日本にはスマートイノベーションを起こす役割がある--NEC 矢野会長:CEATEC

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 ITの総合展示会「CEATEC JAPAN 2011」の初日、主催者団体のひとつである電子情報技術産業協会の会長でNEC代表取締役会長の矢野薫氏が「スマート・イノベーションが導く新たな日本の成長〜人と地球にやさしい情報社会の実現に向けて〜」をテーマに基調講演を行った。

 今年のCEATECは「スマート・イノベーション〜未来をつくる最先端技術」を共通テーマとしており、それに則った講演内容となった。

NECの矢野薫会長
NECの矢野薫会長

 矢野氏は、「今年のCEATECは日本の底力、活力をみせるイベントとなる。昨年とは違った展示内容であることを感じている」と前置きし、「これまでは電力制御がしっかりしている日本においては、スマートグリッドは不要であるといわれたが、震災以降、その意識が大きく変化した。我々は、電力の供給制約があるなかでソリューションを開発する必要があり、それは世界にも貢献できるソリューションになる。電力不足をテクノロジーで解決していくことが必要だ」などとした。

 また、現在の経済状況についても言及。「世界経済は、リーマンショック以降の回復が見られるものの、それ以前の水準には戻っておらず、まだ本格的な回復には至っていない。なかでも日本は、円高のほかにも、高い法人税率、自由貿易協定の立ち後れ、製造業派遣の禁止、温室効果ガスの厳しい規制、電力不足という六重苦のなかにある。政府に対しても、円高であることの懸念を声高に訴えていく必要がある」としたほか、「今後は新興国の成長が著しく、これはGDPの拡大だけでなく、ICT市場でも同様だ。新興国が世界経済を牽引する機関車役となり、日本は新興国に受け入れられるソリューションを提供することが必要である。世界が直面する課題は、ニューエコノミー、資源・エネルギー、安心・安全であり、日本の企業はこれにいかに立ち向かっていくかがいま試されている」などと語った。

ICT市場の地域特性と今後の方向性 ICT市場の地域特性と今後の方向性
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 矢野氏は続いて、本題である「スマート・イノベーション」に話を進めた。

 矢野氏は、インターネットのこれまでの進化や現状などに触れながら、「先進国では100人のうち70人がインターネットを利用しているが、新興国では20人しか利用していない。そこに大きな格差がある。一方で、これまでのインターネットの進化はIT産業のなかでのイノベーションでしかなかったが、これから起こるスマート・イノベーションとは、ICT産業と既存の産業が融合することで起こるものになる。医療分野や交通システム、農業などがスマート化し、経済に与える影響も大きくなる。経済学者のシュンペーターは、イノベーションが止まったときに不況が起こり、不況の時にはイノベーションを起こすことが必要だとしている。それが新結合である。スマート・イノベーションは、ICT産業と既存の産業との融合によって生まれる新たな産業であり、クラウドサービス、情報爆発、ユビキタス、電子政府、インフラ整備、中産階級の拡大、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)といった要素が影響することになる」と解説。その一方で、「日本はICT市場においては先進的なインフラがあるものの、個人利用が中心であり、規制も多い。新たなイノベーションが起こりにくい環境にあるといえるのが問題である」などと指摘した。

 また、スマート・イノベーションは、「ワイヤレス・ブロードバンドネットワーク」「スマートデバイス」「クラウドコンピューティング」といった環境の上に、新しいビジネスモデルと新たなサービスによって構成されるとし、「ワイヤレスネットワークの契約者数は爆発的な勢いで増加し、世界で稼働するサーバも、物理ベースの台数よりも論理ベースのサーバ台数が上回る。また、スマートフォンの出荷台数が急増し、それとともにデータトラフィック量が急拡大していくことになる。さらに、今後はマシン・トゥ・マシンの通信が増加することになり、人口よりも多い数の端末が利用されることになるだろう」などと今後の環境の変化を予想してみせた。

 そのなかで矢野氏は、東日本大震災の際に時速270kmで走行中の東北新幹線が、地震発生直前にP波を捉えられたため安全に停止し事故がなかったこと、アフリカでは40%の家庭にしか電力が届いていないのにも関わらず、携帯電話の普及率がそれを上回っており、先進国では考えられないような状況が起こっていることなどの環境変化を示した。

携帯電話普及率と電力普及率 携帯電話普及率と電力普及率
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 さらに矢野氏は、スマート・イノベーションにつながる融合新産業創出における横断的課題として、「スマート社会のセキュリティ政策」「スマート社会を切り拓く融合人材と教育」「国際的アライアンスによるグローバル展開」「融合領域における新規プレーヤーの創出促進」「ビッグデータから価値を生み出す基盤となる技術強化、利活用促進」をあげ、「こうした課題を解決していかないと、新しい芽をつぶしてしまうことになる」と懸念した。

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