全社員の興味・関心を勝ち取れ--Citrixがモバイルとデザインに投資する理由 - (page 2)

5年前にCEOが決めたデザイン投資とその活動

 Citrixがデザインに対する投資に舵を切ったのは、5年前に遡る。CEOのマーク・テンプルトン氏は、人々のニーズとして、誰もがクラウドとモバイルを使いこなすことが、同社のビジョンである仕事とプライベートの両立への道筋である、と判断したことがきっかけとなった。

 そこで、エンタープライズとデザインのキャリアを歩んできたキャサリン・カレッジ氏がCitrixに参画した。同氏の担当は「カスタマーエクスペリエンス」となっているが、その理由はどこにあるのか。

「我々が取り組んでいるデザインは、造型や色、1ピクセル単位のデザインを示しているだけではありません。デザインの本質は、顧客が何を求めているかを知り、それに応えることです。そのため、カスタマーエクスペリエンスが部門名になっています。

 同部門を立ち上げ、5年間で250名にまで成長させました。また同時に、社内でのデザイン思考についての教育も行っており、既に半数近くの従業員が教育を受けています。デザイン思考の普及は、意志決定や活動を顧客中心にすることであり、プロダクトとして成果が現れてきています」(カレッジ氏)

生み出されるプロダクトと、社内の変化と根付いた文化

 Citrixは、同社の企業向けモバイル管理ソリューション「XenMobile」で「WorxApps」というモバイルアプリ群を提供している。アプリ開発コミュニティを形成しながらその数を増やしているが、自社内で作っているWorxAppsは、カスタマーエクスペリエンス部門で練りに練られたユーザビリティを発揮する。

 例えばWorx Mailは競合も多いメールクライアントだが、メールクライアントとコンタクト、カレンダーを1つのアプリに統合して差別化している。

 例えば、ミーティングを設定するときには、コンタクトの中から人を選んでミーティングにアサインし、それがメールで送信される。一連の動作は、メールとコンタクトとスケジュールの連携が必須だ。そのため、この3つの機能が1箇所で使いやすくまとめられている点は非常に合理的と言える。

 メールアプリでは、Dropboxに買収されたMailboxが採用したスワイプでのメール処理をAppleがiPhoneの標準メールアプリに取り入れるなど、一定のトレンド感がある。その中でWorx Mailは、メールを1通ずつじっくり読みやすくするモードを用意したり、添付ファイルをXenMobileのファイル共有と連携させるなど、より実用的に処理することを優先している点で、コンシューマー向けアプリのトレンドに負けない便利さを提供しているのだ。

 また、スマートフォンでのメモアプリも人気の領域だ。Evernoteは進化し続けるメモアプリとして注目すべきだが、社内のポリシーで利用できないこともある。そこでWorx Notesと呼ばれるメモアプリをXenMobile向けに用意し、カメラや音声などスマートフォンらしいメモの取り方を実現した。

 これらのWorxアプリには、左下に小さなタブがあり、グローバルメニューにアクセスできる、という共通の使い勝手を提供している。アプリをまたいでも、使い方に迷うことがないようにする工夫もまた、ユーザー体験を重視した結果だろう。

 このように、仕事でよく使われる機能を、Worxブランドらしいユーザー体験で迅速にアプリ化する力が備わった。モバイルとデザインによって、エンタープライズビジネスを展開するCitrixの社内が変化した良い例といえるだろう。

 キャサリン・カレッジ氏は、新しく入ってくる社員ほど、デザイン思考を素早く取り入れる素質があると指摘する。学生時代からスマートフォンやタブレットに触れ、ソーシャルネットワークを活用している人が多いことも関係しているが、より直感的にコンピューティングをこなしてきたことも理由として挙げられるだろう。

 例えば、普段スマートフォンを使っている感覚で、業務のフローやアプリケーションを考えられるかどうか。一度皆さんの社内に置き換えて考えてみると、モバイル時代のアプローチのヒントを見つけることができるだろう。


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