この問題で悲しいのは、記事に関わる誰かが最低限の事実確認をしさえすれば回避できるはずだという点だ。誰かがFireEyeのプレスリリースを読んで、あのような結論に至った経緯を記事の筆者に問いただせば済んだ話だ。
おっと待った。Google Newsに表示されたSoftpedia Newsの概要文には、まさにそれを実施したとある。
「FireEyeが本日公開した公式プレスリリース(実際には3週間前に公開した)には、Microsoftが同社にWindows 10システムから情報を収集するためのアクセスを提供していることについては何も書かれていないが……」
つまり、この記事の筆者は問題に気付いていながら知らぬ顔を決め込み、自らの疑いを無視してクリック狙いのでっち上げの見出しを追加したわけだ。
勘弁してほしい。
では、実際のところはどうなんだろうか?
Windows Defender Advanced Threat Protection(WDATP)は、Windows 10のテレメトリーデータとは何の関係もない。名称から推測できるように、これはWindows 10のProあるいはEnterpriseエディションを採用している大企業のみが追加できる拡張機能だ。
WDATPのプライバシーに関する声明は以下のように説明している。
お客様のデータは、顧客IDに基づくアクセス認証および論理的な隔離によって分離されます。個々のお客様は、ご自分の勤務先から収集されたデータと、Microsoftから提供される全体的なデータにのみアクセスできます。
(中略)
お客様のデータは他のお客様から分離され、共有されません。ただし、Microsoftによるデータ処理の結果に現れる洞察は、他のお客様と共有される場合があります。この結果に、お客様固有のデータは含まれません。個々のお客様は、ご自分の勤務先から収集されたデータと、Microsoftから提供される全体的なデータにのみアクセスできます。
同僚のMary Jo Foley記者は3月にこのサービスが発表された段階で記事を書いている。WDATPのポイントは、9月に公開されたホワイトペーパーにあるように、企業のセキュリティ専門家が「ほかのすべてのセキュリティをすり抜けた」(侵入後の調査で)攻撃の形跡を検出するのを助けることだ。WDATPは、「エンドポイントでのアクティビティを非表示にしようとする既知または不明な攻撃者に対して実行可能で、関連度の高いアラート」を生成する。
Microsoftは、同サービスが「自社と他社の製品インテリジェンスソースを組み合わせ、あらゆる脅威をIntelベースで検出し、アクターの目的とインテントコンテキストの詳細を確認できる」、「独自の脅威インテリジェンスサポート技術情報の構築」を提供するとさえ説明している。
「自社と他社の製品インテリジェンスソース」の後者にはFireEyeのデータソースが含まれる。
WDATPのインフラは非常にプライベートだ。このサービスを導入した企業は、社内で収集した情報を解析するためのセキュアな専用ポータルを得る。社内のセキュリティ担当者は、デバイスあるいはネットワークへの侵入に使われた疑いのあるファイルを発見したら、脅威データベースを使ってそのファイルをさらに解析できる。この解析で、攻撃元と攻撃方法についての手掛かりを探せる。
そして、FireEyeはWindows 10デバイスからの汎用的なテレメトリー情報を、求めても必要としてもいない。そうした情報は、FireEyeの任務にまったく関係ない。
大統領選期間中にFacebookやウェブを汚染した、ゴミと判定された記事と同様に、この類いの記事は確証バイアスを肥やしに成長する。邪悪なMicrosoftのことだから密かにユーザーの秘密を集めているだろうと信じている人は、こうした記事の“証拠”を分析しようという気にはならないだろう。それよりも、そういう記事をコピー&ペーストして公開する方がずっと簡単だ。
そして、同じ確証バイアスがこういう虚偽ニュースを強化し、クリックとさらなる面白そうな証拠を集め、検索結果のトップに押し上げるのだ。内容が正しいかどうかは関係ない。
政治とテクノロジでは、問題はアルゴリズムの1つだ。Googleはニュースページで多くのコンテンツ工場を遮断することで、検索結果を向上させる方向への小さな一歩を踏み出した。だが、明確な真実を抽出するフィルタは存在しない。そして、そんなフィルタが実現するまでは、この問題は悪くなる一方だ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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