「シャープの名前は残る」--合計4時間33分に渡った株主総会の一部始終 - (page 2)

1株あたり88円は、真摯に話し合った結果

 会場での質疑応答では、延べ19人が質問した。質問は高橋社長をはじめとする現経営陣の責任を追及する声があがった。

 壇上の経営陣に向かって、「こんなざまにしたのは、みなさんのせいだ」と、シャープが買収されるに至った責任を追及。「社長としては失格」、「役員賞与を返上するのは当たり前。役員報酬も全額返上してほしい」などの厳しい声もあがった。

 一方、質問の多くは鴻海との交渉過程において、偶発債務があることを明らかにした結果、払込額が約1000億円減少したこと、さらには、払込が実行されなかった際にも液晶ディスプレイ事業を買収できる条項が盛り込まれたこと、そして、期日内に鴻海精密工業からの出資が確実に完了するのか、という点に集中した。

 橋本取締役常務執行役は、「最優先事項は、確実に払込を完了させること。偶発債務の情報を提供したのは、出資をより確実なものにするためであり、外部アドバイザーの意見を得て、その時の最善を尽くした」と説明した。

 さらに、これによって鴻海側からの出資が、1株あたり88円で買い取ることが決定。結果として、当初の4890億円から、3888億円へと約1000億円減額したことについては、「交渉の経緯について説明できないが経営状況、経営見通しの精査を重ねて、両社で真摯に協議してきた結果によるもの。88円の株価には合理性があり、また企業価値を高められると判断し、取締役会で契約内容の見直しに至った」と説明した。

 また、液晶ディスプレイ事業の売却条項が盛り込まれた点については、「出資完了に向けて、両社で全力で取り組んでおり、このオプションが行使されることは想定していない」という説明を前面に打ち出し、「シャープがこの提携をやめたい場合に発生するオプションであり、鴻海に瑕疵があった場合には、このオプションは行使できない」などと説明した。

 株主からは、「オプションが行使されることを想定していないのであれば、この一文を削除すべきだ」との要望も出された。

鴻海からの払込完了は6月末を目指す

 鴻海の払込については、前日に台湾で開催された鴻海の株主総会において、鴻海精密工業会長の郭台銘氏が、「6月末までに払い込みを目指す」という発言があったことを紹介。「最長で10月5日が期限であるが、そこまで延びることはなく、一刻でも早く払込を完了させたい。できれば6月末を目指したい」と述べた。

 シャープ堺工場(現在の堺ディスプレイプロダクト)に対しては、2011年にソニー、2012年には鴻海によるシャープへの出資が株価変動などを理由にして実施されなかったといった経験があるだけに、実際に払込が完了するまでは安心できないというのが株主に共通した思いだろう。

 払い込みが実行されるには、各国の独占禁止法をクリアする必要があるが、「本来ならばもっと多くの国での審査が必要になると想定しており、8月末から9月中旬の決着を想定していた。いま残っているのは中国の1国だけであり、審査が完了するまでには、それほど時間がかからないと判断している」と説明した。

会場には1029人が参加。株主総会合計では4時間33分の長丁場となった
会場には1029人が参加。株主総会合計では4時間33分の長丁場となった

 だが、これらに関する質問が何度も繰り返されるなど、株主の理解を得られる説明には至っていなかったといえる。

 質問では、赤字のシャープが、出演料が高いとされる吉永小百合さんをテレビCMに起用していることに関するものもあったが、高橋社長は、「吉永小百合さんは私より上の年齢層には絶大な人気がある。吉永さんが出演するCMは、高齢者の関心が強いところ。出演料が高額といわれるが、詳細はいえないものの、深くシャープのことを考えてもらっている」と回答した。

 定時株主総会では、第1号議案の定款一部変更の件のほか、第2号議案の第三者割当による募集株式(普通株式及びC種種類株式)発行の件、第3号議案の取締役10名選任の件に加え、第4号議案の会計監査人選任の件、第5号議案の取締役の報酬等の額の改定および内容決定の件、第6号議案のストックオプションとして新株予約権を発行する件については、すべて可決。12時53分に閉会。所要時間は、2015年同じ過去最長となる3時間23分となった。

 なお、15時30分からは、普通株主による種類株主総会を開催。鴻海精密工業など3社に対する普通株式およびC種種類株式発行による資金調達に関して定款を変更する議案を決議した。

 同株主総会は、437人の株主が参加し、延べ13人が質問。午後4時40分に議案を可決して閉会した。所要時間は1時間10分だった。2つの株主総会の合計は4時間33分の長丁場となった。

 今回の株主総会を経て、鴻海による買収が決定。今後は、鴻海傘下でシャープの再建が始まることになる。また、本店所在地を現在の大阪市阿倍野区から、大阪市堺市に変更することも決定。7月1日付けで移転する。

 シャープの野村副社長は、「シャープの名前は残る。シャープはいつまでもシャープ、ということでがんばりたい」と発言した。

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