優秀なエンジニアを正しく評価し、育てる環境を--新経済サミットで起業家やRuby生みの親が提言 - (page 2)

 かつて大企業に務めていた森川氏と田中氏。「ものをつくるプロセスが変わっている。システムの一部に乗っかるのではなく、システムを作る人をつくるべき」(森川氏)が語る一方、「新しい古いという考えではなく、生み出す製品に最適化された組織構造を考えることが大事で、業態に応じて個々にカスタマイズすること」(田中氏)とし、柔軟さをもって対応することで、これまでのシステム迎合型ではない人材や組織構造を生み出すべきだとした。

 熊谷氏は、「日本からイノベーションを生み出すためには、優秀なエンジニアを集める必要がある。そのためには、海外からのエンジニアやクリエーターの採用を重視すべきだ」と語る。伊藤氏も、「みんなが思っている以上に日本は遅い」とし、「米国でさえ、必死になって優秀なエンジニアに対して営業をかけている。国をあげてアピールしないと日本は優秀な人材は集まらない」と強く主張。エンジニアを集めるためには多くの努力が必要であり、国や企業をその現状を認識すべきと語った。

 開発者でもあるまつもと氏は、「(普通の)エンジニアが1カ月で作ったものを優秀なエンジニアが一瞬で作り上げることもある。逆に、優秀なエンジニアが作ったものはどんなにエンジニアが集まっても作り上げることができなかったりする。数ではない」とし、優秀なエンジニアをどう活用するかが大事だと語る。「つまらない仕事をしている優秀なエンジニアが多すぎるし、給与の面でも日本は圧倒的に低い。それを言及せずに人材が足りない、と語るのはおかしい」と語気を強め、日本におけるエンジニアの社会的地位を認識することの重要性を指摘した。

クリエーターやエンジニアを育てる環境づくりをすべき

 イノベーションのデメリットについても、パネリストから言及がなされた。まつもと氏は「日本で破壊的イノベーションを起こすと言うが、イノベーションには痛みがともなう。その痛みに企業は耐えられるのか。イノベーションの怖さを甘く見ているのでは」と語り、イノベーションの意義を考えるべきと主張した。伊藤氏もそれに同意しながら、ドメスティックではなく、グローバリゼーションに特化した企業の成功事例をもっと作るべきとした。「役員の半分が外国人になる可能性もある。それは痛みをともなう辛い環境になるかもしれない。だがそうした現状を理解して、そこから成功する日本企業が出てくることが重要」(伊藤氏)

 政府に対して成長戦略の提案をまとめあげることが、今回のサミットの目的でもある。どのようにして、イノベーションを創発する環境を作り上げるか。

 森川氏は「仕組み以前に日本人のマインドの問題は大きい。技術やノウハウよりもマインドをどう変えるか大事。自由で、チャレンジがすばらしいとする教育であってほしい」と語った。田中氏も「今の若い人たちは成長とは何かを実感していない。成長やイノベーションがすばらしいという価値概念を伝えることから始めるべき」とし、実例や成長体験をもとに、イノベーション創発の文化を作る支援を実施すべきだと提言した。

 エンジニアの評価をもっとすべきと語るまつもと氏。「日本的組織の中で恵まれていない環境から解放し、きちんと評価できる仕組みになってほしい」と語った。伊藤氏も「クリエイティブな、変な人をもっと守り育てる文化になってほしい」とし、続けて熊谷氏が「クリエーターやエンジニアをもっと育てる社会」に構築することこそ、日本でイノベーションが生まれる土壌だと語り、セッションを終えた。


左からモデレーターで日本経済新聞社の関口和一氏、GMOインターネット代表取締役会長兼社長でグループ代表の熊谷正寿氏、Ruby開発者のまつもとゆきひろ氏、グリー代表取締役社長の田中良和氏、LINE代表取締役社長の森川亮氏、MIT Media Lab所長の伊東穣一氏

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