一方、従来からの読者には、「前みたいに女子力以外の情報もアップして」「読み足りない」という声もある。つまり、完全に「インスタ+等身大ニーズ情報」となっているわけではなく、一部欠けた状態となっているのだ。
MERYの特徴は、同じ消費者の立場の若年層の女の子がライターになり、自分がいいと思ったものを書いていた点だ。同年代の女の子たちが必要とした記事を書いたので、ニーズがよく分かっていたのだ。
年長者の編集者やライターなどが想像や取材で書いたのではなく、リアルな女の子の日常から生まれたテーマも多かった。たとえば以前取り上げた「勉強垢」の話題などは、現状のMERYにはないが、リアルな10代女子の情報だ。
現在は編集部主導でファッション誌的な情報に終止しているようだ。しかし、MERYがウケた理由は、「他にはない(ほしい)情報が探せば絶対にあるから」という点も大きかったのは忘れてはならないだろう。
彼女たちも、実際はキラキラだけではない日常に暮らす自分たちを感じている。けれど、きれいになりたい、可愛くなりたいとも同時に感じている。現状は小学館主導でファッション誌のインスタ版になってしまっているので、今後それ以外のコンテンツも取り上げていくのかは重要なポイントとなりそうだ。
MERYには多数のライバルとなるアプリがある。女子力高めのキラキラアプリだ。MERYが圧倒的な支持を得ていたときから1年が経ち、その間に「LOCARI(ロカリ)」「TRILL(トリル)」「LAURIER PRESS(ローリエプレス)」などのアプリも力を得ている。
MERY再開と同時期に、ロカリは「オトナ女子のNo.1アプリ」とうたうCMを流し、ローリエプレスは初著書「自分もSNSも かわいすぎてツラい」を発売するなど、他のアプリも負けていない。
MERYの記事は、以前は驚くくらいの圧倒的なブランド力とアクセスがあったが、現在は過去の記事はすべて消え新しいものとなったので、ランキング上位の記事でもまだ数千程度しか見られていない。アプリの話題も一両日で落ち着いてしまっている。
MERY完全復活の鍵は、MERY信者を再び満足させられるか、他のアプリに移っていたユーザーを呼び戻せるかが大きなポイントと言えるだろう。10代女子のニーズは変わらない。10代女子の好みとニーズを満たすInstagramは時代的に支持を得た。同様に、今後彼女たちの好みとニーズを満たすアプリが圧倒的なシェアを取っていくことは間違いないだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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