ブロックチェーンは不動産業界に何を引き起こすのか--LIFULL×協会事務局長が語る情報のあり方 - (page 3)

不動産情報コンソーシアムが目指す不動産情報のID化

ーーそういったことを経て、10月には不動産情報コンソーシアムを設立されました。どんな役割を担っていくのでしょう。

松坂氏: 不動産会社、不動産ポータルサイト、国が管理する登記簿、レインズと、現在それぞれの機関がバラバラに持っている不動産情報のIDを作り、1つのIDに紐づけることで情報としてまとめたいと思っています。それができるとトークン化したやりとりに近づけるのではないかと考えています。

樋田氏:それを実現するにはいくつかの課題を乗り越えないといけないですね。ブロックチェーン自体は入力した情報が正しいかどうかは判断しませんから、検証が必要になります。仮想通貨は、外から入ってくる情報が数値だけなので、成立していますが、不動産の場合、情報の入れ方が問題になってくるでしょう。入力する情報に整合性があるか、情報自体が正しいのか、誰が情報を入れるのかが非常に重要になってくると思います。

松坂氏: そうですね。情報の正しさをどう担保するのかは、これから研究が必要だと思っています。1つのやり方として、正しい情報の入力に対してインセンティブを提供することで、できるのではと考えています。

樋田氏: それはいいですね。報酬を与えることで、参加しやすくなりますし、入力する人同士をレビューする仕組みを整えれば、透明性も高められます。そういう意味でもブロックチェーンは決済しやすいことが特徴の1つですし、仕組みの構築はしやすいかもしれませんね。

 ブロックチェーンはまだ決まったものがなく、そこに投資することは未来に対しての投資です。そこまで目を向けて取り組んでいかれる姿は本当に素晴らしいと思っています。

ブロックチェーンへの取り組みは「未来への投資」

LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 事業統括部 事業支援ユニット ブロックチェーン推進グループの松坂維大氏
LIFULL LIFULL HOME'S事業本部 事業統括部 事業支援ユニット ブロックチェーン推進グループの松坂維大氏

ーー未来への投資には、すぐにリターンが得られないというデメリットもありますが、それでも取り組まれる理由は。

松坂氏: 必要性を強く感じているからです。LIFULLでは、AIやVR、IoTなどの分野にも注力していて、投資を続けていますが、ブロックチェーン技術はこれらの分野と密接につながってくる可能性が高いと見ています。AIなどは学習するためのデータが必要になりますが、そのデータは正しくなければなりません。その正しさを示すのにブロックチェーンは最適です。

 またIoT機器は、センシングしたデータを集めて分析する必要がありますが、データをブロックチェーン上に書き込めば、そのデータを必要な人同士ですぐに共有できますし、改ざんの心配もありません。これからの世の中の情報を正確に活用していくためにブロックチェーンは必要な技術だと思っています。

 特に不動産は、一般の人が購入する機会が極めて少ないですし、金額も大きい。不動産の取引に不安を感じている人も多いと思います。そうした不安を取り除く技術としてブロックチェーンが使えればいいですね。

ーーブロックチェーンを不動産業界に導入するための現在のハードルはどんなことですか。

樋田氏: ブロックチェーン上の情報の社会的正当性をきちんと証明できるかですね。現在不動産の情報は登記簿で管理していますが、ブロックチェーン上で扱う登記情報を法的に認められるようにしなければなりません。不動産業界に限ったことではありませんが、この部分の社会制度をどう作っていくかが大きな課題ですね。

 仮想通貨は法整備され、社会的に認められるようになってきましたが、納税には使えないなど、使用場所は限られています。本当に実社会で使えるフェーズになるにはやはり時間が必要だと思います。そのためには、ブロックチェーンとは何かという教育をしていかなければなりませんし、使用場所や頻度を増やすことが大切です。

松坂氏: 一方で、ブロックチェーンの活用が進めば、不動産業界における取引の仕組みは大きく変わると思います。特に期待しているのは、契約を自動化するスマートコントラクトで、これを使うと不動産取引における権利や決済、登記などが飛躍的に簡単になります。現在、その部分は人の手で行っているので、それが置き換われば、より正確かつ早くできるようになります。

 不動産の取引はアナログで工数も多いため、家を一軒取引するには、売り主、買い主と全員が疲弊してしまう。これをスマートコントラクトでトークン化することで、みんなが使いやすくなる。これが私たちが目指す未来のあり方なのかなと思っています。

樋田氏: 先程も話しましたが、ブロックチェーンはインターネットでいうブロードバンド以前の状態です。それだけに今取り組めば、FacebookやGoogleのような巨大企業になれる可能性もある。大きな可能性を秘めた技術だと思いますので、ブロックチェーンの世界に入っていただき、新たなビジネスをみなさんで作り上げていってほしいと思います。

 ただ、今はブロックチェーン自体がバズワードになっていて、盛り上がり過ぎている部分もあるので、もう少し冷静に見たほうがいいかもしれませんね(笑)。検証を積み重ねていくのが大事だと思っています。

松坂氏: これから真の啓蒙期がやってくることは間違いありません。地に足を着けて取り組む時期だと思っています。周りを見ても、ブロックチェーンはこれからと感じている人が多く、その人口は増えて続けています。この領域は将来大きくなるだろうと確信しています。

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