映画会社が語るVOD戦略--人気作、タイミング、見放題、単品販売の出し分けは? - (page 2)

SVODはドラマ向き、人気コンテンツを分析する

 現在、映像配信ビジネスは定額制のSVODが主力。TVODやESTは限られたユーザーのみが活用しているケースが多い。映像配信の主戦場であるSVODを各社はどう捉えているのだろうか。


バンダイビジュアル執行役員事業本部営業部部長の小西貴明氏

 小西氏は「SVODは映像配信の入り口的存在。SVODで映像配信に触れ、デジタル配信の世界を経験してほしい」と入門的役割に位置づける。VOD事業を10数年手がけてきた吉村氏は「ずっと普及が進まなかったこの市場が、ここ2~3年で劇的に一般ユーザーの方の興味が上がってきた。それにはやはりhulu、dTVといった月額見放題制を導入しているサービスの普及が大きい」とした。

 西田氏が「SVODに向いているタイトルは」と問うと、吉村氏は「DVDレンタルと同じで、特定の強いジャンルがあるように思う。東映では『バトル・ロワイアル』が突出しており、同様にアクション映画の人気が高い。また2時間の長尺ものよりも、30分の戦隊物など連続作品をまとめて視聴していただくこともニーズとしてある」と人気コンテンツを述べた。

 一方、ESTを中心に展開する20世紀フォックスでは「24」「プリズン・ブレイク」などの海外ドラマが視聴の中心とのこと。バンダイビジュアルでも「『攻殻機動隊』のようにシリーズ展開されており、かつ話数も多いものが人気。コアなファンがついている作品よりも、一般の人まで広く認知のある作品のほうが向いている」(小西氏)としており、まとめ見、一気見ができる連続シリーズの人気が比較的高いようだ。

映像配信はビデオレンタル店になり得るか

 ただ、映像配信は盛り上がってきているものの、主流にはなっておらず、一方でDVD、BDレンタル店の減少は続いている。「DVDやBDのパッケージをレンタルしているユーザーを映像配信にシフトしていきたい。現在レンタル店舗の減少とともに、作品が借りられる回転数も減っており、消費者とのタッチポイントが少なくなってきていることが懸念点だ。タッチポイントの減少はそのまま映画などコンテンツの視聴機会が減っていると捉えており、心配している」と吉川氏は話す。

 この減少分を補うためには「映像配信の啓蒙活動を続けていくことが大事。配信では延滞料がかからないなど、基本的なことに気づいていない人もいる。そうした基本システムの理解を促すとともに、パッケージの発売日よりも先行配信するなど、デジタルの強みを活かした展開をしていきたい」(吉川氏)と、映像配信ビジネスを定着させるためのポイントを挙げた。


モデレーターの西田宗千佳氏

 また吉村氏も「約3年前からYouTubeとニコニコ動画にオフィシャルチャンネルを設置し、有料コンテンツへ導くルートを作った。また、旧作を掘り起こすことが映像配信における課題の1つと捉えており、パッケージ化されていない作品、廃盤になってしまった作品を映像配信で届けたい」と施策を明かした。

 西田氏は「パッケージメディアでは、テレビの前など視聴場所が限定されていたが、映像配信はいろいろなデバイスからコンテンツを視聴できるようになる。ネットワークさえあればテレビでもPCでもスマートフォンでも見られる、そんな時代がやってきている。その中で月額見放題がわかりやすいため注目されているが、プレミアム感が出しやすいESTやスピード感のあるTVODなど、好きなタイミングと価格で楽しめる環境が作りやすい。そうした環境が整ってくれば日本でも映像配信は広がる」と映像配信ビジネスのこれからについて述べた。

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