PS Vita「俺の屍を越えてゆけ2」桝田省治氏に聞く“ゲームの面白さと制作の難しさ” - (page 2)

桝田氏が考える“ゲームの面白さ”

--前作でもそうでしたが、エンディングまでの所要時間や難易度が異なるモードを用意していることに、プレイヤーに対しての配慮が感じられます。アクション性の強いものではなく、こつこつと遊べば最後までたどり着くタイプのゲームで、幅を持たせているのは珍しいと思います。

 遊び方のスタイルが人それぞれですし、いろんな人にちゃんと遊んでほしいからです。忙しいといっても中学生と大人とで違いますし、自由時間は通勤通学の電車の中しかないという方も少なくないでしょうから。

 ただ、かかる時間が短いとうたっている“あっさりモード”が、決して簡単というわけではないです。前作よりも迷宮のサイズが大きいので、迷宮内の移動距離と、滞在できる時間との兼ね合いを見誤ると、あっさりモードでもかなり難しいと感じるかもしれません。長時間を想定した“どっぷりモード”でも、難しいから時間がかかるという調整はしてないので、ゆっくり遊ぶ分には難しく感じないはずです。むしろ、前作を遊んだりゲームに慣れたうまい人があっさりモードにすると、早く進みすぎてパラメータが足らなくなって後半がきつくなるかなと。このあたりは途中でもモードを変えられるようにしているので、遊びながら気持ちのいいモードを探してもらえればと。

 こと難易度ということでお話すると、ゲームをクリアするまでという観点で見れば、前作よりも本作のほうが易しいです。初めから職業を選べるなど、スタート時の条件が異なっています。自由度とランダムの要素が増えているためですね。ギリギリのチューニングにしてしまうと選び方によってはものすごく難しくなってしまう場合があるので、僕がテストプレイするときには、ゲームがクリアできないのではと思われるような職業の選択や街への投資の仕方をしてみて、それでもちゃんとクリアできるかどうかをテストしています。そこに難度をあわせているので、普通に遊ぶ分には易しく感じられるかと。

 ただ、「俺屍2」のゲームデザインの設計ではゲームをクリア、というよりもラスボスを倒したというのは、折り返し地点をちょっと越えたあたりのことです。そのあともシナリオは続きますし、制約があったシステムが全て開放されます。たとえば夜鳥子しかできなかったことが、ほかのキャラクターでもできるようになるとか。一族側の全てのコマンドが解放され、敵側の行動制限もなくなり、そこから先、もう何十時間かは遊べるように作ってます。自分の一族はここにこだわる、ここを極めるなど、目標を自ら決めてもらって、さらに遊んでもらえたらうれしいですね。

--桝田さんが考えるゲームの面白さ、その定義みたいなものはあるでしょうか。

 “いかに迷わせるか”ということかな。「俺屍」で例えるなら、本当はこの神様と交神したいけど奉納点が足りない。しかし、スケジュールとして早めに交神しないと、数カ月後は一族が3人か2人しかいない状態になってきつくなってしまう。そこで、そこそこの神様と今交神するか、ちょっと我慢して理想の神様との交神を狙うかといった迷いが生じます。ほかにも迷宮で先に進むか戻るか。先に進んで見たことのない鬼がいた際、新しいアイテムを持っていたり奉納点や戦勝点が高いことが予想できるが、そこで戦うかどうかの判断とかね。

 それぞれに理屈や理由があって、いい感じにリターンとリスクがある。長期的なことを考えての選択がいくつも重なっている状態というのは楽しいと感じられるし、それが面白さかなと。逆に、どれを選んでもマイナスはつまらない。どっちもダメだけど、どちらかがよりマシかという選択はつらいだけなので、どっちも明解なメリットがあるという状態を作り出すかということでしょうか。

 あとはゲームを遊んだことが、何らかの形で残せることもそうかと。古くは点数、ハイスコアだと思うけど、「俺屍2」で言うなら、一族の顔を見れば親なり祖父母にこの神様と交わったであろう形跡が残っているとか。やったことの跡が残っていて、それが他の人に見えるというのも、ひとつ段階が違うと思うけど、ゲームの面白さのひとつかなと。遠征でほかのプレイヤーの街に行ってみたら、自分の街と全然違う色の屋根がたくさん並んでいて、温泉街を作っていた──という発見も楽しいだろうし。

  • 多種多様な神様が登場。人間ではないので、変わった容姿を持つ神様もいる

  • 交神の儀によって子孫を残す

  • どこか父母の面影を残す子孫が登場する

--ゲームの中だけではなく、他の人がプレイしている様子や遊び方の違いの発見という外の世界も含めての面白さですよね。

 その違いは、ネットに繋がるようになってから見えやすくなったと思います。ただ、これまではブログに写真をアップしたり実況プレイ動画を見たりして、他のプレイヤーがやってきた過去を確認するものでした。今はほぼリアルタイムでプレイの動向を確認できるような状況になってます。このあたり「俺屍2」では面白く感じられるのではないでしょうか。攻撃力のことしか考えてないとか、交神する神様を顔でしか選んでないプレイヤーもいるだろうし、かわいい容姿をした神様とばかり交わっているプレイヤーというのもわかる(笑)。ゲーム攻略を考えると横道にそれていても、本人はその遊び方が楽しいからやってるんだろうし、見ているほうもそのほうが楽しいでしょう。

 あとは他人との競争というのもありますね。前作では討伐隊による選考試合というものがあったのですが、今回はお祭りが行われている月に奉納試合というのがあります。そこで自分の街に訪れた他国の討伐隊がそのままエントリーされるようになっています。知り合いの討伐隊の様子もわかりますし、もし負けても知り合いの討伐隊だと妙に楽しく思えるかなと。

--ゲームを作っている中で、ゲームの面白さだけではなく広めやすくする工夫というのを考えられたりしていますか。

  • ゲーム中のスクリーンショットを撮影できる機能があり、自動で撮影する場面のカスタマイズも可能。SNSに投稿することができる

 「俺屍2」で言えば、SNSとの連携です。スクリーンショットもそうですが、ゲームが面白ければ、あるいはその趣向が面白ければ、遠征の状態や状況をTwitterに流すといったことを皆が自然にやるはずです。それを多くの人がやりはじめたら、見ている人はさらに増えます。そのように口コミの効果が広がることを期待しています。

 こういう遊び方をすると楽しいというプレゼンテーション、あるいは人に見せた時、こういう情報が詰まっていたら伝わりやすい画面になるといったあたりは、設計の段階で意識します。こと「俺屍2」でいうと、たくさんの人が遊べば遊ぶほど面白くなるゲームですから。俺屍のファンという有名人もいらっしゃるみたいですので、Twitter上で投稿されるようになったら、面白い状況が起きるかと。

  • 一族キャラクターや特注装備のデータをQRコード化。PS Vitaのカメラで読み込むことで、他のプレイヤーにデータが移行される

 ほかにも一族のキャラクターなどをQRコードにできます。これをTwitterやブログに載せるだけじゃなくて、たとえば同人誌などの紙媒体にも貼り付けられます。いろいろな楽しみ方は提案するし、やりやすいようには作りますが、ユーザーの使い方すべてを予想することはできません。思いもよらない楽しみ方がユーザーから出てくるかもしれないし、いろんなことをやってみてほしいですね。

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