一方、チームラボ代表の猪子氏は、展示作品に込めた思いを「境界のない、すべてがつながっている世界を作りたい」という言葉で繰り返し表現した。この世の中は“境界”があることが前提になっており、もともと世界に境界があったという錯覚を抱きがち、と語る同氏。
「しかし本来、世界は境界がなく、連続していて、生きていることもすごい連続性の上で成り立っている。固有の独立した生命が、境界線がないような状態で成り立っている」と独特の表現で説明し、その“境界がない世界”を、巨大な空間をもつチームラボ・ボーダレスで目指したと話す。
たとえば、展示している作品の中には、無数の蝶が出現するエリアがある。「お客さんが部屋に入ると蝶が生まれる。たくさんのお客さんが来場し続けるので、何万匹もの蝶が発生し、その蝶が全作品とコミュニケーションをとるようになっている。独立している全く違うコンセプトのもの(作品やその中の要素)が、境界なしに連続して影響を与え合う」仕掛けが盛り込まれている。
さらに、そういった他者からの影響に加えて、季節の変遷など時間の経過に応じて映像のパターンを刻々と変化させている。「実際に体験すると、自分の身体と世界の境界がなくなるような感じになるはず。他者の存在で作品が変化することで、互いになんとなく影響し合い、他者との境界もあいまいにするような、そんな体験を作りたかった」と猪子氏。
ところが、最後に来場者からの質問で「あえて不便なつくりにした意図」を問われると、「不便なものを作りたかったわけじゃない」(猪子氏)と一転して否定。「普通だったら通らない内容。そのまま自分たちがやりたいコンセプトを実現したら、ちょっと(世間一般とは)ズレてた(笑)」と率直な気持ちを吐露した。
同氏は正式オープン前に関係者を招いたときのことを振り返り、「99%クレームの嵐。迷うとか、作品がどこにあるかわからないとか、自分が見たのと友だちが見たものが違うとか、わけのわからないことを言っていた」と笑いながら当時の出来事を明かした。
そんな関係者らの“迷う”という意見に対して猪子氏は反発。「うっせえ!と思って、スタート地点に“さまよえ”みたいなことを書いておけばいいと思って書いた」。さらに「友だちが見たものと違う」ことに対しては、出口に「そもそも何かを見たということは、何かを見失っていることなんだよ」という意味のメッセージを残したと述べ、会場を笑いの渦に巻き込みつつ、40分余りの短いセッションを終えた。
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