間接侵害立法化の是非、時間をかけて議論すべき--第5回法制問題小委

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 著作権に関わる現行の法制度を議論する、文化庁の文化審議会の法制問題小委員会の2012年度第5回目の会合が11月16日に開催された。

 2012年度の本小委では、第三者が介在して間接的に著作権を侵害する“間接侵害”に対する差し止め請求権の立法措置、およびその際に間接侵害の対象となる定義と類型、違法コンテンツをアップロードしたサイトへのリンク集を集めた“リーチサイト”を差し止め請求の対象に含めるかを議論している。8月と9月に開催された前々回前回の会合では、権利者団体や消費者団体など11の関係団体の代表者を招いてヒアリングを実施。その結果を受け、今回の会合では差し止め請求権の立法化措置の議題を中心に、委員による意見交換がなされた。

 各団体へのヒアリングの結果、立法化の必要性を強く求めたのは、日本知的財産協会(知財協)と電子情報技術産業協会(JEITA)の2団体。間接侵害について判例や裁判例が乱立している現状を踏まえ、明確な判断基準が示されることによって解釈の統一化が図られ、製品やサービスを提供する事業者の予測可能性が高まるとメリットを強調した。

 一方、立法化措置について条件付きでの賛成を唱えたのは、日本書籍出版協会(書協)・日本雑誌協会(雑協)とインターネットユーザー協会(MiAU)の3団体。「ほう助行為が差し止め請求の対象となることを認め、直接侵害の領域を狭めない理論的担保がなされれば賛成」と述べた書協や雑協に対し、MiAUは「基本的には反対」とした上で「直接侵害の範囲を縮小、整理する」「実質的に私的複製にあたるような公正利用は著作権侵害としない」「間接侵害の要件を明確かつ具体的に規定する」の3点を満たせば賛成の余地があるし、異なる立場からの条件付き賛成意見を示した。

 これに対し、日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本映像ソフト協会(JVA)、コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)、日本放送協会(NHK)、日本民間放送連盟(民放連)の5団体は立法化には消極姿勢。間接侵害規定については、現行の著作権法の第112条第1項(著作者や著作隣接権者らがその権利を侵害する、または侵害するおそれがある者に対してその侵害の停止また予防を請求できる、というもの)の解釈の範囲として対処可能というのが共通した見解で、立法措置により過去の判例規範とそごが生じたり、法体系が複雑化することなどを懸念する声が多かった。

 こうしたヒアリング結果を踏まえ、今回の会合では立法化の必要性について委員の間でも積極派と慎重派に意見が分かれた。ヒアリング結果について、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授の村上雅博氏は「立法の必要性は乏しいと感じた。また、立法する場合も明確な規定を設けるのは簡単ではないと感じた」と率直な感想を漏らした。また、弁護士の松田政行氏も「差し止め請求は現行法の範囲内でも十分可能と思う。むしろ著作権法だけで間接侵害を規定すべきかという点に疑問がある。デジタルネットワーク環境下においては、たとえば児童ポルノや薬物販売、パブリシティー、肖像権、名誉棄損といった著作権法に留まらないあらゆる権利侵害があり得るなかで、差し止め請求権を著作権法の中だけで考えてもよいのか。権利侵害は司法判断に委ねるという範ちゅうがあってもやむを得ないのではないか」と立法化の必要性に懐疑的な意見が示された。

 一方、弁護士の山本隆司氏は「現状の裁判例においては差し止め請求は認められないというのが実際のところ。侵害に対する救済措置として損害賠償は実効性があるのかという問題。あとから損害賠償を問うと言っても相手方に十分な支払い能力がなければ回収はほとんど不可能。実効性という観点で立法措置は必要」と積極意見を述べた。

 明治大学特任教授で東京大学名誉教授、弁護士の中山信弘氏は「現在の間接侵害は“カラオケ法理”が拡大解釈されてきた状況にある。となれば、間接侵害は規定があってもいいのではないか。ただ、その場合もワーキングチーム(WT)がまとめた現在の3類型で十分かどうか。もう少し時間をかけて議論すべき」と意見。立教大学法学部教授の上野達弘氏は「立法化自体の賛否が出ているが、少なくともWTで取りまとめをした時点では立法化で意見は一致していた。これは7~8年WTで議論してきたなかで状況の変化があったということだろう。しかし、間接侵害主体に差し止め請求を認めるというのは意見が一致していると思う。クラウド時代において、規定が不明確なことで新しいサービスの提供に萎縮効果を招いているのは確か。ある程度不明確であることは仕方がないが、一般条項を設けることは現状よりもいいのではないか」と、引き続き検討していくべきと提言した。

 そのほかの委員からも「判例である程度予見可能性が高まっているが、新しいサービスが次々出てくる中で、これまでのように判例に基づき精査していくという流れのやり方よりは明文化したものを前提に改めるほうが効率的ではないか」(神奈川大学経営学部准教授・奥邨弘司氏)、「間接侵害の規定を設けることがただちに明確化にはならないと思うが、規定があることで権利制限の直接行為者がどういうものかをきちんと考えるようになる。どういう行為を差し止め対象にするかを議論を深めて明確化するという点で立法化措置をするということは好ましいのではないか」(大阪大学大学院高等司法研究科教授・茶園成樹氏)など、立法措置の必要性を支持しながらも、中身については整理、検討の余地があり、時間をかけて今後審議を進めていくという方向性へと議論が展開した。


会場の様子
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