顧客は機内食で航空会社を選ばない--50年以上信じられてきた“ウソ”を暴いたJALのCX戦略 - (page 2)

山田井ユウキ 井指啓吾 (編集部)2015年10月22日 08時00分
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機内という限定された空間だからこそできること

--機内以外、空港内ではいかがですか。

深田氏:Facebookに「チェックイン」という機能がありますが、実はその人気ランキング上位にJALの空港ラウンジである「サクララウンジ」が入っています。なぜランクインしているのかというと、多くの方にとって、飛行機に乗るということが一つのハレの日でありイベントなのだと我々は認識しています。従って、飛行機に乗るとき写真を撮ってSNSにアップする、ということにつながります。それがラウンジにいるとなると特にアップする方が多くなるのだと思います。

 つまり、ラウンジにいることを皆にちょっぴり自慢したいわけです。ただ、そのままラウンジにいることを投稿するのではなく、「ラウンジの食事がおいしい」とか「ラウンジのお酒が充実している」みたいに投稿する人が多いのです。なるべく自慢にならないようにということだと思います。それならば、我々は「ラウンジにいることを自慢にならないようにSNSに投稿できるための“言い訳”を用意する」ことが、CXの観点から重要であるといえるのです。


--顧客の行動だけでなく、心理も分析する必要があるわけですね。機内についてはいかがでしょう。

深田氏:先ほど申し上げたように、飛行機の機内は特殊な空間です。CXの点からは、「コンテンツ」が重要だと考えています。これは映画が見られるとか、そういう話だけではありません。たとえば機内販売。地上では特に興味がない品物でも、乗っているとすごくほしくなった経験はありませんか(笑)。

 つまり、あれは機内だからこその体験であり、一種のエンタテインメントとも言えると思います。単純に物販としてとらえると、売り上げだとか利益だとかの話になってしまいますが、そうではないのです。CAとの会話もそう。限られた空間だからこそ、エンタテインメントになるのです。

--今後はどのようにCXを実行していくのでしょうか。

深田氏:たとえばご搭乗頂いているお客さま同士でコミュニケーションできると楽しいかもしれませんね。将来はVRやアバターみたいな技術を使って、機内を動き回るようなことができるのではないかと思います。それから機内食にしても、よくある「肉か魚か」ではなく、30種類くらい用意できれば理想的ですよね。種類が多いと飛行機に載せ切れないという意見も出てくると思いますが、それならお客さまに事前予約を頂けばいいのです。

 まだまだできることはたくさんあります。お客さまがストレスを感じないこと。何事もなかったかのように乗っていただき、降りていただく。それこそがCXの目指すところだと考えています。

--CXの重要性を全社に訴求し、理解してもらうための旗振り役は誰になるのでしょう。

深田氏:それはJALの全社員です。JALの破綻以降、(現JAL名誉顧問の)稲盛(和夫氏)が掲げた行動指針は「自分がJALを代表しているという思いを持つ」こと。この哲学がグループ全社員に共有されていることが、JALの強みなのです。

 弊社ではこの様な哲学を「JALフィロソフィ」と呼んでいます。これら「JALフィロソフィ」は我々の行動規範でありますし、それを実践に結び付けられるように、会長、社長などの役員はもちろん、海外を含めJALグループの全社員が年に4回、1回2時間の教育を受講しています。行動の規範が統一されているのは重要なことですし、誰もコスト削減のために「フィロソフィ教育」をやめようとは言いません。これがなければ破綻からの再生もなかったでしょう。「JALフィロソフィ」をベースにした自分たちのサービスには自信を持っています。その良さを、どのようにしてお客さまに伝えていくか。まず一度体験していただくために、どうやってJALを検討のテーブルにのせていただくのか。まだまだ考えていく必要があります。

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