エンタテインメントの未来を考える会大賞の選考にあたり、2015年から2016年にかけての、個々が感じたゲームなどのエンタメの流れを挙げていった。
辻氏は、スマホゲームがコンシューマゲーム機レベルのクオリティでリリースされ、開発費も高騰している流れがある一方で、「ねこあつめ」のような素朴なグラフィックかつ手軽に遊べるゲームがヒットしたことに触れ、両極端の状況になっているという。もちろん競争が激しく、埋もれがちなスマホゲーム市場であることは前提にしつつも、アイデアに突出したものがあれば、当たってヒットする素地がある市場であるとも語った。
平氏は、これまでスマートフォンなどお手軽に体験できるタイプのゲームが流行していたが、VRをはじめとした濃い体験ができるゲームに目が向いてきているとの見解を示す。ゲームではないが、アニメ「ガールズ&パンツァー 劇場版」の4DX上映をはじめ、「KING OF PRISM by PrettyRhythm」では、声援を送って楽しむ応援上映といったものが人気であることに触れ、日常では体験できないものが求められているとし、その流れなかに非日常的なエンタメとして、VRやライブコミュニケーション映画、音楽ライブイベントの盛り上がりがあるのではと語った。
林氏は、2016年がコンシューマゲーム勝負の年ととらえていることに触れ、2015年はそれにつながる1年だったと振り返る。林氏がWii U向けの「Splatoon」(スプラトゥーン)の大会に足を運んだ際、肩車した親子連れの観客が“ブキ”について話をしている光景を見たこと。またPS4向けの「Bloodborne」(ブラッドボーン)にも触れ、オリジナルタイトルにヒットが出てきて、濃い体験ができるゲームを受け入れてくれたのが2015年だったと総括した。
ちなみに筆者は2015年によく聞かれた話題にVRとeスポーツを挙げた。とかくグリーやgumi、コロプラといったモバイルゲームで躍進を遂げた企業の次の一手としてそろって乗り出している状態で、2016年からが本格普及の第一歩なかがら、話題に事欠かなかった1年であったと感じている。eスポーツも2015年はよく耳にした言葉であり、ややバズワードのような扱われ方をした側面もあるが、国内外で競技性のあるゲームの浸透、また賞金制大会といった事例も含めて一歩前進したような1年ととらえている。
大賞受賞作として、真っ先に決まったのはスプラトゥーン。4人が口をそろえて絶賛するほど突出したタイトルであった。
「2015年では群を抜いていた。あのゲーム性をキャッチーにまとめ、幅広い人たちが熱中して遊んだ。大会やライブまで行い、一般のニュースまで取り上げらなど世間的な注目も集めた。個人的に400時間遊ぶぐらい面白く魅力があった。スプラトゥーンがあったから、コンシューマがまだまだいけるとも思った」(林氏)
「2015年はスプラトゥーン1択かと。TPS(サードパーソンシューティング)のような、日本ではなかなか根付かないゲームジャンルをアレンジしてヒットまで導いた。日本におけるTPSタイトルが100万本を超えた記憶はあまり無い。さらにコミュニティ周りの運用が飛び抜けてよかった。公式Twitterアカウントでなにか投稿するたびにユーザーから大反響を呼んだ。今のコンテンツの消費のされ方はコミュニケーションとセットになっている。ゲームを購入してもらうためのTwitterの運用ではなく、記事やイラストで日常的に楽しませる運用を徹底してやっていた」(平氏)
筆者のスプラトゥーン選出理由は、2015年で一番遊んだタイトルというのもあるが、多人数対多人数で遊ぶタイプのゲームは以前からPCやアーケードゲームで人気となっていたものの、コンシューマゲームシーンでいくと、ハンティングゲームに代表されるような多人数でCPUの巨大なボスを倒すタイプのものが主流となっており、多人数対多人数のゲームが親子で楽しむといった一般のシーンまで普及した記憶があまりない。しかもそれがTPSでヒットしたことがひとつ。闘会議2016では、賞金制のゲーム大会も多数行われていたが、それをはるかに上回る観客が集まっており、シオカライブも含めて注目度が抜群だったことも理由だ。
また、昨今ゲーム実況の隆盛でゲームプレイを見る文化が定着しつつある。ゲーム動画で見て楽しむゲームというのは、プレイヤーのプレイスキルやクリエイティビリティを発揮できるもの、勝ち負けがハッキリとわかるようなもののほうが楽しめるという考えがあり、スプラトゥーンのインクの撃ち合いは見た目にも鮮やかでキャッチーだ。アクション性も強く勝ち負けもハッキリしているため、面白そうに感じる。ユーザーの入口をうまく作ったタイトルだとも考えている。
次にスマホゲーム「グランブルーファンタジー」も大賞受賞作となった。平氏からはムーブメントをおこしたタイトルであり「最近ではガチャの問題でネガティブな話題が出ているものの、ゲームそのものは素晴らしい」とし、ポジティブな部分が語られていない状況はもったいないという。林氏も物語とキャラクターがしっかりと立っており、それに魅せられた熱心なファンがついていると語る。辻氏も開発陣への取材を通して、真面目により良いRPGを作る意気込みで臨んでいたことが伝わってきたことから、その部分にもフォーカスを当てたいと語った。
もうひとつ、辻氏が提案したねこあつめも大賞受賞作となった。すきま時間のニーズにあっていたことや、キャラクタービジネスでも成功した一面もあり、ゲームのトレンドとしてひとつのムーブメントを生み出したことを評価。これら3作品が2015年の大賞作品となった。
なお選考の際の話題では、林氏から「モンスターストライク」はいまだ衰えぬパワーがあるといったことや、「あんさんぶるスターズ!」に代表される女性向け乙女ゲームのジャンルの盛り上がりにも注目すべきポイントがあったことを付け加えた。また今後の展望についての話題のなかでは、やはりPlayStation VRの発売をはじめとしたVRの盛り上がり、また位置情報を活用した「Pokemon GO」に期待する声が上がっていた。
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