どのような構築・運用形態のシステムを最初にクラウド化していくか、という優先順位についての設問では、「自社センターに設置され、自社で運用するシステム」とする回答が31.4%で最多となり、「外部センターに設置されたシステム」を上回っている。また、外部センターに設定しているシステムの中でも、ハウジング(自社所有)のシステムから優先的にクラウド化する意向であるとの傾向が示された。このような結果の背景には「使い慣れており、自社の要件などを反映させられる、いわば手の内にあるシステムから着手したいとの要望が強いことと、"重い"システムをクラウド化により、効率化したいとの傾向」(舘野氏)があるという。クラウドを望む企業は「口も手も出したいと考えており、すべて事業者にお任せということにはおそらくならない」との見通しだ。
今後のクラウド化にあたり、いっそう重要度が高まるデータセンターに必要であると考える機能についての設問も設けられた。クラウドを積極的に活用したいと考える企業では「データセンター内での柔軟なリソース増強」が47.5%。「複数データセンター間での柔軟なリソース増強」が34.3%。「複数データセンター間でのデータ移行、バックアップ、バーチャルマシン移設」が41%となった。舘野氏は、これについて「複数のデータセンターを統合管理したいとの機運が強い。データセンター・サービスを選ぶ基準として、高い拡張性を備えていることが求められる傾向が強まるのではないか」と分析している。
この調査では、クラウドとの相関性が高いアウトソーシングについて問うた設問もある。「クラウドサービスを積極的に活用する」との回答者に対し、「アウトソーシング事業者に求めるクラウド戦略」について聞いている。その結果、クラウドへの対応力を重視するとした回答が多数を占めた。なかでも、「コンサルティング・サービス」「移行サービス」「プライベート・クラウド・サービス」が重視される傾向が強いことがわかった。
今回の調査期間の後、6月20日に、レンタルサーバ事業を展開しているファーストサーバで、大規模な障害が発生し、 顧客のメールやウェブのデータが消失した。これについて舘野氏は「この調査には、ファーストサーバの問題は織り込まれてはいない。仮に反映されていたら、ホームページ、Webシステム、SNSなどのクラウド化指向の数値に若干響いていたかもしれないが、全体的なクラウド化の流れには大きな影響はないだろう」と論評している。
調査結果の概観として、舘野氏は「自社内のIT資産の最適配分や統合化の促進、運用業務の効率化といった視点から、クラウドサービスに高い期待が寄せられている。サービスを選定するに当たり、現状では、マーケット主導型での選択も多いが、今後は、自社の、ITについての戦略的視点でクラウドを選択する企業が増加すると予想している。また、プライベートクラウドを望む傾向が強いが、基本的にはパブリック型ながら、部分的にプライベート的なサービスを実現するバーチャルプライベートクラウドも有効な手段になってくるだろう」と述べている。
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