ソーシャルに限らず、テクノロジーというものは全体戦略の中できちんと歯車が噛み合うように設計されて初めて効果や成果につながります。テクノロジーありき、ツールありきのプロジェクトはそのスコープの狭さから結果を出すことができず、早晩行き詰まることになるでしょう。
また、ソーシャルテクノロジーは、企業が活用して利益を出すツールというより、本来はコミュニケーションのツールです。収益性だけに着目して戦略を考えるのはそもそもツールの特性とフィットしていない可能性があります。
そう考えた場合、短期利益の拡大よりも先に企業が抱える顧客コミュニケーション上の課題解決を直接的な目標に定めた方が現実的な場合も多いでしょう。もちろん、顧客コミュニケーションと企業利益が相互に影響するという前提のもとでのお話です。
上図にクロスファネル図の各プロセスで起こり得る顧客コミュニケーション上の課題を列挙しました。参考にしていただければ幸いです。
私は2007年にSNS環境をASP形式で提供するループスという会社に入り、2010年4月ごろからTwitter やFacebookについて情報発信を始め、ずっとソーシャルメディアに関わって来ました。2011年に企業のFacebook/Twitter公式アカウント立ち上げが盛んになると、色々なところでこういった運用頓挫の話が聞かれたものです。
実際、2011年夏に行われたgooリサーチとループスが共同で行ってるソーシャルメディアの活用実態調査でも「ソーシャルメディア活用上の課題」に対して「営業上の効果が見えない」「何が課題かわからない」という戸惑いの声が多く聞かれました。
さすがに近頃では先んじて取り組んでいた企業の実験もひと通り完了し、ハイプサイクルでいう「幻滅期」を経て現実的な運用が始まりつつあると感じます。
今回の例も、投下した人件費に見合う成果は出ているのかとか、無形資産に対する費用対効果はいかにとか、突っ込みどころはあると思いますが、ここで申し上げたいのは、「まずは機能することを目指しましょうよ」ということです。
成果が上がる、上がらない以前に、そもそも機能しない戦略になっていないか。どれだけ「いいね!」をもらおうが、「話題」になろうが、そもそも事業との歯車が噛み合っていないのであればコストでしかないわけです。
ソーシャルの場合、主なコストは「人件費」という、お金が出て行かないタイプのものですが、それにしたってお金がかかっていることに変わりはありません。そこに毎月何十万円とか、場合によっては何百万円もの人件費を投入しながら、毎月わずか数万円の広告費はどういうわけか出てこない。そんないびつなプロジェクトはたくさんあります (たいがい理由はあるのですが)。
もう少し、あとちょっとだけ俯瞰的な視野を取り入れることで、こうした矛盾に気が付き、解決することができればいいな、と思います。
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