スマートフォンネイティブが見ている世界

職務質問や逮捕も--小学生までハマる「動画配信」が行き着く先 - (page 2)

「発言力を増すため」--いたずら動画投稿、逮捕

 「店の商品にいたずらしてみた」—2015年1月、19歳少年がスーパーで陳列された菓子につまようじを突き刺して入れ、立ち去る動画をYouTubeに投稿した。他にも、スーパーでパンの袋を破って戻したり、「万引きしてみた」とコンビニで飲料を万引きしたと見られる動画を投稿していた。動画内では、「余裕ですよ」「警察は無能です」などという発言も見られた。

 逮捕後、警視庁が防犯カメラを解析したところ、少年は万引きなどは一切していなかった。異物混入や万引きなどを偽装した動画を投稿していたことが分かり、少年は偽計業務妨害で逮捕されている。彼は、2011年にも新宿駅で通り魔殺人事件を犯行予告し、逮捕されていたという。

 少年は動機について、「少年法改正のために自分が有名になる必要があった。発言力を増すために、いたずら動画を投稿した」と語っている。もちろん話題にはなりこそしたが、このような行動で彼の発言力が増すことはないし、少年法改正にも影響はない。また、彼の個人情報についてはネット上にあふれかえった状態となっている。

 なお、殺人予告や犯行予告は、投稿した時点で脅迫罪、威力業務妨害罪、偽計業務妨害罪、軽犯罪法違反のどれかにあたる。実際に危害を与えるつもりはなくても、必ず罰せられることになるので注意が必要だ。

ネット上の声は責任を取ってくれない

 動画配信・共有サービスは楽しく、個人が手軽に世界に向けて発信できる素晴らしいサービスであり、このようなサービスが悪いわけではない。ただし、利用の仕方を間違えると、しっぺ返しを食らうことがある。

 確かに、過激なことを配信すると多くの反応が集まる。面白がったり称賛したり、時には支援してくれても、その先に起きることについては動画を配信・投稿する本人にある。ネット上の声は人生の責任は取ってくれないのだ。保護者は、10代の子ども達にネットで行動することで起きる責任や影響について正しく伝えていくべきではないだろうか。

 動画配信・投稿を自己表現の一つとして利用するのはありだが、注目を集めるために犯罪に手を染めたり、他人に迷惑をかける行為をしてはならない。自分で責任を取れる範囲で楽しんでもらいたいと思う。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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