シャープは4Gの時代からモバイル通信方式の特許獲得に向けて力を入れており、5Gでも3GPPで積極的に技術提案をし、特許獲得を推し進めてきた。その結果として2018年3月30日には、5G NRに関する495件の特許の利用を公正、合理的かつ平等な条件で許諾すると、欧州電気通信標準化機構(ETSI)にて宣言。宣言を実施した企業の中では、3番目に多い特許数になるという。
シャープが特許を取得したのは、特にネットワークと端末、あるいは基地局と端末の間の通信に関する技術だ。実際に取得している特許は無線通信部分に関するものが多いが、コアネットワークと端末の間の通信に関しても特許の取得に取り組んでいるとのこと。
ただし3月に発表した特許ファミリーはNon-Standaloneの仕様策定によるものであり、今回Standaloneの仕様策定がなされたことで、「それに合わせた特許ファミリーが、少なくとも数十件ある」と山田氏は話している。時期は未定としながらも、追加でそれらの特許許諾もETSIにて宣言していく予定で、合計すると500を超える特許許諾を出すことになる。シャープでは4Gにおいては、米Avanciが運営する特許プラットフォームに参加するなどしているが、5Gについても、さまざまな企業に活用してもらうことを推し進めているとのことだ。
シャープ自身の事業に関しても、5Gの特許を持つことには大きな意味があると山田氏は話す。自ら特許を持つことで、特許使用料を支払う必要が減ることによるコストの低減や、他社からの訴訟リスクの低減につながることはもちろんだが、事業戦略面でも重要な意味を持つという。
例えば、同社では2019年までの中期経営計画において、注力分野の1つとして「8K」を挙げている。だが8Kコンテンツの配信は放送波では帯域的に限界があることから、家庭へのラストワンマイルを無線で実現するのに、5Gを用いるという動きが日本でも出てくる可能性があるという。さらにその先を見越せば、8Kの映像配信を5Gで展開するなど、モバイルで8Kを活用する流れもでてくるのではないかと、山田氏は話している。
そしてもう1つ、中期経営計画ではIoTにAIを組み合わせた「AIoT」に力を入れる方針も打ち出している。だが家電などさまざまなAIoT機器をネットワークに接続するには、現状購入者がWi-Fiの設定をする必要があるなど、設定に手間がかかる。
そこに5Gを用いることで、ユーザーが介在することなくネットワークに簡単に接続できる仕組みを実現できれば、AIoT機器の普及にも貢献することになる。そうしたことからシャープが5Gに取り組むことは、「事業全体の下支えにもなる」(山田氏)としており、各事業部門と連携を図り、情報交換をしながら標準化の動向を事業に活用している。
シャープでは4Gの時代から約10年間、3GPPでの標準化と特許取得に取り組んできた経験から、社内で効率的に特許を取得するためのノウハウを積み上げており、4Gの初期仕様策定時と比べると、5Gで取得した特許の数は倍以上に伸びているという。そこで今後は、実際の製品に実装されやすい技術にフォーカスして特許取得を進めたいとし、「量だけでなく質の部分、いい特許を取得することを目指す。強いポートフォリオを作っていきたい」と山田氏は話している。
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