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オンラインマーケティングは新段階「ホリスティック」へ--SES San Francisco 2011レポート

杉原剛(アタラ 代表取締役CEO) 治田耕太郎(クロスリスティング ビジネスディベロップメントディレクター)2011年09月07日 12時00分
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 2011年8月15日から18日にかけて、米国カリフォルニア州サンフランシスコにおいて開催された「SES San Francisco 2011」カンファレンスに参加した。SES(Search Engine Strategies)は、検索エンジンマーケティングに特化したイベントとしては世界最大級で、1年中各地で開催されるシリーズでもある。なかでも毎年夏にサンフランシスコで開催されるこのイベントは特に規模が大きく、検索エンジン各社からの新しい発表も多い。そのため、検索エンジン業界の最新動向について把握するには最適な機会だ。

 今回のレポートは共著にした。ほぼ共通の興味分野において、現地でディスカッションをしながらセッションに参加したこともあり、今年は両者の見方、考え方を統合して報告する。

 今、米国のオンラインマーケティング市場で重要視されている概念は「コンテンツ」、「データフィード」、「アトリビューション」、「ホリスティック」の4点だ。

UGCからAGCへ

 まず、コンテンツから説明したい。これは米国にかぎった話ではないが、インターネットにおける企業のプレゼンスは、かつてはウェブサイトに限定されていた。自社ドメインを取得し、サイトを構築し、さらにサブドメインを取得してECを始める、といった形での拡大は従来から行われていたわけだが、それはあくまで自社ドメイン、自社のコントロール下における拡大であった。

 しかし、この傾向はFacebookやTwitter、YouTubeなどソーシャルメディアの活用により様変わりした。わかりやすく言ってしまえば、企業のインターネットでの存在感がかならずしも自社のドメインだけに閉じなくなってきているということだ。Twitter、Facebookにおける消費者との直接の対話、YouTubeを利用した動画の活用とそれに伴う口コミの拡大など、それぞれのソーシャルメディアを活用することが企業のマーケティング施策の上で必要不可欠となっている。筆者の造語で恐縮だが、このトレンドはもはや「UGC(User Generated Contents)」ならぬ、「AGC(Advertiser Generated Contents)」とでも呼ぶべきひとつの現象と言えるだろう。

 情報が爆発的に増加し続けるソーシャルの中で、いかに自社コンテンツを消費者に発見してもらうか、という「Content Marketing Optimization」の概念、さらに広告だけに留まらない消費者とのタッチポイントの拡大など、昨年まであまり目立って語られることのなかったテーマが多く見受けられた。

 この「AGC」ともいうべき潮流の結果として、オンラインマーケティング担当者は従来の広告だけではなく、このようなAGCも含めたマーケティングプランニングが必要不可欠となり、より複雑なコミュニケーションパスとデータを取り扱わなくてはいけなくなる、といえよう。たとえば、YouTubeに自社商品の紹介動画を掲載したことでどのような効果があったのか? 自社のFacebookページを作成してファンを500人集めたが、それが最終的にどのように会社の売り上げ、認知向上に貢献したのか?--そういった分析や運用などを考慮しなければならないのである。

問われる企業のデータフィード構築能力

 上記のContent Marketingに関係してくる部分でもあるが、全方位的にコンテンツを戦略的に配置していく必要性がある中、効率性は以前よりも重要なテーマになっていく。Google Product Search(日本ではGoogleショッピング)のセッションでは、広告主企業が商品データベースのデータを柔軟に取り出し、Google Product Searchのみならず、広くマーケティングに活用する重要性について説明していた。

 ECや旅行、不動産など、商品点数が多く、商品の情報更新が早く、情報をアグリゲートするプレーヤーの存在感が大きい業界では特に必要だ。たとえばECの場合は以下の利用シーンは多い。

  • Google Product Searchや他の比較ショッピングエンジン(CSE:Comparison Shopping Engine)
  • Google AdWordsほか、検索連動型広告の在庫連動型出稿管理
  • Amazonなどのマーケットプレイス
  • Criteoなどのパーソナライズリターゲティング広告
  • GoogleのRich Snippetに対応するため自社サイトで活用

 これを手動で更新することは実質的に難しいため、自動化することが望ましい。一度構築してしまえば、手間をかけずにスピーディに自社の商品情報を外部で活かせる。しかしながら、日本では特に、何年も前から実施している広告主と、いまだに着手できていない広告主の差は大きい。問題としては、その重要性を理解していないことが多い。

 また、効率的に外部活用できる仕組みが既に世の中に多く存在していることを知らないこともある。システム部門にデータの抽出を依頼しつつも、リソースやコンプライアンスが壁になって実現しないことも多々ある。1つのデータソースから、いくつもの外部サイト向けにデータを出力する設計能力が必要なことも事実だ。筆者はこれを以前から「企業のデータフィード構築能力」と呼んでおり、今後のマーケティングでは必要になってくる要件の一つだと考えている。

一段と注目される「アトリビューション」

 コンテンツ、ソーシャルの話はいったんおいて、従来からの広告分野の現状を見てみよう。今回のSESで特に多かったのはアトリビューション(出稿媒体ごとの貢献度を明確にして広告効果を最適化すること)に関する取り組みと言及だ。筆者の手元のメモによると、筆者が参加した15のセッションの中で、アトリビューションという言葉がパネリストの口から出たコマ数は半分を超える8セッションとなる。筆者の関心分野でもあるため、当然そういったセッションに多く出席しているというのもあるのだが、今回はあえて自分の関心外のセッションも4コマほど出席している。それを踏まえると、よりこの割合が高いということが言えるだろう。

 このようにアトリビューションへの注目度が高まったのには理由がある。それはGoogle Analyticsでマルチチャネル機能と呼ばれるアトリビューション分析機能が搭載され、メディアをまたいだコンバージョンに至るクリック履歴を測定できるようになったということだ。多くの広告主やマーケターが使用しているGoogle Analyticsにアトリビューション分析に必要な機能が搭載されたことは、アトリビューションを分析する敷居が下がったと言えるだろう。また、他の多くの効果測定ツール業者においても、同様のデータが提供されるようになっている。

 ただし、ツールや測定環境が普及し始めていること、およびアトリビューションに注目が集まっていることと、多くのマーケターがツールを使いこなしてアトリビューションマネジメントを行っている、ということとは違うことである。筆者自身、登壇者の発言ほど聴衆側がアトリビューションに対して経験値を蓄積しているとは感じられなかった。

 プロダクトの進化により、マーケターがアトリビューションマネジメントに取り組める敷居が急激に下がったというのは紛れもない事実で、それがアトリビューションマネジメントの急速な普及を後押ししていることは間違いない。さらに、このトレンドを加速するのがFacebook広告だ。確かに、Facebookの普及率や利用率を考えれば、米国でこの流れは当然ともいえる部分ではある。しかし、Facebook広告をクリックした消費者のおおよそ4割が、その後に検索連動型広告でコンバージョンを起こした、という事例もあり、ソーシャルとSEMを組み合わせることでさらに効果を改善する、というトレンドも明確に存在している。

 来年以降、このトレンドはよりカジュアルになり、さらに前述した消費者のタッチポイントの拡大を踏まえて、ますます多くのマーケターがアトリビューションに取り組むこととなるだろう。

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