ツールだけでは不足、労働実態も可視化--危機感を共有して働き方を変えるANA - (page 2)

 キャビンアテンダントや地上スタッフなどフロント業務の多くを女性が占めるANAは現在、全社員の55%が女性だという。そのため、女性が活躍し、働き続けられる場をどのように提供していくかというのは大きな経営課題でもある。また、外国籍の社員はグローバルで1000人在籍し、全体の約6%にあたるが、今後はもっと増やしていきたい意向だ。

 「日本の製造業は生産性が高いと言われている。しかし、ホワイトカラーは19年連続最下位。これは、物事の考え方や風土におかしいところがあると思っている。グローバル人材の登用で多様化を進めることで、グローバルから学んで取り入れていくことが必要と考えている」(林氏)

 ANAでは実際に、女性のキャリアデザインとして、管理職同士のコミュニティ形成の取り組みや求職者に対するフォローなどを人事が実際に行っている。しかし、林氏は「女性が多い会社だが、残りの男性の意識が変わらないとまったく変わらない」とし、“育ボスセミナー”と称して、男性が家事や育児に参画する意識を植え付けさせるためにセミナーなども開催しているという。

 社内でのモビリティの強化では、2012年に6000台のiPadを貸与。マニュアルの電子化がベースだが、いつでもどこでもどの端末でも仕事ができるという環境をつくり、同僚同士が交流できるコミュニケーションの機会も活性化させたという。

 2013年には主にメール用途でGoogle Appsを導入するなどのIT施策を取り、特に海外の社員から歓迎されたことが明かされた。しかし、「ツールは導入して終わりではない。しっかり使い倒すことが大事。使い方を継続的に進化させることが必要」とも繰り返す。

 ワークスタイルの変革にIT化の施策を導入したことで、以前は時間外労働時間などのデータをもとに評価していた人事制度を、KPIを設定してトラッキングするなど、労働状況の実態をより可視化できるようになったという。そして、そのデータを毎月部署ごとに配り、振り返りに活用して改善策の検討へつなげているとしている。

 実際、これにより、業務プロセス改革室の会議時間が他の部署の2倍以上長いことが判明し、以降、Googleカレンダーを駆使して会議室の内訳や目的を取得できるようにしてKPIを監視し、定例会議の効率化を図るなどをしたそうだ。林氏によると、今後は「移動やデスクワークの実態を可視化する取り組みを行っていきたい」としている。

 最後に、林氏は「ワークスタイル改革のゴールは、決して自分が楽になるためにやっているのではない。すべては顧客のためにやっているというのが考え方のベースライン。世界の皆さまに断トツのサービスを提供するというのが、われわれが確立したワークスタイルのその先にある最終的なゴールであり、最高の成果だ。労働環境改善の意見を全世界の拠点を回って聞いたが、海外の方が進んでいるのでこれからも取り入れていきたい。クロスファンクションに意見を戦わせて、新しい環境をつくっていきたい」と、ワークスタイル変革の目的を改めて明らかにし、引き続き注力していく方針と意欲を語った。

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