アジア現地駐在員マーケティングレポート

オンラインテレビ「HKTV」から見る、香港テレビ業界の今後 - (page 2)

白瀧優子(アウン香港マーケティング)2015年01月21日 08時00分

若年層を始めとする社会ニーズに沿った戦略

 HKTVの登場は政治的な側面のみならず、市場のニッチをついた戦略も伴っています。

 TVBが家でテレビを見る家族や主婦たち向けの番組を提供し続けるのに対し、王氏は「我々のターゲットは、自分のスケジュールをコントロールしたい忙しい人々。HKTVの番組はストリーミングされるだけでなく、オンデマンドでいつでもアクセスでき、サーバは40万人が同時に再生できるのです」とSCMPへのインタビューで語っており、家にいることの少ない学生やビジネスマンを想定していることが伺えます。

 実際に筆者の周りの20~30代の反応を見ても、「テレビはお年寄りが家で見るものであって、番組はどれもつまらない。HKTVは気になるので、通勤中の地下鉄内で携帯電話から番組を見ることもある」というのが共通点です。

今後の香港テレビ業界に要注目

 心待ちにされたローンチの日には、HKTVアプリが100万ダウンロード(33万がスマートTVから、67万がモバイルから)を即座に記録し、当日放映を開始した番組は25万再生を記録しました。

 HKTVで放映されている番組は、“The Election(選戰)”と題された2022年の首長選挙を描くものから、“The Menu(導火新聞線)”という報道の自由をテーマにしたものなど、挑戦的で既存の番組とは大きく異なる立場と制作アプローチを取っています。それぞれのドラマは制作に100万ドルをかけており、既に2015年放映予定分の22作品の収録が完了しているということです。

 若い世代のトレンドを掴み、今後の経営と資金源を見据えるHKTVにとって重要なのは、これが長期的に広告のトレンドにも影響し、企業がより若い世代に訴求するためにオンラインTVへ予算をシフトするかどうかでしょう。

 世界最速レベルのインターネット環境と、世界最高の携帯電話普及率を誇る香港のポテンシャルは大いにあるものの、政治的なかけひきや、そもそもテレビ局としてのライセンスがないという不利益は変わりません。

 なお、すでに何社かの広告主があると伝えられているものの、もう1つの収入源としてオンラインモールがローンチされています。テレビ業界の枠を超えて香港を大いに騒がせたHKTVと、香港テレビ業界の今後に要注目です。

【現地の小ネタ】香港ポップスを聴いてみよう!

 香港の映画はご覧になったことがあっても、香港の音楽を聴いたことのある方は少ないのではないでしょうか? ジャッキー・チェン以外の有名人って?

 香港は広東語という中国語の独特の方言が特徴とされており、広東語の歌やドラマが一つの市場をなしています。標準の中国語とは全く異なる言葉で、非常に口語的で罵るような表現も多いです。しかし、伝統的な繁体字を使って表記されており、発音も四声のみならず九声あり、聞く分には柔らかくて私は好きです。

 さて、香港では誰もが知っているポップスのアーティストを2人ご紹介したいと思います。

 一人はEason Chan(陳奕迅)。中国語の歌は情愛と失恋の歌が大半なのですが、彼の歌は人生のさまざまな側面を切り出したものも多く、メロディも覚えやすくて個人的にもおすすめです。最近ではMAMA(Mnet Asian Music Awards)のライブイベントで「浮誇」のパフォーマンスをした動画が、多くの香港人にシェアされていました。

 もう一人はJoey Yung(容祖兒)。こちらは女性シンガーの大スターで、ビクトリアハーバーで行われた2015年の新年を迎えるカウントダウンイベントに出演し、話題になっていました。

 ぜひ、お時間のあるときに聴いてみてください。

白瀧優子(しらたき ゆうこ)

アウン香港マーケティング

大阪大学法学部卒。大学在学中、ロシアでの海外インターンやカナダ留学、中米バックパック旅行などを経て海外に関わる仕事を志す。

卒業後、国内IT企業で苦手意識のあった営業をあえて経験し、IT業界と日本企業の仕組みを学ぶもやはり違うと判断し、結婚を機に退職して香港へ。

ITと営業の知識、日本人のバックグラウンドを活かしつつ、現地のマーケティングや顧客開拓のできるAUN香港マーケティングに入社、日系・ローカル双方の営業および顧客対応、自社のプロモーションや現地スタッフの採用育成等に幅広く従事。

NY発の教育機関General Assemblyによる3カ月のDigital Marketing Courseを修了し、検索エンジンマーケティングやソーシャルメディアはもちろん、ブランディングの基礎やデータ分析などを学ぶ。最新のノウハウを日々勉強中。


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