講演の後半は、西鳥羽氏が「コールセンターの効率と戦略性を向上させるAIソリューション」と題し、レトリバ製AIソリューションでコールセンターの価値を高めた事例を紹介した。
コールセンターでは、応対スタッフが電話やメール、最近はチャットを使って問い合わせを受け、FAQや応答履歴などを参照して回答する。その際、スタッフが1件ごとに処理する必要があるため、どうしても人件費が高くなってしまう。しかも、1人前の応対スタッフになるまでには熟練が必要なのだが、ある程度慣れると退職する人が多く、定着率の低さも問題だ。さらに、大規模なコールセンターの設置地域には偏りがあって人員を奪い合う形になり、補充も難しいという。
また、応対データを記録するにもルール設定が難しく、どうしても作業やノウハウが属人化してしまう。音声の録音データなどもあり、データ量は膨大で、非構造化データばかりになる。そのため、貴重な情報が蓄積されているのに活用できず、ほかの事業に対して付加価値を提供しにくい。
こうした課題を解決するため、レトリバはAIソリューションの「Answer Finder」と「VoC Analyzer」をコールセンター業務に適用した。
まず、Answer Finderを利用し、スタッフ向けの応対業務支援システムを作った。ここでは、事前にお手本になる信頼性の高い応答データを集め、機械学習させてからスーパーバイザーがチューニングを施しておく。
このシステムに対してスタッフが問い合わせ内容を入力すると、適切と思われる回答候補が表示される仕組みだ。これにより、導入前に平均7分かかっていた応対時間を2分に短縮した。うまくブラッシュアップすれば、問い合わせする人がアクセスして回答を直接得るという、問い合わせのセルフサービスシステムも構築できるという。
VoC Analyzerは、蓄積した応対データを分析するために利用した。例えば、問い合わせ履歴やアンケート結果、SNSデータなどに対して自然言語処理、深層学習、機械学習をかけると、キーワードや注目データ、類似データが得られる。しかも、分析作業の手間が、従来の10分の1~100分の1になる。
西鳥羽氏は、この分析作業が製品改善テーマの発見、サービス解約理由の発見、市場ニーズの発見などに使われている、と話した。つまり、コールセンターを戦略的に活用できる可能性が高まるわけだ。
今後については、まず音声認識エンジンと連携させることで、スタッフの入力作業の軽減を図る。実現すれば、問い合わせ電話を受けている最中に回答候補が自動表示されるシステムが実現され、より迅速に応対サービスを提供できるようになる。さらに、要約エンジンとの連携で、応対履歴を自動生成するシステムも開発していく。
なお、音声認識の研究成果については、深層学習フレームワーク「Chainer」へコントリビュートしており、Chainerへの実装といった貢献をしている。
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