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「家計簿に興味がない、挫折した人のために作りたかった」--マネーツリー創業者に聞く

坂本純子 (編集部)2014年02月24日 09時30分
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 新生活シーズンを前に、今年は支出管理をしっかりしたい──。そう考えている人もいるかもしれない。App Storeの「ファイナンス」カテゴリを見ると、無料・有料アプリともに家計簿を中心としたマネー管理アプリが目立つ。

 手動で入力するものだけでなく、最近ではレシートを撮影するだけで記録できるもの、銀行口座などと連携できるものなど、さまざまなマネー管理アプリがラインアップしている。

マネーツリーのファウンダー 代表取締役のポールチャップマン氏
マネーツリーのファウンダー 代表取締役のポールチャップマン氏

 「今まで一度も家計簿をつけたことがない、続けられなかった人にこそ使ってほしい」──そう自信を見せるのは、「Moneytree-賢いお金のアシスタント」を手がけるマネーツリーのファウンダーで代表取締役のポールチャップマン氏だ。

 Moneytreeは、銀行やクレジットカード、モバイルSuicaなどの入出金履歴や利用履歴、口座残高などのオンライン明細をスマートフォンから確認できる機能を持つ。仕組みとしては、各金融機関が運営するインターネットサービス(明細照会など)を、このMoneytreeを経由してアクセスする「データアグリゲーションサービス」だ。

 2013年10月には、個人投資家を割当先とする総額1億5000万円の第三者割当増資の実施を発表。2013年4月のリリースから150日間で20万ダウンロードを突破するなど順調に伸ばしてきている。

 マネーツリーは、2012年に設立したスタートアップ企業だ。これまでの振り返りや今後の展開について話を聞いた。

いま、どの程度お金を使っているか、残高があるかなどが一目でわかる「Moneytree」
いま、どの程度お金を使っているか、残高があるかなどが一目でわかる「Moneytree」

――アップルが優れた音楽や映画、アプリなどを選定した「BEST OF 2013」で、「ベストiPhone App」を受賞しました。選ばれた理由は何だと考えていますか?

 3つあって、まずはデザインです。iOS 7に特化していますし、iPhone向けの高いクオリティのアプリだと思っています。1つのサインアップのプロセスだけに4カ月かけたこともありました。2つ目はセキュリティ。iOSのセキュアなプラットフォームをベースにして、プライバシー認証の「TRUSTeマーク」を取得し、信頼できるアプリを作っています。3つ目はイノベーションです。App Storeのファイナンスカテゴリは、トップ40か50が家計簿です。

 やろうとしているのは、新しいカテゴリを作るということ。たくさんの家計簿アプリがある中で、「アシスタント」というまったく違うアプローチです。アップルがそれを理解してくれるのは嬉しいことです。

 新しいカテゴリを提案するとき、発明者は「最初は必ずこうじゃないといけない」と考えて作りますが、リリースしてすぐは「(方向性は)誤っていたかな」と悩んだりすることもあります。でも、初期の頃にApp Storeでフィーチャーされたことが約7カ月あり、「アップルが分かってくれている!」と私たちは思いました。それで自信を持つようになったのです。

マネーツリー流アプリの作り方

――具体的にどのようなプロセスでデザインをしているのでしょうか?

端末を横に傾けると、グラフィカルに表示される
端末を横に傾けると、グラフィカルに表示される

 まず、色がついていない形だけのモックアップをIllustratorで作ります。そうしてワイヤーフレームを作ったらPhotoshopで色を付けて、動画を作ります。動きを目で見ないと分からないからです。

 iOS 7が発表されたときにWWDCのキーノートに参加していたのですが、ジョナサン・アイブ氏が、新しいデザインとして「控えめ」「奥行き」「明瞭」という理念を打ち出しました。

 それに従ってiOS 7対応バージョンを作ったので、iOS 6の時よりも優れたアプリが作れたと思います。でも、WWDCが行われた当時、Moneytreeをリリースした直後でしたから、ショックでした。実は、iOS 7も最初、「本当に使いやすいの?」と思いました(笑)。ユーザーエクスペリエンスは、見るだけでは分かりません。絵を見るのではなく、試してみないとわからないのです。

マネーツリーのオフィス
マネーツリーのオフィス

 リソースを一番消費するのは、開発です。洗練されたアプリを作るには、ウェブよりも倍ぐらいかかる。スイス製の腕時計は、小さい歯車がたくさん入っています。スマートフォンアプリは歯車と似ているんです。小さい歯車をたくさん入れないといけないんだけれど、うまく合わせられなければ動かない。「これでできる!」と思いきやできないことも多い。それをデザインの段階で課題や障壁を解決できれば、開発しやすくなります。

 基本的に世にある家計簿アプリでは、ユーザーがダウンロードしたときに予測されるアクションはだいたい決まっていて、支出の金額を入れます。“賢いお金のアシスタント”として、全てのユーザーエクスペリエンスを一からデザインし、チーム全体として普通では考えられないほどのリソースとエネルギーを投与しています。ほかの会社との大きな違いだと思っています。

――比べられるものとしては家計簿アプリが多いと思いますが、違いはどこにあるのでしょうか。

 入金状況やカードの支払日などは通知を見ると一目で分かる
 入金状況やカードの支払日などは通知を見ると一目で分かる

 Moneytreeは、家計簿に興味がない人、挫折したことのある人に向けたものです。家計簿アプリは、家計簿を付けたい人のために作られたもので、家計簿をつけたい人は少ないのではないか、また続けられる人は少ないのではないかと思っています。

 今まで、家計簿アプリ自体が認知されているのは、そもそもスマートフォンが生まれる前に家計簿があって、帳簿を付ける歴史がありました。それをもとにスマートフォン向けに作っています。われわれはスマホで家計簿を体現するとどうなるのかということをつねに考えています。

 例えばですが、Googleはひとつの辞書みたいなものですよね。でも、辞書をそのままスマートフォンに持ってくると辞書アプリになりますよね。でも、辞書をスマートフォンで具現化したらGoogleになる──そんな感じのことを、Moneytreeでやりたい。家計簿よりこちらのほうがスマートでしょう、ということを提案したいのです。ただ、そういうことは理解するのに時間がかかるのではないかと思いますが、日本でも米国でも、韓国でも欧州でもきっと理解が得られると思っています。

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