現在のところ、個人所有というより世帯財。1世帯に1台あって、それをリビングに置いて皆で共用するという形で普及が進んでいるようです。端末を外に持ち出してもらうというのは、なかなかにハードルが高い面があります。電通総研の調査によると、屋外で利用されることの最も多いデバイスは未だに携帯音楽プレーヤーでした。詳細な数字は「情報メディア白書2012」(1月中旬発行)に掲載していますが、スマートフォンや携帯電話などを差し置いてのトップ。このことから、ユーザーに外出先でサービスを利用してもらうことの難しさがおわかりいただけるかと思います。
基本的にサイマル放送(家庭用テレビ向けと同じ内容)であり、外出先で視聴するための編成・構成にはなっていません。作り手側が想定する利用シーンが家庭内なので、現在は利用したとしても家庭内のサブテレビ、という形になるのは自然かと思います。そうした意味では、2012年4月にスタートする携帯端末向けマルチメディア放送「NOTTV」がどのようなサービスを利用者に届けるのか、ワンセグの現状を参考にすべき点はあります。
そうした取り組みが求められてくるでしょうね。携帯端末視聴を前提として制作した場合、地上波テレビで放送する際にはある程度構成を変える必要があるでしょうが、マルチメディア放送の新たなビジネスを開く可能性はあろうかと思います。
すでに対応が進んでいますが「見逃し視聴」は成立しうるでしょう。その際、「録画してまで番組を見る視聴者層」をどの世代ととらえているのかが重要です。
そう思われがちですが、実際には録画時間・再生時間ともにF3(女性50歳以上)が最も多く、次いでM3(男性50歳以上)となっています。つまり、テレビを最も多く見て楽しんでいる視聴者層が、そのままヘビーユーザーとなっているわけです。また、録画時間に対して、約30~40%が再生時間となっています。つまり録画された番組の3分の2ほどは再生されていないのです。こうした現状を把握した上でビジネスを展開しなければ、いかに優れたサービスや機器があったとしてもユーザーに受け入れられるのは難しいかと思います。
そんなことはありません。震災という大きな出来事もあり、ユーザーの各メディアに求める役割がはっきりしてきました。その意味では、放送と通信、テレビとネットは相互補完関係にあると言えます。ソーシャルメディアやスマートデバイスの普及に伴い、視聴者が編成どおりの時刻にテレビ前へ戻ってきた、という事実をプラスに受け止めることができます。
かつてネットの浸食はテレビの時間軸をずらし、また録画機の普及も含むCMスキップなどの現象が死活問題として指摘されてきました。ところが現在は、ライブ視聴への回帰もあるわけです。テレビ好きな方にさらにテレビを楽しんでいただく、ネットをポータルとしている方にテレビに振り向いていただくなど、さまざまな試行錯誤が行われつつあります。これからさまざまな形で連携サービスが出てくると思います。視聴者・ユーザーとのコミュニケーションのあり方に、一定の礎を見つけることができるのではないでしょうか。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
OMO戦略や小売DXの実現へ
顧客満足度を高めるデータ活用5つの打ち手
パナソニックのV2H蓄電システムで創る
エコなのに快適な未来の住宅環境
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス