の減衰や反射は変化することから、AGCではそれぞれの窓に合わせたGILを提供するという。

AGCが開発したGILという技術によって、ガラスによる電波の反射や減衰を抑えることが可能だという
AGCが開発したGILという技術によって、ガラスによる電波の反射や減衰を抑えることが可能だという

 また岡氏によると、今回開発したガラスアンテナは、既存の窓の表面にガラスを貼り付ける「アトッチ工法」という手法で取り付けるとのこと。これはオフィスや店舗などに多い、開閉できない窓を交換することなく、別の要素を付加するのに用いられる手法だという。

 一般的にガラスの表面に別の素材を貼り付けた場合、内外の温度変化によって2枚のガラスに素材の収縮・膨張が生じ、その差によってガラスが割れてしまう「熱割れ」という現象が発生しやすくなる。そのため、アトッチ工法では熱割れがしにくい構造を取り入れ、なおかつ貼るガラスの場所に応じて、熱割れに関するシミュレーションを実施するなどして、そのリスクを低減できると岡氏は話す。

単に既存の窓にガラスアンテナを貼り付けるだけでなく、割れにくい構造を取り入れ、なおかつ事前にシミュレーションを実施した上で設置することにより、熱割れを防いでいるとのこと
単に既存の窓にガラスアンテナを貼り付けるだけでなく、割れにくい構造を取り入れ、なおかつ事前にシミュレーションを実施した上で設置することにより、熱割れを防いでいるとのこと

 今回開発したガラスアンテナは、スモールセル向けということもあって、対応する周波数帯はTDD-LTE向けの3.5GHz帯になる。さらに1枚のガラスに4枚のアンテナを備えることから、4本のアンテナを使って高速化する「4×4 MIMO」にも対応するとのこと。一方で、基地局を天井に設置し、そこからアンテナまでケーブルを引いて設置することを想定していることから、遅延なくアンテナを制御することが求められる、多数のアンテナ阻止を用いた技術「Massive MIMO」には対応できないとのことだ。

 なお、5Gへの対応に関しては、現時点では周波数が割り当てられていないため未定とのこと。だが「割り当てが決まり次第対応したい」と勝山氏は話した。

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