ソフトバンクの「スポナビライブ」に込められた孫氏の思い - (page 2)

 大島氏によると、スポナビライブは元々パリーグLIVEと同様「ソフトバンクユーザーだけの、無料サービスにしようと思っていた」ため、ソフトバンクユーザーから料金を徴収することはあまり考えていなかったという。しかし、それではサービス自体の価値を毀損してしまうことから、コンテンツの価値が約3000円であると評価し、当初の金額を設定したのだそうだ。しかし、その価格ではユーザーから理解が得られず、他社も参入してきたことから、ライセンスホルダーと相談した上で、新たな料金体系を決めたのだという。

 ちなみにソフトバンクは、2016年8月末から11月末にかけて、スポナビライブのデータ通信量を無料にするキャンペーンを実施しており、ある意味大手キャリアがゼロレーティングに踏み込んだことから話題となった。この施策について、大島氏は「(ゼロレーティングについて)良い、悪いとは言い切れないのが今の状態。ただ多くの人が、サービスをどこでも快適に体験できる環境を用意したいという考えがあり、低画質でのお試しという形でキャンペーンを実施した」と話し、スポナビライブのユーザー認知を高めるための施策であったと説明した。

 では、今後同種のキャンペーンを展開する考えはあるのかというと、「可能性がゼロではないが、今は必要性を感じていない」(大島氏)という。スポナビライブ自体の認知が高まったことに加え、ソフトバンクが2016年に、安価に大容量通信を利用できる料金プラン「ギガモンスター」を開始したことから、あえてゼロレーティングに踏み込む必要はなくなったという考えのようだ。

ITでプロスポーツを盛り上げる取り組みを

 大島氏によると、スポナビライブでは今後、プロ野球の開幕などに合わせて積極的なプロモーションを展開していくという。また、ITなどテクノロジの有効的な活用方法も模索していきたいと話す。具体的には、スマートフォンで気軽に視聴してもらい、SNSなどで拡散したり、チームのグッズやチケット購入につなげる仕組み作りを考えているようだ。

 現在、スポナビライブはPCからの利用が最も多いそうだが、大島氏は「やはりスマートフォンにこだわりたい」と話す。そのため、縦画面向けの動画配信など、従来のスタイルにこだわらない配信スタイルも検討しているそうだ。「電車の中でスマートフォンを横にして見ているのは動画視聴の人だけ。横にしなければいけないのは不便なので、その辺りも変えられないかチャレンジしていきたい」(大島氏)。

 そしてもう1つ、新しいスポーツ視聴の体験を作り出す上でも、ユーザーとのコミュニケーションには特にこだわっていきたいと大島氏は話す。かつてはプロ野球の人気選手であれば多くの人が知っていたが、現在は必ずしもそうではなく、プロスポーツに対する距離が遠くなっていると懸念する。それだけにプロスポーツ、ひいてはチームや選手との距離感を近づけることが、プロスポーツ自体の盛り上げに大きく影響すると考えているという。

 では、大島氏は変わりゆくスポーツ市場のあり方をどのように考えているのだろうか。この質問には、「あくまで私見だが、次のスポーツ市場はソーシャルだと思う」(大島氏)と答えた。スポーツをしているという社会的な意義に対して人が集まってくることから、SNSのように訴えたいポイントをいかに可視化し、社会的に広げていくかが重要になってくると考えているようだ。スポーツにITの力をふんだんに取り入れ、地域や社会に貢献していくことが、日本のスポーツの活性化につながると、大島氏は見ているようだ。

(C)B.LEAGUE(男子プロバスケ)
ソフトバンクはBリーグのトップパートナーとなっていることから、スポナビライブでもBリーグと連携した施策を検討しているとのことだ
(C)B.LEAGUE(男子プロバスケ)

 そうした取り組みの一環として、大島氏はBリーグと現在進めている取り組みを挙げた。ソフトバンクは2016年、Bリーグのトップパートナーとなるなど関係が深く、「Bリーグと我々は目指す方向性が一致している」(大島氏)。そこで、Bリーグ側と新しいスポーツの見せ方を検討しており、来シーズンには具体的な取り組みが明らかにされるとのことだ。

 大島氏は、これまでプロスポーツを支えてきたテレビや有料放送と戦うのではなく、「それらを超える何かがないといけないし、そこにないものを提供し、理解してもらえるものを作っていかないと意味がない」と話す。スポナビライブならではの価値を作り出し、視聴者、そして競技者も喜ぶサービスにしていきたいという。

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