どの層がねらい目か見極めよ--「価値観」に見るアジアの消費者 - (page 2)

呉恵文(D2C)2015年03月31日 09時00分

ASEAN諸国ではとりわけ首都をターゲットせよ!

 また、都市部とそれ以外の地域では、あまりに生活のレベルが違うのもASEAN諸国の特徴だ。インドネシアにしてもジャカルタだけを取れば可処分所得は1万ドルくらいあるのだが、全体で見ると、その3分の1にも満たない。それだけの格差がある。

 ベトナムではホーチミンとそれ以外の地域でも、やはり3倍ほどの違いがある。だから、マーケティングに際しては、国全体の情報ではなく、都市、多くの場合は首都の情報をつかみ、ターゲティングしていかないと歩留りが非常に悪くなる。

 横道にそれるが、一つおもしろい話を紹介しよう。インドネシアには、電気も水道もガスも通っていない地域が少なくない。ところが、そうした場所でも若者はスマートフォンを所有している。電波が届いているのだが、電気がない。そこでどうするか。町までやってきてチャージする。加えて今では、日本製の発電鍋が流行している。お湯を沸すことで電気が生じるという鍋だ。

日本とのセンスの差も考慮しないといけない

 最後に、もう一つ、注意すべき点を紹介しておこう。

 それは特に、クリエイティビティに関するセンスの違いだ。味の素など早い時期からASEANに進出していた企業では、現地に本部を置き、少なくとも一人、日本からマーケティングを取り仕切る人間を駐在させている。

 そこをローカルの代理店に任せきってしまうと、大変なことになる。同じパッケージのはずが、色合いが違ったりする。またローカルの代理店はキックバックを要求する場合も多いので使いにくいという話も聞く。ただ、たとえば日本の代理店であっても、現地事務所はローカルの人間に任せているというケースが多い。するとどうなるか。

 たとえば雲一つ描くにしても、日本と現地ではイメージが違う。背景色も日本は白地を好む傾向があるが、向こうで白地はあり得ない。目立たないからだ。よく見る背景色はショッキングピンクなのだ。

 日本のアニメが非常に流行っているので、それを真似されることも多い。東京タワーの隣になぜかおにぎりやUFO、お寿司が浮いていたりする。

 そうしたことが起こらないように、現地で仕切る必要があるのだが、かと言って、あまりに現地を無視して日本テイスト、グローバル基準を押し通すと、今度は市場に埋もれてしまって、現地の人たちの関心を呼べないということもしばしばだ。だから、その辺りのさじ加減をすることが必要とされる。そのためには現地駐在がどうしても必要になると言えるだろう。

 それでは次回からは、市場として今後が楽しみないくつかの国を紹介していこうと思う。

(D2C 国際事業室 台湾統轄マネジャー兼台湾支店支店長 呉 恵文)

モバイルマーケティングの総合オピニオンサイト「D2Cスマイル

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]