試行錯誤の末に完成したFES Watchは、電子ペーパーの魅力が詰まった製品に仕上がった。先述したように、ボタンを押すだけで文字盤とベルトの柄を24パターンに瞬時に変えられる。また、電子ペーパーは柄を変える時にのみわずかな電気を使うため、1つのコイン電池で2年間の長期使用が可能。重量も約43gと着けていることを忘れてしまうほど軽い。さらに、加速度センサによって、FES Watchをつけた腕を自分の顔の向きに傾けた際のみ時間を表示するなど、最小限のデジタル要素も持たせた。
技術的な新しさだけでなく、形状も斬新で奇抜なデザインにすることで、“新しいもの好き”にアピールする道もある。しかし、杉上氏が目指しているのはファッションのデジタル化が当たり前になる世界であり、新たなクラシックを作ることだった。そんな思いから、柄が変わる体験のみが際立つように、ニュートラルな時計のシルエットを持たせたのだという。
製品のターゲットは、遊び心のあるアイテムが好きでファッションにこだわりのある男性。その時の服装や気分など、シチュエーションによって時計の柄を変えられるため、「家を出た後でもボタン1つで着替えられる」と杉上氏は話す。
今後はユーザーの意見を取り入れつつ、より豊富な種類の柄に変えられる製品や布地に近い電子ペーパー技術、腕時計以外のファッションアイテムの開発や社外のクリエイターやブランドとのコラボレーションなども検討したいという。
「我々のビジョンは、デジタル化でファッションをもっと自由にもっと楽しくすること。まだ時計を1つ世に出しただけなのでビジョンを伝えきれていない部分はあると思うが、いろいろ仕掛けていきたいと思っている。ユーザーやクリエイターと一緒に、一歩づつビジョンを実現させていきたい」(杉上氏)。
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