ノーベル賞を生み出すプラットフォームに--研究者向けSNS「ResearchGate」 - (page 3)

 ResearchGateについて、「研究者がさまざまな情報をリアルタイムで共有し、フィードバックを交換しあうことにフォーカスしている。コラボレーションを通じてイノベーションできるネットワークを作りたい」と確信とともに語るMadisch氏。すでにResearchGateなしにはありえなかったようなことが生まれているという。

 Madisch氏は、ResearchGateを通じて知り合ったナイジェリアとイタリアの2人の研究者の話を紹介してくれた。イタリアの酵母研究者がサンプルを探していたことがきっかけで、ResearchGateで知り合い交流が始まったという。その2年後にナイジェリアの研究者の子どもが生後間もなく死亡してしまったのだが、イタリアの研究者によりその原因が偶然にも酵母だったことが分かったという。

 このほかにも喘息、自閉症、資源経済学、蝶の飛行パターンなど、公開された論文やQ&Aで研究者同士が知り合い、コラボレーションが生まれている。ある研究者は、科学誌に薬学分野の論文を提出したところ、1カ月後に「レビュアーがいない」と断られた。そこで、ResearchGateにアップロードしたところ、すぐにレビューを得られたという。

 また、冒頭に触れたSTAP細胞については、香港の中文大学Kenneth Ka-Ho Lee氏が、2014年3月に小保方氏チームの研究と同じ手順で反復実験したがうまくいかないとの結果をResearchGateで発表した。Ka-Ho Lee氏は実験をライブブログで公開し、話題となった。

「ノーベル賞」を生み出すプラットフォームに

 「LinkedIn」や「Facebook」などのソーシャルネットワークとは競合になるのでは――この疑問に対し、Madisch氏は科学誌「Nature」の調査を持ち出した。研究者が利用しているソーシャルプラットフォームで、ResearchGateは「Google Scholar」に次いで2位の実績がある。現在700万人いるユーザーの30%が毎週1回はログオンしており、8000万点以上の論文がResearchGateでシェアされている。登録時には研究所や大学を示すメールアドレスでなければ受け付けないようにしており、信頼性と専門性のあるソーシャルネットワークを維持しているという。

 成長期にある現在、Madisch氏がフォーカスしていることの1つが、今後どのようにして事業を拡大するかということ。社員は5年で160人に増えた。「難しい時期にあると思う。成長が自分たちのカルチャーや精神を殺してしまうことがある。CEOとして、ミッションに再フォーカスしている」とMadisch氏。成長段階でのミスが命取りになるということを肝に銘じつつ、「自分が信頼できる人と一緒に働く。信頼できるマネジメントチームでレイヤーを作っていく」と語る。

 具体的には、その分野で自分よりもすばらしい人を探すことが重要だと考える。「1人の優秀なエンジニアと500人の並みのエンジニアだったら、1人の優秀な人材をとる」と語るMadisch氏は、現在も自分が担当するエンジニア部門の社員面接に同席している。

 最後に、「ノーベル賞はいつ受賞できる?」とMadisch氏に聞いてみたところ、「我々はResearchGateで次のノーベル賞、ブレークスルーのためのプラットフォームを作っている」と答えた。これまでに、ResearchGateを利用する45人の研究者がノーベル賞を受賞しているという。

 そして、起業に反対したハノーバー医科大学時代の教授であるMichael Manns氏も、今ではサービス愛用者の1人。1年前にはその教授に招待されてMadisch氏がスピーチをした。Michael Manns博士の名前は、Einstein、Galileo、Teslaなどの科学者の名前とともに、ResearchGateのミーティングルーム名になっている。

 34歳のMadisch氏、眼差しはまっすぐだ。もちろん、医学のキャリアも無駄になっていないようだ。社内ではドクターとしても頼られていると苦笑いした。

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