マーケティング自動化(後編)--MAには1を10にする力が潜在する - (page 5)

尾花 淳(2BC) 吉澤亨史 山田竜司 (編集部)2015年06月05日 07時00分

MAは日本に根付くのか

尾花氏 日本人は細かい修正は得意だけど大きいビジョンを描くのは苦手なのかなと感じます。今日の話の中では、大きなビジョンがあって、そこに対してスモールスタートしていきながら、少しづつ改善をかさねていけばいいという、改善のところ。

 小さいところを細かくチューニングしていくのは、生産管理の中でも歩留まりをコンマ単位で挙げていくようなことができる国民性を持っている日本です。目指していく方向感やビジョンがバシッと決まれば、地道に確実にやっていく。このビジョンや目標をいかにして、どういう風に各社が持つのかがMA浸透のポイントなのかなという、みなさんのお話を聞いていて強く思いました。

中村氏 とはいえ、マーケティングでデータをちゃんと見ていこうというのは、現実的にはまだ始まったばかりとも感じます。KPIをきちんと設定できていれば、良くするためにどうするのか、自己質問したりみんなで議論したりできると思います。MAが根付いていくかという質問だったら、徐々に進んでいくのではないでしょうか。戻るような話ではないと思います。

東氏 米国でもマーケティングがなかなかできていないというのが実態としてあります。顧客中心というストレートな導線、部署もアプリもデータも超えてとらえようということをプロジェクト化できるかということ。これがこれから絶対に求められると思います。根付くかというか、根付かざるを得ないと思います。

笹氏 MAを提供している企業の規模が大きく、根付いていくんだとは思います。MAをアウトソースで手伝うということでは、セールスフォースでは「ET@」という常駐型のサービスを欧米で展開しています。作業をある程度代行し、より頭を使う顧客は情報の分析と、いわゆるPDCAの部分に時間を割くというものもあります。そういったサービスがどんどん出てくると思います。

 企業の中でビジョンに合わせて顧客の動きというか、このタイミングでどういう風に顧客と接点を持って育てていくか。全体図を考える人材をどのように増やしていけるかというのが課題だと感じます。従来はやはり代理店があって仕掛けを作っています。

岡本氏 根付くか根付かないかという議論では、ベンダー側とユーザー側の視点があると思います。まずユーザー側からすれば、これまで日本のマーケティングは肌感覚という表現がよく使われてきました。自分の経験や勘のキャンペーンが通用しなくなって、数字、データに基づいて合理的なマーケティングをするというのが、経営者からと顧客からの圧力で求められていくと思っています。

 その中で、合理的なデータと数字に基づいたマーケティングができるというMAは、きっと導入が広がっていくと思います。一方で、ベンダーとして、現場で泥臭く手伝うことが大事だと思います。現場で一緒にやっていくというスタンスを見せて実行するというのが、根付かせるために必要なアクションかなと思いますね。


マルケト代表取締役 社長 福田康隆氏

福田氏 私はもともとオラクルでERP、その後セールスフォースでCRMを担当し、2014年の6月からマルケトの日本立ち上げを担っています。ERPもその概念が現れた1996年ごろは「カスタマイズできない」「日本の商慣習に根付かない」と言われ、CRMも同じく2005年ごろは「日本に合わない」と言われながら、ともに成長していったのを見ています。このことから、もちろんMAは日本に根付くと思うので、どれだけ早くそれが実現できるかということになります。

 私は事例が重要と考えています。マーケティング向けのサービスがありながら成功事例がそれほど見えないのは、「マーケティングはノウハウだから出したくない」というのもあると感じます。

 サーバの台数削減だったら胸を張って言う最高情報責任者(CIO)もいますが、マーケティングはオープンにし辛い。そこがほかの製品やサービスと違うところです。それでも2014年12月に実施したユーザー会では、細かいノウハウを共有する空気があり、コミュニティを大きくしていきたいと感じました。

尾花氏 草の根的な活動がカギかもしれないということですね。結論としては、MAは日本に「根付きます」――というより、根付かざるを得ないでしょうし、それをいかに支援できているか、根付いた上で、本当の意味での成功、その進化を享受できている企業はその中でどのくらいか、その割合が大事だと思います。

 MAが1を1.1倍というのではなく、1を10倍にするくらいのポテンシャルを秘めているというのは、今日の話の中で口には出していない大前提であったと思います。今後MAのマーケットが大きくなり、日本の企業の成功に寄与するという結論で、終了したいと思います。


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