マーケターの“仮説力”を取り戻す統合分析ソリューション「マゼラン」--サイカ平尾氏に聞く - (page 3)

マーケティング全体最適によって、企業の組織や評価はどう変わるのか

――マゼランの活用によって、企業のマーケティング活動はどのように変わっていくと想定していますか。

 これからのマーケティング活動では「評価」と「組織」が変わっていくと考えています。

 これまで、コンバージョン至上主義のマーケティング活動が行われている中で、コンバージョンに直接的な効果を持った施策に携わる人は明確なKPIの達成を評価されています。その一方で、マスメディア広告やブランドマーケティングといった認知拡大のためのマーケティングに携わる人たちは、出稿量と想定リーチが評価の指標となっていて、成果に繋がらない施策についてはKPIさえ存在しない状態が続いてきました。こうした異なる施策は分業体制によって横の連携が取れていないのも課題です。マゼランによる全体最適によって、こうした課題を解決できると考えています。

 マーケティング施策の全体最適は、認知系の施策もコンバージョンにどれだけ貢献したのかを評価でき、効果に結びつく施策を担当しているマーケターにとっては、認知系施策との相性や関連性を視覚化できるようになります。これにより、マーケティング組織のさまざまな役割が、おしなべてコンバージョンへの貢献度という物差しで等しく評価できるようになります。

 従来であれば、コンバージョンに繋がる施策で効果をあげた人が一番評価されていましたが、実際に全体を俯瞰した結果、PR施策が強力な起点になっていることがわかれば、MVPはPRの担当者であるべきですよね。各担当者が「施策のコンバージョン=事業のインパクトに対する貢献度」をはっきりと認識しながら施策に注力できるようになるのです。

 そして、こうした社内の一体感が生まれると、オンライン・オフラインに関係なく施策の全体最適を指揮するCMO体制が当たり前になると思います。米国の企業では昨今CMOが増加していますが、CMOがCMOとしての仕事ができるのは、マーケティング活動のオンライン・オフラインを統合してジャッジメントができる「場」があるから。米国では、それを優秀なデータサイエンティストを社内に抱えて実現しているのです。マゼランは、CMOにマーケティング全体最適のジャッジメントをするための情報を届ける、疑似のデータサイエンティストのような存在でありたいと考えています。

 加えて、社内で分断されていた組織が共通の評価指標によって一本化するだけでなく、広告会社など社外とも目標である評価指標を共有して一体となって動けるようになると思います。

 広告代理店に対して、社内の重要なデータや情報を見せないことは事業会社の常識だと思いますが、代理店側の担当者からすると、自分自身が何のために努力しているのかがわからない中で、機能として動いている状態が続いているわけです。そこでも社内外でマーケティング全体を把握しながら同じ指標を共有することで、コラボレーションの幅が広がると思います。

 ただ、こうした変化はすぐに起きるものではありません。まずはオンライン施策の現場から変わっていく。その結果として生まれる全体最適の分析結果が社内で報告され、レポーティングが変わっていく。すると、施策を統合して見るという考えが社内に浸透して、マーケティング責任者や役員の経営判断も全体最適の中でなされるようになっていく。現場、レポート、判断のフェーズで少しずつ変化が生まれ、その活用シーンもデジタルだけでない領域に広がっていくという形で、組織に変革が生まれていくと考えています。

――マーケティングの「評価」が変わるとのことですが、施策そのものはどのように変わっていくのでしょうか。

 CPA至上主義から、統合分析による間接効果も加味したCPAを考える方向へと変わっていくと思います。アトリビューション分析ではもう当たり前になっている考え方ですが、それがさらに受け入れられていくでしょう。加えて、将来的にはオフライン広告にもPDCA運用が求められる世界がやってくると思います。

 これまでは、出稿予算を決めてそれを実行していくだけだったところが、今月の出稿によるコンバージョンへの貢献を把握して、次月の出稿プランをブラッシュアップするというように、出稿プランを見直すサイクルが短期化し、オフライン広告も全体最適の中で調整される対象になっていく。これまでオフライン広告が偶然性を生み出す外部要因のような存在だったところが、自分たちの施策として手に戻ってくるようになるのかもしれません。

電通のノウハウをマゼランの中に吸収していきたい

――サイカは先日、マゼランの開発・推進で電通と業務提携しました。今後マゼランの展開でどのような事業シナジーを生み出していくのでしょうか。

 まずは、サービスを一緒に展開していきたいです。電通は日本で一番と言っていいほど広告クライアントの課題を抱えている企業なので、営業面での協業を通じてマーケティング全体の最適化という課題を解決したいと考えています。

 次に、マゼランの分析ノウハウを強化していきたい。彼らはオンライン・オフラインを問わず総合的なプロモーション運用を手がけてきて、その経験から生み出された膨大なプロモーション分析のノウハウを持っている。そういった知見をマゼランの中に吸収して、サービスに昇華させていければと考えています。

 そして、マゼランが生み出した示唆を絵に描いた餅にしないように、マゼランの運用とそれによるマーケティング施策の全体最適の実行面で、電通と一緒にソリューション効果を最大化していきたいと考えています。

――最後に、今後の目標について教えてください。

 いまは、夏に予定している正式リリースを目指して機能やインターフェースをブラッシュアップしています。すでに関心を持っている企業に対しては、先行リリースを開始しています。数社の大手企業による採用が決まっているほか、正式版を利用したいという問合せも集まってきている状況です。目標は年内に100社の導入です。

 さまざまな意見を元に、まずはこのマゼランをユーザーにとって使いやすいツールにしていきたいです。そして、その先にユーザーの想像を超える機能や価値を追求していきたいと考えています。

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