Appleにとって、製造に250ドルかかるデバイスを299ドルで販売しても経済的な価値は見出せないはずだ。かといって、AppleがiOSの市場シェアを押し上げる必要性に迫られているとも考えづらい。このため筆者はKendrick氏の「Appleはほんの数カ月で1000万台のiBookを販売することになるだろう」という言葉には同意するものの、そういった売上のかなりの部分はフルサイズ版iPadの売上を犠牲にしてもたらされるはずだ。
そうなると実質的に、Appleはより多くの利益を見込める製品を犠牲にして、利益よりも市場シェアの拡大を選択したということになるだろう。
しかしそれでは意味がないはずだ。
もう1つの選択肢は、iPad 2(Appleはまだこの製品を販売している)をベースにして、より小さなiPadを製造するというものだ。これは、より安価なディスプレイと安価なバッテリ、安価なプロセッサ、安価なカメラを元に製造するということを意味している。3月の時点でiSuppliは、iPad 2の製造コストが245ドルになると推定していた。このためiPad 2をベースにしてiPad miniを製造すると考えた場合、20%の部品コスト削減で製造コストは約195ドルという妥当なところにまで押し下げられるだろう。
これにより、Appleが十分な利益幅を確保したとしても、299ドルという価格は十分実現可能性のあるものとなる。
この戦略はiPad miniにとってより有利なものとなるだろう。これは妥協を意味しているものの、より小さな画面を採用したデバイスにとって(つまりおそらくは異なった市場に向けた製品にとって)あまり大きな問題にはならないはずだ。新しいiPadを生み出すうえでiPad 2の内部に施された変更の多くは、新たな高解像度「Retina Display」パネルを搭載するためのものであった。このため、iPad miniをiPad 2からスケールダウンするかたちで製造できれば、駆動ハードウェアに要求されるスペックはずっと低くて済むはずだ。
また、前の世代のテクノロジをベースにしてiPad miniを製造すれば、新しいiPadの売上への影響を抑えられるようにもなるはずだ。今でも「iPhone 4S」と「iPhone 4」「iPhone 3GS」、あるいは新しいiPadとiPad 2という異なる選択肢があるように、低スペックのiPad miniがフルサイズのiPadと直接競合することはないだろう。
つまり、安価なiPad miniはスタンドアロンのデバイスとして捉えることができるというわけだ。これは高価なデバイスを置き換える安価な代替品というよりも、「iPod touch」とよく似た位置付けになるはずだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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