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著作物って何?--文章・映像・音楽・写真…まずイメージをつかもう - (page 2)

福井健策(弁護士・日本大学芸術学部 客員教授)2014年05月09日 11時00分
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 「4.美術」は、広くビジュアルな作品はすべて含みます。絵画や彫刻のような狭い意味での「美術品」だけには限りません。イラストも美術の著作物ですし、CGもそうです。珍しいところでは漫画は、1.の言語と4.の美術をあわせて一体化させた作品だ、などといいます。

 5.は「建築」です。これも建築芸術と言えるような創作性の高い建物は、それ自体が著作物です。何も有名なら良いというものではありませんが、安藤忠雄の「光の教会」や黒川紀章の「国立新美術館」などはその例でしょう。逆に、建売住宅は一般には建築の著作物ではない、と言います。あれは通常、機能性を追求して作るものであって、創作的な表現ではないだろう、ということですね。

  • 安藤忠雄「光の教会」

    (撮影Bergmann)

  • 黒川紀章「国立新美術館」

    (撮影wiiii)

 次ですが、「6.図形」も著作物です。これにはふたつの例があって、まず設計図です。こちらはわかりますね。もうひとつの例は地図です。地図と聞くと、「いや、あれは事実をありのままに描くものであって創作じゃないんじゃない?」と思う方もいるでしょう。ところが、事実をありのままに写すだけでは地図としてあまり役に立たないのですね。その証拠に、航空写真をパチリと撮って「はい」と渡しても、たぶん目的地には行きつけません。なぜなら、画面がゴチャゴチャし過ぎているからです。我々の住む現実の世界は複雑過ぎるので、それをデフォルメしたり強調したり省略したりして、やっと地図として役に立つ。その過程でビジュアルな工夫をすれば、そのビジュアルな工夫の部分が著作物になることもあるよ、ということですね。ですから地図なら全部著作物になるという意味ではありません。

 「7.映画」ですが、これは広く動画を含みます。劇場用映画には限りませんから、テレビドラマやバラエティ番組なども多くは含まれます。長編に限りませんから、ショートフィルムも映画の著作物です。ですから、私たちの身近にある最も短い映画の著作物といえば、テレビCMですね。そして実写に限りませんからアニメも含みます。

  • NASA人工衛星による、昨秋日本を襲った「スーパー台風」27号の写真

 8.の「写真」。これも創作性のあるような写真は全部含みます。よく「スピード写真は著作物じゃないよ」といいます。というのも、著作権法には従来、「機械に創作はできない」というある種の絶対命題が存在してきたのですね。ですから機械が自動的に作成したようなものは含まれないと考えられています。人工衛星が撮った写真も同様でしょう。

 最後に「9.プログラム」。これはコンピュータプログラムです。テレビゲームは、それ自体がプログラムの著作物ですね。加えて、最近のテレビゲームはとっても動画的です。ですから、あの画面の部分に注目すると映画の著作物でもあるでしょう。

 いかがでしょうか。この9つはあくまで例ですから、ぴったりどれかにはまるものがなくても、原則の定義どおり「創作的な表現」なら著作物です。でも、上の例はとても「使いで」があります。実社会の活動の99%までは、この例を知っていれば著作物かどうかの判断が付くからです。

 たとえば、短編小説があるとしましょう。我々は短編小説と聞けば、中身を見て創作性の程度を判断などしなくても、「きっと著作物だな」と想像します。そして、恐らくそれで間違えていません。なぜか。一編の短編小説をまったく創作性を込めずに執筆する方が至難の業だからです。必ずどこかに多少の独自性は出ます。逆にいえばその程度の、いわば書き手の個性の断片が現れていれば十分に「創作的」であって、著作物になるのですね。同じように、音楽CDと聞けば、中身を実際に聴いてみなくても「きっとその歌詞やメロディは著作物だな」と想像がつきますし、誰かが動画を作ったと聞けば、かなりの確率で映画の著作物なのです。

 にもかかわらず、実際にさまざまな活動をしていてハタと悩む瞬間、いわば残りの1%はこの例では判断できません。そしてそういう時に私たちは、「この素材は使っていいのかな」と悩みながら、実は「創作的表現とは何か」という意外と哲学的な問いに直面しているのですね。という訳で、次回はもう少し、「いったいどんな情報が著作物なのか」を考えてみましょう。

(次回に続く)

 レビューテスト(1): 著作物とはどんな情報でしょうか。できるだけ簡潔に答えましょう。答えは本文の中に!

福井 健策(ふくい けんさく)

弁護士(日本・ニューヨーク州)/日本大学芸術学部 客員教授

1991年 東京大学法学部卒。1993年 弁護士登録。米国コロンビア大学法学修士課程修了(セゾン文化財団スカラシップ)など経て、現在、骨董通り法律事務所 代表パートナー。

著書に「著作権とは何か」「著作権の世紀」(共に集英社新書)、「エンタテインメントと著作権」全4巻(編者、CRIC)、「契約の教科書」(文春新書)、「『ネットの自由』vs. 著作権」(光文社新書)ほか。

専門は著作権法・芸術文化法。クライアントには各ジャンルのクリエイター、出版社、プロダクション、音楽レーベル、劇団など多数。

国会図書館審議会・文化庁ほか委員、「本の未来基金」ほか理事、think C世話人、東京芸術大学兼任講師などを務める。Twitter: @fukuikensaku

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